
長く使っている鍵は、年月の経過とともに鍵穴に差すとき動きの渋さを感じるようになってくる。そんな時、滑りをよくするためについつい「KURE 5-56」などの潤滑スプレーを使いたくなりがちだけど、ちょっと待った! その方法だと一時だけはよくなったりしても、後々を考えるとオススメできないのである。
●文/写真:ヤングマシン編集部
ホコリや汚れを呼ぶ潤滑スプレー
鍵を差すときに動きが渋いなーとか、引っ掛かるなーと感じたことはありませんか?
家の鍵や自転車の鍵、倉庫の南京錠など、身の回りにはいろいろな鍵がありますが、屋外保管しがちで、しかも鍵穴が上を向いているバイクなどは、鍵の動きが渋くなりやすい典型例でしょう。
そんなとき、滑りをよくするために潤滑スプレーを使う、という手を思いつく方は多いはず。
正直に言いましょう。筆者もバイクに乗り始めた頃、5000円で譲り受けたTL50というホンダの古いバイクで、鍵穴=キーシリンダーにクレ5-56を差したことがありました。
ところがこれ、NG行為なんです。
ついついやってしまいがちな潤滑スプレー。ちなみに5-56(無印タイプ)はわずかながらプラスチックやゴムパーツへの攻撃性があるため、バイクメンテナンスでの使用はオススメできない。呉工業がプラスチックやゴムにも使えるとしている「5-56 無香性」や、他メーカーのバイクメンテナンス用として定評があるもの(ラスペネやWD-40などが有名)を選ぼう。
数週間が経った後、TL50の鍵穴は以前よりもさらに渋くなってしまい難儀しました。
後で知ったのですが、潤滑スプレーの油分がホコリや汚れを吸着してしまい、その場ではよくても時間が経つとかえって動きが悪くなっててしまうということでした。
当時はインターネットもない時代でしたが、現在は呉工業の公式HPのQ&Aコーナーにも「特にディンプルキーなどの複雑な構造の鍵では油分によってホコリや汚れが鍵穴内部に堆積し、鍵が正常に作動しなくなる場合があります」と記載され、そんな場合は速乾性の「ドライファストルブ」をオススメする、とあります。
シンプルな構造の鍵なら油分を含んだ潤滑スプレーでも不具合は出にくいようですが、経年で磨り減ったり汚れが堆積したりしている場合も考慮すると、やはりオススメできそうもありません。
最近はあまり身近でもない(?)、あるものを使う裏技
もちろんそれ以来、鍵穴に潤滑スプレーを使うようなことはしていませんが、お世話になっていたバイク屋さんに代替手段として教わった方法があります。今回の記事の“裏技”ってやつです。
それは、鉛筆を使うというもの。
鉛筆の芯を鍵にこすりつけます。
これは昔からある『おばあちゃんの知恵袋』的なやり方ですが、一部のバイク屋さんや鍵屋さんが実際にやっている方法で、かつてはバイク雑誌のメンテナンス記事などでもよく取り上げられていました。
(※とはいえ〈鍵穴用〉とか〈鍵穴対応〉の潤滑剤がお手元にあるなら、そちらを使った方が確実に結果が得られます)
なぜ鉛筆? と思うかもしれませんが、鉛筆の芯は黒鉛と粘土で出来ていて、このうち黒鉛が潤滑成分として働くからなんだそうです。
実際にやってみる際には、芯が柔らかい=黒鉛の比率が多い濃い目の鉛筆を使いましょう。鉛筆がなれけば、シャープペンシルで頑張ってみるのもアリです。2B以上がオススメかな。
方法は簡単で、表面がうっすらコーティングされているのが見てわかる程度までとにかく鉛筆の芯を鍵に擦りつけます。強く擦って削れた粉末が出るとそれはそれで引っ掛かりになる可能性があるので、あくまでも塗り付けるように時間をかけてやりましょう。そして、その鍵を鍵穴にぶっ差してスコスコスコと往復させるわけです。
動きがかなり渋いようなら、鉛筆の芯を擦りつける→鍵穴スコスコを何度か繰り返します。
タンクキャップでもやり方は同じ。
さて、このやり方には唯一と言っていい難点があります。
それは、そのまま鍵をポケットに入れたりすると鉛筆の芯のせいで汚れるということ。
なので、滑りがよくなったのを確認したら鉛筆の成分を拭き取ってしまいましょう。
作業が終わったらフキフキ。
鍵穴に鉛筆成分が行き渡っていれば、鍵は拭きあげてしまってOK。
潤滑スプレーを用いたときのように「劇的に滑りがよくなった!」という感触は薄いかもしれません(鍵穴のタイプや内部の引っ掛かりの箇所によってはあまり効果がない場合もあります)が、油分のようなベタつきはないのでホコリや汚れを吸い寄せることはなく、後々動きが渋くなってしまうようなこともありません。
まとめ
メンテナンスで使用する潤滑剤は“適材適所”が大切です。たとえば、同じように見える潤滑剤でも、使用箇所の素材や求められる耐久力、浸透性などを考慮して使い分ける必要があります。潤滑スプレー、グリスにも多種多様な製品がありますので、DIYメンテナンスをするなら定評のあるものから試していって、好みのものを揃えていくといいでしょう。
ちなみに個人で使うなら小容量のものがオススメですよ(普通に使っていると余っちゃうので)。
呉工業のオススメはコチラ:ドライファストルブ
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(メンテナンス&レストア)
幻のモペット「ホンダホリディ」 昭和の時代、ホンダが開発したモペット「ホリディ」の正式名称は「ホンダホリディ」、型式はPZ50。1973年頃「ブーンバイク」というアイデアを基に、ホンダ社内のアイデアコ[…]
PROGRIP専用の信頼接着剤 デイトナ(Daytona)の「グリップボンド PROGRIP 耐振ゲルタイプ専用 12g 93129」は、PROGRIP用に設計された専用接着剤です。容量は12gで、初[…]
単気筒1ボディと4連キャブでは洗浄段取りに違いあり。 超音波洗浄が可能なら、完璧に近い仕上がりに!! いつかそのうち乗るつもり…という「いつか」が数ヶ月から数年になり、もうダメか…となるのが長期放置車[…]
どうする? スクーターのエンジンがかからない ※これはまさに、筆者が直面した実話です。我が家のスクーター(TODAY)に乗ろうと思って、車庫から引っ張り出しました。ちょっと久しぶりですね。エンジンをか[…]
ギボシ端子取り付けのポイントをおさらい バイクいじりのレベルやセンスは、その人が手がけた作業の跡を見れば一目瞭然。電気工作なら配線同士をつなぎ合わせる際、芯線をねじってビニールテープでグルグル巻きにし[…]
人気記事ランキング(全体)
新設計の4気筒・502ccエンジンにEクラッチを搭載! ホンダは、中国で開催中の重慶モーターサイクルショーにて新型モデル「CB500スーパーフォア(CB500 SUPER FOUR)」を世界初公開した[…]
ダークカラーに往年のオマージュカラーを乗せて 特別仕様車の製作を定期的に行うカブハウスは、1970年代のダックスをオマージュしたような限定仕様「DAX Royal Limited Edition」を発[…]
その姿、まるでハンターカブ×ミニトレ?! タイ仕様は新型に切り替わるとともにカラーバリエーション変更&グラフィックが変更された。 一方ベトナム仕様は、従来モデルを標準仕様として併売。この標準モデルはカ[…]
滑りにくさと耐久性を両立したソール設計 アシックスの安全靴「WINJOB CP113」は、油で劣化しにくく耐久性に優れたCPグリップソールを採用。濡れた床や油で汚れた現場でも安定したグリップ性能を発揮[…]
トレリスフレーム+ユニトラックサスペンションの本格派 カワサキは欧州で、15psを発揮する水冷125cc単気筒エンジンをスチール製トレリスフレームに搭載し、前後17インチホイールを履かせたフルサイズス[…]
最新の投稿記事(全体)
主要スペックと価格 Rakiieの腰サポーターは、8点式サポートと4本のメモリアルバーを搭載し、従来モデル比で高い固定力をうたう設計です。2本の弾性スプリング&PPバーで骨盤と腰椎の姿勢を整え、坐骨神[…]
白バイ隊員になるには 白バイに乗るためには、あたり前のことですが大型自動二輪免許の取得が必要です。とはいえ、警察官になる時点で取得していないとダメかといえば、そうではありません。後から取得する手間が減[…]
レースで勝つために進化を重ねたトップパフォーマー 「GSX-Rの40年」ではまず、”アルミフレーム+カウリング+4スト最強水冷4気筒”のGSX-R(400)を紹介。 1980年代初頭に始まった空前のバ[…]
バンテリンサポーターとは 「バンテリンサポーター 腰椎コルセット」は、興和株式会社(ブランド名: バンテリン)による腰のぐらつき抑制を目的としたサポーターです。Amazonではカラー展開(ブラック/パ[…]
R90Sから受けた影響とXLCRとの意外な共通点 Z1‐Rに対するイメージを聞かれたら、多くの人が”カフェレーサー”と答えるだろう。ただしカフェレーサーは車両のオーナーやチューナーが作るもので、原点は[…]
- 1
- 2