
ホンダ「CB1000ホーネット」はSC77系の直4エンジンを搭載した新型ネイキッドモデル。2025年1月23日に発売されたスタンダードモデルとSPモデルの両方に乗ることができたので、インプレッションをお届けしたい。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:ホンダ
SC77のエンジンを搭載しながら134万2000円、オーリンズ&ブレンボのSPでも158万4000円
エンジンが抜群に気持ちいい! ホンダが2025年1月23日に発売した新型モデル「CB1000ホーネット/SP」は、ダブルアールこと「CBR1000RR FIREBLADE」の最終型(SC77型・2017~2019年)のエンジンを最新排出ガス規制に適合させて搭載したネイキッドだ。
ホンダのフラッグシップスーパースポーツは、最新型で“R”がひとつ増えるとともに戦闘力も高められた「CBR1000RR-R FIREBLADE」になっているが、スーパーバイクのベースマシンでありながら普段使いで乗っても扱いやすかったのは先代のRRのほう。特に最終型のエンジンは、軽やかな吹け上がりと扱いやすいトルク、そして高回転域のパワーがバランスよくしつけられていた。
そんなSC77のエンジンは192ps/13000rpmを発揮していたが、CB1000ホーネットでは152ps/11000rpmに改められ、低中回転域での扱いやすいトルク特性が作り込まれている。また、上級仕様のSPでは排気デバイスが追加され、最高出力は6ps増の158ps/11000rpmになっているから驚きだ。
CB1000ホーネットを語るうえで、このエンジンの魅力は最初に注目すべきところ。そしてこれをスチール製フレームに搭載し、倒立フロントフォークやプロリンクサスペンション、フルカラーTFTメーター、ライディングモードなどを組み合わせながら130万円台から買える価格に抑えているのが最大のトピックと言えそうだ。
CB1000ホーネット(白)/CB1000ホーネットSP(艶消し黒)
ライバル勢と目されるのは、左からヤマハMT-09(125万4000円~)、スズキGSX-S1000(150万7000円)、カワサキZ900(127万6000円)といったところ。
いい意味で“普通さ”を持ったリッターネイキッド
跨った感じは、650~800ccクラスのようなコンパクトさ。車重は軽量だったCB900ホーネットの218kg(乾燥重量は194kg)に対し6~7kgも軽い211kg(SP=212kg)だ。押し歩きは最近試乗したCB650 E-Clutch(207kg)と比べても同等か、むしろ軽いような気すらするほどだった。
ライディングポジションは上半身が穏やかに前傾するもので、ストリートファイター的なスタイリングの割にはややリラックス寄り。シート前端が絞り込まれているのでシート高809mmから想像するよりも足着きは楽だが、一方で燃料タンクは4気筒モデルらしくややボリュームがあり、ニーグリップ部分はスリムというほどではない。ハンドルバーは絞り/幅とも自然な位置関係だ。静止時の印象はSTDも同じ。【身長183cm/体重81kg】
ホンダ CB900ホーネット
CBR900RR系の直4エンジンを搭載したスポーツネイキッドモデルで、CB1300SFやXJR1300が築いたビッグネイキッド時代に新しい価値観を生み出した。 ●2001年10月4日発売 ●当時価格:82万円(税抜)
エンジンを始動すると、アイドリングはSTD/SPとも同じようなサウンドだ。吸排気音はSC77を思い出させる乾いた感じのもので、軽くブリッピングするとレスポンスよく回転が上昇する。
アシスト&スリッパークラッチを備えているわりにはやや手応えのあるクラッチレバーを握り、少しだけエンジン回転を上げて発進すると、エンジンストールの心配はほぼなさそうなトルク感。さすがは1000ccクラスだ。
STDの場合、低回転から高回転までエンジンのフィーリングは大きく変わらず、パワー特性も最初から予想しやすく扱いやすかった。とはいえ152psは十分にパワフルであり、高速道路でもスロットルを大きく開けるとあっという間に制限速度に達してしまう。一般道では中回転域までを使用することになるが、軽い車体をキビキビと走らせるのに1000ccのトルクが十分以上の仕事をしてくれた。
排気デバイスが追加されているSPのほうは、スロットルを大きめに開けるとサイレンサー前方の排気バルブも開くように制御されているようで、5000~6000rpmのトルクも排気量が数%増したんじゃないかと思えるほど厚みのあるものに変化する。高回転域の迫力はちょっと身構えてしまうほどで、ガッツリ全開にするならサーキットへ持っていきたくなる。
いずれにも共通するのは回転域を問わない扱いやすさとレスポンスの軽さ。右手のスロットル操作に忠実に反応し、軽量な車体をさらに軽快に感じさせる。それでいてガツガツしたフィーリングもなく、回転域を問わず扱いやすい。
コンパクトなスタンダードモデルと、攻めたくなるSP
車体は、STDが前後SHOWA製サスペンションとニッシン製フロントブレーキキャリパーを採用しており、SPはリヤにオーリンズ製TTX36とブレンボ製Stylemaキャリパーを採用するSPと造り分けられている。
今回は純正タイヤがSTD=ダンロップ・ロードスポーツ2、SP=ブリヂストン・S22になっており、筆者レベルではサスペンションの違いのみを抽出して感じ取ることはできなかったが、それでも両車のフィーリングがかなり違うことはわかった。
まずSTDだが、サスペンションはSPに比べると日常域に寄せているようで、ブレーキングやコーナリングではそれなりに沈み込む設定。SPに比べるとわずかながら荷重によって車高が低くなるのが早く、車体はひと回りコンパクトに感じられ、浅いバンク角でもクイックに曲がってくれる。ブレーキも初期からグッと制動力が立ち上がるので、日常領域でもクイックレスポンスを堪能しやすい。
SPはというと、リヤに採用したオーリンズのおかげで乗り心地は上質になるのだが、より大きな荷重に対応したセッティングになっているため、コーナリングではある程度以上にしっかり荷重を与えないとサスペンションが美味しいところまで沈んでいかない。
もちろん乗りにくいとかいったことはないのだが、フワッと乗っても俊敏性を味わいやすいSTDに比べると、日常域では曖昧なフィーリングに感じるライダーもいるかもしれない。ブレンボ製キャリパーを採用するフロントブレーキも、単に制動力が高いだけでなく、初期の食いつきは優しく入力を強めるのに比例して制動力が高まるというコントロール性重視のタイプ。こちらも日常域では曖昧なフィーリングと感じる向きはあるかも。
分かりやすいキャラクターで俊敏性を堪能できるスタンダードモデル。
コントロール性の高さと足まわりの懐の深さはSPだ。STDではオプションのクイックシフターもこちらは標準装備。
シンプルに言えば、日常域で軽快さとクイックレスポンスを楽しめるSTDに対し、サーキットに持っていきたくなるほど高荷重域寄りのキャラクターとしながら上質な足まわりで普段使いにも対応するSP、ということになるだろうか。
街乗りやショートツーリングでの使い勝手を重視し、車両価格も抑えたいならSTDのほうがおすすめ。豪華な足まわりや排気デバイス追加など所有感を重視、またはネイキッドモデルでサーキット走行を楽しみたいという方にはSPがおすすめだろう。
HONDA CB1000 HORNET / SP[2025 model]
HONDA CB1000 HORNET[2025 model]
HONDA CB1000 HORNET SP[2025 model]
HONDA CB1000 HORNET SP[2025 model]
通称名 | CB1000 HORNET | CB1000 HORNET SP |
車名・型式 | ホンダ・8BL-SC86 | ← |
全長×全幅×全高 | 2140×790×1085mm | ← |
軸距 | 1455mm | ← |
最低地上高 | 135mm | ← |
シート高 | 809mm | ← |
キャスター/トレール | 25°/98mm | ← |
装備重量 | 211kg | 212kg |
エンジン型式 | 水冷4ストローク 並列4気筒DOHC4バルブ | ← |
総排気量 | 999cc | ← |
内径×行程 | 76.0×55.1mm | ← |
圧縮比 | 11.7:1 | ← |
最高出力 | 152ps/11000rpm | 158ps/11000rpm |
最大トルク | 10.6kg-m/9000rpm | 10.9kg-m/9000rpm |
変速機 | 常時噛合式6段リターン | ← |
燃料タンク容量 | 17L | ← |
WMTCモード燃費 | 17.7km/L(クラス3-2、1名乗車時) | ← |
タイヤサイズ前 | 120/70ZR17 | ← |
タイヤサイズ後 | 180/55ZR17 | ← |
ブレーキ前 | φ310mmダブルディスク +4ポットキャリパー | ← |
ブレーキ後 | φ240mmディスク +2ポットキャリパー | ← |
価格 | 134万2000円 | 158万4000円 |
車体色 | 白 | 艶消し黒 |
発売日 | 2025年1月23日 | ← |
丸山浩さんのインプレッション動画は次ページへ↓
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(CB1000ホーネット)
標準車用も後日リリース予定! ストリートファイター系のスパルタンなルックスで登場したホンダCB1000ホーネット。人気はブレンボやオーリンズなどの特別装備を持つ上位グレードの「SP」だが、このSPの純[…]
従順で力強いエンジンと軽快な旋回性を生む車体 2024年はついに全日本ロードレース選手権で表彰台に立ち、次の目標はもちろん初優勝なのですが、先輩たちから「レースは積み重ねが大事。開幕から優勝狙いではな[…]
オールラウンドにFUNライドを楽しめる カラーはCB1000 HORNET (STDタイプ)が「パールグレアホワイト」。 より充実した装備を持つCB1000 HORNET SPに「マットバ[…]
さとみ(すとぷり)がアンバサダーに就任! 日本二輪車普及安全協会は、2025年3月開催の「第41回 大阪モーターサイクルショー2025」および「第52回 東京モーターサイクルショー」の開催概要を発表す[…]
新型ホーネットのスペックをおさらい! 開発者インタビューをプレイバック! やっぱりホーネットは直4だ?! ホンダ:はい。欧州の期待も高いですし、直4のホーネットとして出させていただくので、その期待に答[…]
最新の関連記事(ホンダ [HONDA])
2025モデルの新車「GB350C」のイメージが… ネオレトロスタイルの単気筒ロードスポーツ・GB350をベースとして2024年にリリースされた「GB350C」は、前後にディープフェンダーを採用したク[…]
2ストGPマシン開発を決断、その僅か9ヶ月後にプロトは走り出した! ホンダは1967年に50cc、125cc、250cc、350cc、そして500ccクラスの5クラスでメーカータイトル全制覇の後、FI[…]
陸・海・空にまで広がるホンダの”夢” 今回の展示のテーマは「夢の力」。陸、海、空の3つの領域におけるホンダの多様なモビリティを通して、その技術力と未来へのビジョンが示されます。 二輪車からは、市販モデ[…]
最短2日間で修了可能な“AT小型限定普通二輪免許”で運転できる バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり、原付を除い[…]
2スト最後発だった記憶が消し飛んだGPマシンから50レプリカまで! 1979年、ホンダからMB50という2ストローク50ccスポーツがデビュー! それまでGPマシンからスーパーカブまで、小排気量でも4[…]
人気記事ランキング(全体)
2ストGPマシン開発を決断、その僅か9ヶ月後にプロトは走り出した! ホンダは1967年に50cc、125cc、250cc、350cc、そして500ccクラスの5クラスでメーカータイトル全制覇の後、FI[…]
PROUDMEN. グルーミングシートクール 16枚入り×3個セット PROUDMEN.のグルーミングシートクールは、横250×縦200mmの大判サイズと保水力約190%のたっぷり液で1枚で全身を拭け[…]
取り付けから録画までスマートすぎるドライブレコーダー ドライブレコーダーを取り付ける際、ネックになるのが電源確保のための配線作業だ。バイクへの取り付けともなると、専門知識や工具、あるいは高めの工賃が必[…]
3つの冷却プレートで最大-25℃を実現 2025年最新モデルの「ペルチェベスト」は、半導体冷却システムを採用し、背中に冷たい缶ジュースを当てたような感覚をわずか1秒で体感できる画期的なウェアです。小型[…]
二輪史に輝く名機「Z1」 いまだ絶大なる人気を誇る「Z1」こと、1972年に発売された900super4。後世のビッグバイクのベンチマークとなる名機は、いかにして世に出たのか──。 1960年代、カワ[…]
最新の投稿記事(全体)
鈴鹿8耐ヤマハブース、歴代マシンと最新鋭機が共演! 2025年に創立70周年の節目を迎えたヤマハが、6年ぶりに鈴鹿8耐にファクトリー参戦を果たし、会場は大いに盛り上がった。ヤマハブースでは、今年の8耐[…]
世界中のビルダーがボンネビルをカスタム 今回開催されたバイクカスタムの世界規模コンペティションには、世界各地から8チームが参加。その中からファイナリストに選出されたのは、ブラジル、フランス、イタリア、[…]
KOMINE プロテクトフルメッシュジャケット ネオ JK-1623 フルメッシュで残暑厳しい秋口のツーリングでも快適さを保つジャケット。胸部・肩・肘・背中にプロテクターを標準装備し、高い安全性も両立[…]
71カ国で認められた気鋭のバイクブランド ゾンテスは、2003年に中国・広東省で設立された「広東大洋オートバイ科技有限公司」が展開するブランドだ。彼らは総投資額26億人民元、従業員3600名という巨大[…]
『鈴鹿8時間耐久ロードレース選手権』を初めて観戦した模様を動画に収録 この動画では、若月さんが鈴鹿サーキットの熱気に包まれながら初めて目の当たりにするロードレースの“速さ”や“迫力”に驚き、感動する姿[…]