
バイクのエンジンと女心はいくつになっても分からない・・・。「エンジンがかからない」と言ってもその原因はホントにさまざま。これまで何台もバイクを修理してきましたが、毎回違う原因だったりするんです。まったく、飽きる暇がございません。今回も「まさか!?」なトラブルに見舞われたスクーター、スズキのZZ(ジーツー)の例をご紹介しましょう。似た症状に悩まされている方のお役に立てれば!
●文:ヤングマシン編集部(DIY道楽テツ)
エンジンがかかりにくい→完全停止へ
今回直したのはスズキのZZです。2000年代初頭に登場した50ccスクーターで、「通勤快速」として人気を博し、油圧ディスクブレーキやアルミホイールなど、当時としてはクラス超えの豪華装備を搭載。外観もスポーティーで、若者にも人気のモデルでした。
今回のZZはオーナーさん曰く、「最初は普通に走ってたけど、だんだんエンジンのかかりが悪くなってきて、最終的にはまったく動かなくなったんだよね~」とのこと。プラグがカブってしまったのか、オイルが多いのか? とりあえず、定番のチェックとメンテナンスからスタートしました。
燃料が入ってるか、ちゃんと流れてるかチェック。
バッテリーの電圧をチェック、しっかり充電してみると…。
キャブレター分解して、一通り掃除!
エアクリーナーも掃除して、スパークプラグが案の定黒かったので、念のため新品交換。
プラグキャップとプラグコードの接続部分が怪しかったので、一度先端をカットしてから繋ぎ直し。これで大丈夫だろうとエンジン始動テスト!
で、あっさり元気にエンジン始動! アイドリングもバッチリ、高回転もキレイに回ります。うんうん、プラグが黒かった原因が気になるけど、2サイクルだし、ゆっくり走ってカブり気味だったのかもね。
「よっしゃ、これでOK!」とテスト走行へ・・・行こうとしたその瞬間、エンジンが停止。しかも、そこからはセルは回るけどエンジンがかからない状態に。
一発始動→また停止→なんでやねーん!
仕方なくガレージに戻り、再度始動を試みると一発始動・・・! 普通に回転も上がるし、調子悪い要素が見当たらない。・・・え、なんで? でもまぁ、エンジンはちゃんとかかるし、もう一回テストしてみようとセンタースタンドを外した瞬間・・・またエンジン停止。
なんでやねーん!!! わけがわからなくなってきた~。とりあえず現状を考えてみると
- 燃料系は問題なし
- キャブも掃除済み
- エアクリーナーもOK
ってことは、残るは電気系しかないかな。CDIか、それとも謎の安全装置が暴走してるとか?
犯人は「プラグコードの接触不良」だった!
ここでようやく気づきました。もしかして…センタースタンドに何か関係が? センタースタンドをかけた状態だとエンジンがかかる。でも、スタンドを外すと止まる。
よーく観察すると、スタンドを上げ下げすることでエンジンとフレームの距離が微妙に変わってるんです。そして、イグニッションコイルから出てるプラグコードがフレームに接触してるのを発見!
ひょっとしてここか!?
- センタースタンドをかける → エンジンが浮いて(下がって)コードがフリーになる
- センタースタンドを外す → エンジンが接地して(上がって)コードが引っ張られる上にフレームに接触
うっわ、コレだ…。プラグコード内の断線か、イグニッションコイル側の不具合か。何にせよ、ここに答えがありそう。
ってことで、試しにイグニッションコイルをチェックしてみたら・・・ぽこっ。あ、取れた(笑)。どうやらこのZZ、プラグコードがねじ込み式のタイプだったみたい。一体型とばかり思ってました。原因はここだったか~!!
つまりはこういうことです。バイクが新しい時は、当然プラグコードも柔軟性があるから、エンジンの上下で多少動こうがフレームに当たろうがどうってことないのですが・・・。
でも、年数が経つと硬化してきて、ちょっとした干渉や振動でもプラグコードが曲がらずに引っ張られるので、結果としてイグニッションコイル側との接触不良につながった・・・と、予想されるのです。
ということで、イグニッションコイルを丸ごと新品に交換。そしたら…エンジン、一発始動! センタースタンドを上下しても、まったく問題なし! 回転もビャンビャン回るし、実走テストでも調子よくスイスイ走ってくれました。
古いスクーターに乗っている方は一度チェック!
今回の故障原因からするとぶっちゃけた話、イグニッションコイルは交換せずにプラグコードの交換だけで済んだかもしれません。でも不安要素を残すよりは新品交換が間違いないですよね。
それにしても今回の一件で学ぶことが多くありました。
プラグコードの硬化が良くないってのは知っていたけど、今回のようにスクーター独特の構造によってエンジン不動に追い込まれるのだなと。
同じように古いスクーターに乗っていて、しかも同じような症状で悩んでいる方がいましたら、センタースタンド上げ下げしてチェックしてみてください。この記事が皆様の参考になれば幸いです。今回も最後まで読んでいただきありがとうございました~!
私のYouTubeチャンネルのほうでは、「バイクを元気にしたい!」というコンセプトのもと、3日に1本ペースでバイクいじりの動画を投稿しております。よかったら遊びにきてくださいね~!★メインチャンネルはコチラ→「DIY道楽」 ☆サブチャンネルもよろしく→「のまてつ父ちゃんの日常」
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(メンテナンス&レストア)
自家塗装には難関が待ち受ける 今回は、自己流でありますが自家塗装のお話です バイクのメンテナンスやカスタムしていると、近隣に迷惑を及ぼす可能性のある作業がいくつかあります。エンジン始動による騒音もその[…]
約6人に1人が利用しているふるさと納税をおさらい 今や日本人の約6人に1人が利用していると言われている「ふるさと納税」。税金は一般的に自分が暮らす自治体に収めるものですが、ふるさと納税は自分の意思で選[…]
初心者向けの溶接機は? 「初心者ですが、溶接機は何を買えばいいでしょうか?」そんな質問をいただくことが、最近増えています。折れたステーの修理から始まり、フレーム補強やスイングアーム自作、極めつけがフレ[…]
赤サビの上から直接塗って黒サビに転換。愛車を守るBAN-ZIのラストロックシステム 【RUSTLOCK(サビ転換下処理剤)サビキラープロ】赤サビの上から直接塗ることで黒サビに変化する転換剤機能と、上塗[…]
熱膨張率の均一化によって様々なアドバンテージがある 2ストローク/4ストロークエンジンを問わず、エンジン性能を向上するためには様々な課題や問題がある。特に大きな課題は、“熱膨張率”に関わる問題だ。 「[…]
最新の関連記事(工具)
初心者向けの溶接機は? 「初心者ですが、溶接機は何を買えばいいでしょうか?」そんな質問をいただくことが、最近増えています。折れたステーの修理から始まり、フレーム補強やスイングアーム自作、極めつけがフレ[…]
クニペックス製と瓜二つ!? アストロプロダクツの新製品「プライヤーレンチ」 ボルトやナットの2面を隙間なく掴める、平行に移動するジョー、グリップを握る力が増力される独自のジョイント構造、全長に対して著[…]
ユニバーサルソケット:手が届かないボルトやナットもナットグリップ機構でホールド スチールボールによるフリクションでボルトやナットをホールドするコーケン独自のナットグリップソケットと、ユニバーサルジョイ[…]
ある日チョークが折れてた エンジン始動でチョークを引っ張ったらいきなり「スポッ」と抜けた。何事かと思ったら・・・折れてたんですよ、チョークケーブルのアウターが。 アクセルやクラッチ、スロットルやチョー[…]
レストアでのつまづきはそこかしこに 古いバイクをレストアしていると意外なところでつまずいたりするものですが、今回引っかかったのが8インチのチューブタイヤの「リムバンド」。 こちらのホイール、別にリムバ[…]
人気記事ランキング(全体)
扇風機+冷却ブレートの二重冷却 KLIFEのペルチェベストは、空調ファンと半導体ペルチェ素子を組み合わせた業界初の設計。背中の冷却ブレートが体感温度を瞬時に下げ、同時にファンが服内の空気を循環させるこ[…]
50ccクラスは16歳から取得可能な“原付免許”で運転できるほか、普通自動車免許でもOK バイクを運転するための免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大[…]
使い方は「水を含ませる」だけ。走行風を味方につける冷却アイテム 今回紹介するデイトナの「DI-015 ウェットクールベスト」は、水と走行風を利用した気化熱式のクールベストだ。使い方はシンプルで、ただベ[…]
昭和レトロの世界が広がる神奈川県『中古タイヤ市場 相模原店』 昭和の夏休みって、どんなでしたっけ? 朝はラジオ体操に行って、午前10時頃からは仮面ライダーやウルトラマンの再放送。昼は学校や地域のプール[…]
厳しい残暑、コストを抑えつつ対策したい 暦の上では秋が近づくお盆明け。しかし、天気予報によれば2025年の夏はまだ終わらず、厳しい残暑が続くという。 まだまだ続く汗との戦いには、高機能な冷感インナーが[…]
最新の投稿記事(全体)
厳しい残暑、コストを抑えつつ対策したい 暦の上では秋が近づくお盆明け。しかし、天気予報によれば2025年の夏はまだ終わらず、厳しい残暑が続くという。 まだまだ続く汗との戦いには、高機能な冷感インナーが[…]
125ccクラスは16歳から取得可能な“小型限定普通二輪免許”で運転できる バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり[…]
XL750 TRANSALP:実物を見て気に入りました XL750トランザルプオーナーのヨッチンさんは、現在44歳のアドベンチャーライダー。 バイクに乗り始めたのは20歳で、長いこと古い英車に乗ってい[…]
コストダウンも意識した大胆なテコ入れ テコ入れを辞書で調べると、"期待した通りに進んでいない物事、停滞している状況を、外部からの刺激や援助で打開しようとする取り組みを意味する表現"とある。そしてこの言[…]
ワンタッチで取り付け可能な便利設計 「FDH-1」は、強力なバネの力でペットボトルをしっかりホールドし、片手でワンタッチ脱着が可能なバイク用ドリンクホルダーです。600mlまでのペットボトルに対応し、[…]