
北海道ツーリングで立ち寄るライダーも多い、札幌市中心市街地における二輪駐車場の現況や課題について、市担当者に尋ねた。雪国という地域性もあり、本州とは異なる駐車環境となっている。
●文:田中淳麿(ヤングマシン編集部) ●取材協力:札幌市まちづくり政策局 総合交通計画部交通計画課
自動二輪駐車施設拡大の難しさ
札幌市は、国土交通省の通達(2010年)に基づき、2018年6月に駐車場条例を改正し、自転車駐輪場に125cc以下のバイクを受け入れてきた。また、それ以上の排気量については、冬場の季節波動が大きいこともあって、附置義務条例(※)の制定はなく、整備の義務化には至っていない。
※附置義務条例…該当地区内で一定規模以上の建物の新築/増築の際には、敷地内に駐車施設が必要という附置義務制度に基づいて地方公共団体が定めた条例
中心市街地のおもな二輪駐車場については、公式サイトで案内されている。また、125cc以下が駐められる各駐輪場のリアルタイムな満空情報は、管理者によるホームページで確認できる。125cc以下のバイクであれば、こうしたサイトを活用することでかなりスムーズに駐車できるはずだ。
札幌市中心部の駐車場サイト
なお、定期貸しは4~11月末までの契約で、駐輪場によっては冬期保管サービスも行っている。札幌では、バイクの冬期保管はバイク販売店か自宅のガレージで行うのが一般的だが、車両を使用できないオフシーズンでも駐車マスが有効活用されている。しかも1台4000円以内とかなりリーズナブルで人気だ。
125cc超の大きなバイクについては、冬期の使用が現実的ではないことから、専用駐車場は少ない。ほとんどが四輪車との共用マスとなるため、用意されたマスに四輪車が駐まっていると二輪車は駐められなくなる。
中心市街地には数十台が駐められるような大規模駐車施設もないので、マスツーリングで立ち寄る際には注意が必要だ。ホテル等に宿泊する場合も、駐車可能台数についてあらかじめ施設に確認しておくべきだろう。
【125ccまでOKの西2丁目線地下駐輪場】大通公園と狸小路の間に位置する使い勝手のよい地下駐輪場。入口は通り沿いに設置され、エレベーターか搬送コンベアで昇降できる仕組み。1回24時間以内で、125cc以下200円と安価だが、埋まりやすいのでサイトで確認を。
中心市街地では、通勤/通学/買い物などで流入する市内在住者と、道外ツーリングライダーによる放置駐車が課題だ。
1990年代の北海道ツーリング全盛期に比べれば数は減っているものの、大通(おおどおり)公園の歩道スペースには今も違法駐車のバイクが目につく。市は重点的な実態調査と啓発を行っているが、各駐輪/駐車場の周知など引き続き対策が求められている。
また、市は民間の駐車場事業者に対して、バイクの受け入れを検討してもらえるよう毎年要望も行っている。「路外駐車場設置(変更)の届出に関する手引き」にも事例を記載するなど対応しているが、冬場はバイクが使われない地域のため、事業採算性からも整備拡大は容易ではない。
駐車場条例改正により、駐輪場への125cc以下受け入れも進められている。また、自転車等放置禁止区域内(札幌駅北口~国道36号)では、50cc以下と自転車を対象に違法駐輪車両の即時撤去も行うが、西2丁目線地下駐輪場に見られるように、まずは駐車スペースの拡充に力を入れている。今後は取り組みのさらなる周知/啓発に努めるとしている。
市民や地域の流入者だけでなく、中心市街地を訪れたツーリングライダーが具体的な意見や要望を届けることも必要だ。今後はそのための仕組みづくりも求められるだろう。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事([連載] 2輪車利用環境改善部会)
EVは脱炭素社会実現と移動課題の改善に寄与するか 「バイクラブフォーラムin南国みやざき」で実施されたパネルディスカッション、「電動二輪車利活用による社会課題(脆弱な二次交通)解決」において、次のトー[…]
100万都市・千葉市のバイク駐車場問題 上総台地の平坦地に位置する千葉市は、人口98万人強の大きな自治体で、現在も増加中であることから「最後の100万都市」とも呼ばれている。 高度経済成長期には大規模[…]
原付バイク安全運転スキルアップ講習会について 本講習会は原付バイクに特化した安全運転講習会で、原付利用者の交通安全意識と安全運転技能の向上を図り、交通事故を防止しようという狙いで2024年から開始され[…]
熊本市繁華街、バイク駐車場の実態 熊本一の繁華街である下通(しもとおり)商店街の周辺を歩いたが、目につくのは自転車駐輪場への125cc以下の受け入れが進んでいること。とくにアーケードから1本入った路地[…]
講習で学ぶカーボンニュートラルと電動モビリティの関係 今回の電動二輪車技術・安全運転講習会は、バイク通学の実施や「二輪車競技部」の部活動で知られる熊本県立矢部高等学校の生徒を対象に行われた。 循環型社[…]
最新の関連記事(交通/社会問題)
EVは脱炭素社会実現と移動課題の改善に寄与するか 「バイクラブフォーラムin南国みやざき」で実施されたパネルディスカッション、「電動二輪車利活用による社会課題(脆弱な二次交通)解決」において、次のトー[…]
100万都市・千葉市のバイク駐車場問題 上総台地の平坦地に位置する千葉市は、人口98万人強の大きな自治体で、現在も増加中であることから「最後の100万都市」とも呼ばれている。 高度経済成長期には大規模[…]
「令和4年改正道路交通法(マイナンバーカードと運転免許証の一体化・オンライン更新時講習)ポスター」から抜粋 免許情報が記載された「マイナ免許証」は便利に使える? 運転免許証とマイナンバーカードが一体化[…]
一回の違反で免許取消になる違反 交通違反が点数制度となっているのは、よく知られている。交通違反や交通事故に対して一定の基礎点数が設定されており、3年間の累積に応じて免許停止や取消などの処分が課せられる[…]
大切なバイクのメンテナンス バイクや乗用車に限らず、どんな乗り物でもメンテナンスは必要不可欠です。定期的にメンテナンスを行うことで、長く乗り続けることができるだけでなく、事故を防ぐことにもつながります[…]
人気記事ランキング(全体)
【ご注意】本記事は、エンジンオイルの過剰注入がエンジンに与える影響を確認するための実験であり、一般使用車両での実施や再現を推奨するものではありませんのでご了承ください。 オイルの規定量は守らなくちゃイ[…]
その姿、まるでGB400TT MkIIの正統後継者! 欧州ホンダは、2025年も例年通りカスタムコンテスを開催。これは正規ディーラーがホンダ車をベースにカスタムを手がけ、オンライン投票で最優秀マシンを[…]
実は”ホンダエンジン”時代からの愛車だった マンセルがF1のパドックで乗っていたのは、ホンダのダックス70(CT70)でした。1988年モデルとも、1987モデルとも言われていますが、いずれにしろ当時[…]
フェイスリフトと前後サスペンションの再設定 ホンダが「XL750トランザルプ」の国内2025年モデルを発売する。CB750ホーネットに似た2眼ヘッドライトを新たに採用し、センターダクトを設けたウインド[…]
2ストレプリカの原点にして、TZRへの橋渡し役だったRZシリーズ 最後の2ストロードスポーツを作るという情熱が込められ、1980年に登場したRZ250。同車が「最後」と言われたのは、環境問題も絡めて今[…]
最新の投稿記事(全体)
ヤマハ主催のナイトミーティング 去る5月10日(土)、ヤマハ発動機販売が主催するヤマハMTシリーズのイベント『The Dark side of Japan Night Meeting 2025(以下D[…]
『エンジンの振動・騒音低減技術 二輪・四輪・汎用』(グランプリ出版) 内燃機関を搭載するモビリティで、快適性や信頼性に大きな影響を与えるのが振動と騒音。その対策技術を二輪/四輪、そして汎用分野に至るま[…]
「KB4RC」「KB998 Rimini」の2機種を展示(予定) 株式会社カワサキモータースジャパンは、イタリアの⾼級ハンドメイドモーターサイクルブランド ・bimota(ビモータ)の⽇本総輸⼊元とし[…]
レジャーバイク人気の主役となった初代ダックスホンダ(1969年~) 国産レジャーバイクの元祖と言えば、ホンダが多摩テックで子供向け遊技用に用意したモンキーバイクZ100、それに続く市販車のモンキーZ5[…]
CBR650R&CB650Rをもっと楽しく、ジェントルに! マフラーカスタムは出力特性を向上させるもの。そんなイメージを抱いている方はとても多いと思います。しかし、近年のバイクはノーマルでも十分パワフ[…]