
2023年の末、ロイヤルエンフィールド・ショットガン650の国際試乗会でアメリカ・ロサンゼルスを訪れた編集部マツ。そのツアー中に訪れた「ピーターセン・オートモーティブミュージアム」には、数多くのオモシロ珍しい車両が展示されていたのでこれらを紹介していきたい。まずはシート高が不適切なほどに低すぎる、このマシンから!
●文と写真:ヤングマシン編集部(マツ) ●取材協力:ピーシーアイ ●外部リンク:PETERSEN AUTOMOTIVE MUSEUM
あのエディ・ローソンも愛用中のマシン!!
「アリゲーター A-6」と名付けられたこのバイクは、F1やルマンなどで活躍したアメリカ人レーサー、ダン・ガーニーが創設した「AAR(All American Racers)」というレーシングカーコンストラクターの一部門が手がけたもの。見てのとおり、世の中のどんなバイクより低いであろうシート(高さは18インチ=約457mm)が最大の特徴だ。
これは高身長だったダン・ガーニーが“ほとんどのバイクで適正なライポジが取れず、どうしても前かがみになってしまう”ことを解消するために生まれたアイデアだという。前かがみになるなら、それを適正化すべくシート高を下げればいい…というわけだ。
まるで地面に座るかのようなこのライポジ、はたしてどんな操縦性なのか…。AARのWEBサイトに掲載されている、試乗したライダーたちのコメントを拾ってみると、機敏でいながら自信を持って操縦できる安心感にも溢れており、そのハンドリングはとても優れているとのこと。
これは極端に低くされたシート高によって生まれた“劇的に重心が低い”という副次的メリットが要因らしい(ホイールベースも60インチ≒1520mmと長め)。しかもこのA-6、テストにはかのエディ・ローソンが参加しており、愛車の1台として所有しているというからさらに興味をそそられる。
【ALLIGATOR A-6】米AAR社が開発したアリゲーターA-6。ライディングポジションはなんとも独特で、ライダーはバイクに跨るというよりも”潜り込む”ようなイメージ。ステップが足を前に投げ出すフォワードコントロールなのは…ココしかステップの置き場所がないから?!
ホンダXRエンジンで最高速250km/hオーバー?!
A-6のエンジンはホンダXR650用の単気筒で、これを排気量アップなどで70psまでチューニングし、クロモリパイプで構成されたトレリスフレームに搭載。燃料タンクはシート下に配置されている。ホイール径は前後17インチだ。
注目なのはカーボンファイバー製の外装などにより、車重が320ポンド(約145kg)と非常に軽いこと。これによってA-6は非常に高い動力性能も有しており、最高速度は160マイル(約257km/h)と、ちょっと信じられないスペックが公称されている。
低いシートやフォワードコントロールのステップ、ライダーが寄り掛かれるバックレストなどでクルーザー的な印象を受けるが、A-6はライダーを革新的な位置に座らせることを核に構成された、れっきとしたスポーツバイクというわけだ。
このA-6は2002年に36台が生産されており、当時の価格は3万5000ドル。このアリゲータープロジェクトはダン・ガーニーが2018年に逝去した後も継続されており、A-6の後にはハーレーVツインのプロトタイプなども試作されている。このあたりの詳細はAAR社のWEBサイトから確認できる。
非常に低いシートは大きな背もたれを持ち、ここに身体を預けて(=マシンホールドをしなくても)強烈な加速を楽しめる構造。ニーグリップに配慮した大面積のパッドを持つ点からもスポーツ性を重視していることが分かる。
ホンダ系を流用したフロントフォークなどフロント周りは一般的な構成を持つため、メーター周辺の長めはごく普通のバイク。 ヘッドライトもホンダ系の流用のようだ(CBR600F4用?)
(余談)低シート高のスポーツバイクって…未開拓では?
以下は筆者の個人的見解のためヨタ話として聞いていただきたいが、低いシート高は足着き性を改善するだけではなく“地面に近い場所に座れる安心感”というメリットも同時に得られると考えている(あくまで公道レベルの話です)。
クルーザーが峠道で意外に楽しく走れる…なんてのはその一例で、低シートモデルが日本で人気なのは足着き性以外にも、そうした安心感や一体感をユーザーが無意識に感じ取っているからでは…な〜んて思うのだ。
そんな意味でも筆者はこのアリゲーターA-6に興味津々。”着座位置の低いスポーツバイク”と言うと、MC22型のホンダCBR250RRあたりがパッと思い浮かび「あれはいいバイクだったなー」なんて思うのだが、近年ではほぼ未開拓の領域。A-6ほど極端じゃなくても…このへんに鉱脈、ありませんかね?!
超低シート高スポーツ…と言ったらコレ?!
【ホンダCBR250RR(MC22)】1990年に登場したホンダCBR250RRのシート高は725mm。現行レブル250の同数値が690mmと聞けば、レッドゾーン19000rpmの超高回転型4気筒を積むスポーツモデルにも関わらず、ケタ外れに低いシート高を持つことがわかるハズ。ちなみに2気筒エンジンを積む現行型CBR250RR(MC51)のシート高は790mmで、近年の250スポーツはだいたい780〜795mmあたりの数値に収まっている。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
人気記事ランキング(全体)
一回の違反で免許取消になる違反 交通違反が点数制度となっているのは、よく知られている。交通違反や交通事故に対して一定の基礎点数が設定されており、3年間の累積に応じて免許停止や取消などの処分が課せられる[…]
足着きがいい! クルーザーは上半身が直立したライディングポジションのものが主流で、シート高は700mmを切るケースも。アドベンチャーモデルでは片足ツンツンでも、クルーザーなら両足がカカトまでベタ付きと[…]
2025年こそ直4のヘリテイジネイキッドに期待! カワサキの躍進が著しい。2023年にはEVやハイブリッド、そして2024年には待望のW230&メグロS1が市販化。ひと通り大きな峠を超えた。となれば、[…]
ホンダ新型「CB400」 偉い人も“公認”済み ホンダ2輪の総責任者である二輪・パワープロダクツ事業本部長が、ホンダ新ヨンヒャクの存在をすでに認めている。発言があったのは、2024年7月2日にホンダが[…]
振動の低減って言われるけど、何の振動? ハンドルバーの端っこに付いていいて、黒く塗られていたりメッキ処理がされていたりする部品がある。主に鉄でできている錘(おもり)で、その名もハンドルバーウエイト。4[…]
最新の投稿記事(全体)
約8割が選ぶというEクラッチ仕様 「ずるいですよ、あんなの売れるに決まってるじゃないですか……」と、他メーカーからの嘆き節も漏れ聞こえてくるというホンダの新型モデル「レブル250 Sエディション Eク[…]
ヤマハRZ250:4スト化の時代に降臨した”2ストレプリカ” 1970年代、国内における250ccクラスの人気は低迷していた。 車検がないためコスト的に有利だが、当時は車体設計が400ccと共通化され[…]
重厚感とユーザー寄りのデザインと扱いやすさが魅力本物のクラシックテイストがロイヤルエンフィールドの特長 1901年にイギリスで創業したロイヤルエンフィールドは、世界最古のバイクブランドとして長い歴史の[…]
SHOWAハイパフォーマンスシリーズキット体感試乗キャンペーン 東京都練馬区のK’s STYLE(ケイズ・スタイル)では、カワサキZ900/Z900RS用の高性能サスペンション「SHOWAハイパフォー[…]
丸山さんのCB好きをホンダも公認! ヤングマシン読者ならおなじみのプロライダー・丸山浩さん。1990年代前半にはCB1000スーパーフォアでテイストオブフリーランス(現テイストオブツクバ)を沸かせ、C[…]
- 1
- 2