なぜ白バイ隊員はジェットヘルメットを使用しているの? フルフェイスより優れた面もあるってホント?【元警察官が解説】

安全性の高さを鑑みれば、ヘルメットはフルフェイス一択というライダーも多いことだろう。しかし、公道の安全を守る白バイ隊員が身につけているのは、なぜかジェットヘルメット。これはなぜなのだろうか? 元白バイ警官の宅島奈津子さんが解説する。
●文:[クリエイターチャンネル] 宅島奈津子
フルフェイスが万能⁉
ライダーにとって必需品であるヘルメット。みなさんは、どういった基準でヘルメットを選んでいますか。安全性やデザイン、機能性等、選ぶポイントはいろいろありますよね。
一言でヘルメット、とはいってもさまざまなタイプのヘルメットがあります。簡単に分類すると、フルフェイス、ジェット、オフロード、システム、ハーフの5種類に分けられます。
中でも安全性が一番高いのは、フルフェイス…というのが一般的なライダーの認識でしょう。ロードレーサーともなれば、必ず全員がフルフェイスを採用していますし。「フルフェイスが万能」という方も多いのではないでしょうか。
白バイ隊員のヘルメット
ですが、白バイ隊員はフルフェイスではなく、ジェットヘルメットをかぶっています。このヘルメットは、「アライヘルメット」や「SHOEI」が製作している特注品で、原型となる市販品はありますが、細部は特別仕様となっており、同じヘルメットは市販されていません。
市販品との大きな違いは、警察章が付いていること、反射テープが貼付されていること、マイクホルダーと音声調整つまみが装着されていること、そして、バイザーの色が白であることです。
白バイ隊員のヘルメットは制服の一部であり、支給品でもあるため、隊員の好みで選択することはできませんが、なかにはフルフェイスがいいと思っている隊員ももちろんいるわけです。
私自身、プライベートではフルフェイスのヘルメットをかぶっていたので、双方のメリット、デメリットについては熟知しているつもりです。そんな私でも、白バイ乗車時はジェットが適していると感じていました。
白バイ隊員がフルフェイスではない理由
こでは代表的なものとして、フルフェイスとジェットの比較を挙げさせていただきます。これらのヘルメットを装着してみると、感覚の違いに気づかされることでしょう。大きく違うのは、視界です。白バイ隊員は業務上、広範囲を見渡せる視野の確保が必要になってきます。
交通パトロールや取締り等を通して、悪質な違反を見逃さないためにも、常に目を光らせておく必要があるのです。かぶってみるとわかりますが、フルフェイスだとかなり視界が制限されてしまいます。
また、白バイ隊員の業務には、駅伝やマラソンの先導をしたり、皇族や外国からの要人等の身辺警護で先導したり、交通安全運動等のイベントを行うこともあります。そういった際に、フルフェイスで口元まで覆われていると威圧感を与えてしまいます。そのため、表情がきちんと見えるジェットが適しているわけです。
もうひとつの理由として、白バイ乗車時は必ず、無線機を装着しています。無線機はヘルメットに取り付けてあり、耳で聞くだけでなく、当然発信もします。フルフェイスだと、声が通りにくいうえに話すことさえ困難です。
これらが、白バイ隊員がジェットヘルメットを採用している大きな理由となっています。個人的にも身体への負担を考えたら、ジェットの方が長時間の装着でも疲れにくいと感じています。
ヘルメットにはいろんなタイプがあり、かぶってさえいれば交通違反にはあたらず、検挙されることはありません。用途や状況に応じて選択していいとはいえ、やはり一番に考えたいのは安全性ですね。
むき出しになっている部分が多いほど、転倒したときの損傷は大きく、死亡率も高くなります。今後、ヘルメットを購入する予定がある方は、そういったことをふまえて、選択していただきたいなと思います。
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(宅島奈津子)
オートバイのメンテナンスは大切 オートバイや乗用車に限らず、どんな乗り物でもメンテナンスは必要不可欠です。定期的にメンテナンスを行うことで、長く乗り続けることができるだけでなく、事故を防ぐことにもつな[…]
基本的なライディングフォーム バイクファンであれば一度は耳にしたことがあるかもしれませんが、時に白バイ隊員は公道を走るスペシャリスト集団とも言われています。ですが、走行中はライディングフォームを意識す[…]
寒い時期のツーリング 冬はライダーにとって、本当に過酷な季節です。急激に気温が下がったりしてきましたが、オートバイに乗られているみなさんは、どういった寒さ対策をしていますか。 とにかく着込む、重ね着す[…]
みなさんは、トライクという乗り物をご存知でしょうか。ライダーであればほとんどの方が、目にしたことがあるかと思います。なかには乗ったことがある方も、いらっしゃることでしょう。 このトライク、語源はトライ[…]
交通取締りが行われている場所 安全運転を心がけていても、パトカーや白バイの姿を目にすると、必要以上にドキッとしたり、速度メーターを確認したりするといった経験がある、ドライバーやライダーは少なくないので[…]
最新の関連記事(ニュース&トピックス)
州知事や政府関係者のほか、従業員も参加し祝う 四輪車はもちろん、ビジネスジェット機でも知られ、最近では再使用型ロケットでも話題のホンダ。その始まり、つまり「祖業」は二輪車にある。 スタートは自転車用補[…]
Paceプロジャケット:高い安全性と通気性を両立 前面のMロゴがスポーティな印象を与える新作ジャケット。伸縮性と耐摩耗性に優れたアウター素材が、ワインディングからロングツーリングまであらゆるシーンで動[…]
K-2439 フルメッシュロングジャケット:スタイルと機能を両立するツーリングジャケット 腰までしっかりと覆う安心感のあるロング丈でありながら、後襟から袖口へ流れるように入ったラインデザインと、ウエス[…]
ライダーが抱く「ヘルメットの悩み」を解消するために誕生 デルタから発売される高機能ヘルメットスタンドは、多くのライダーから寄せられた「こんな製品があったらいいな」を形にした、実用性とデザイン性を兼ね備[…]
フレンドリーさも持ち合わせていた名機’89 NSR250R 1986年に初登場した2ストロークレーサーレプリカの名車、NSR250R。登場から30年以上が経過した現在でも、型式を問わず根強い人気を誇っ[…]
人気記事ランキング(全体)
日本を代表するツーリングロードのティア表だっ! 「次のツーリングは、どこへ行こう?」 そんな嬉しい悩みを抱える全てのライダーに捧げる、究極のツーリングスポット・ティア表が完成した。 ……いや、そもそも[…]
Z1、GPz900R、Ninja ZX-9Rから連なる“マジックナイン”の最新進化系 カワサキは、948cc並列4気筒エンジンを搭載したスーパーネイキッド「Z900」および上級モデル「Z900 SE」[…]
幻のヤマハロータリー〈RZ201〉 1972年東京モーターショウの最大の話題は彗星のように登場したこのローターリー車だ。水冷・横置きツインローターを搭載、また前輪とともに後輪にもディスクブレーキを採用[…]
涼しさの心臓部。それは「素材」と「構造」の魔法的組み合わせ うだるような暑さと、じっとりと肌にまとわりつく湿気。毎年繰り返されるこの季節に、多くの人が少しでも快適に過ごせる服を探し求めている。そんな中[…]
機能性を損なうことなく利便性を高めた、期待の新製品 おたふく手袋は、長年、多くのプロフェッショナルから信頼され続けている老舗軍手メーカー。同社が展開する「BODY TOUGHNESS(ボディタフネス)[…]
最新の投稿記事(全体)
州知事や政府関係者のほか、従業員も参加し祝う 四輪車はもちろん、ビジネスジェット機でも知られ、最近では再使用型ロケットでも話題のホンダ。その始まり、つまり「祖業」は二輪車にある。 スタートは自転車用補[…]
2024年モデル概要:XSRらしさを受け継いだ末弟 海外で先行して展開されていたXSR125の国内導入が明かされたのは、2023年春のモーターサイクルショーでのこと。発売は同年の12月8日だった。 X[…]
似ているようでカブとはまったく違うのだ アウトドアテイストの強いCT125ハンターカブが人気だからといって、ここまでキャラクターを寄せてくることないんじゃない? なんて穿った見方で今回の主役であるPG[…]
懐かしのスタイルに最新技術をフル投入! 2025年3月の東京モーターサイクルショーで詳細が発表されたヨシムラヘリテージパーツプロジェクト。対象機種は油冷GSX-R750とカワサキZ1となっており、GS[…]
実績豊富なディーラーによる絶妙なバランス感覚 全国のハーレーダビッドソンジャパン販売網がカスタムの腕とセンスを競うコンテスト『バトルオブザキングス』にて2年連続で日本一になった実績を持つワタナベモータ[…]
- 1
- 2