
連載前回まで3回にわたって、熊本県立矢部高等学校の緒方宏樹校長に、高校生の免許取得/バイク通学/二輪車競技部のことなど、幅広く尋ねた。本記事では、息子さんが二輪車競技部に所属していSさん(68歳)と、二輪車競技部OBで現監督の本田和幸さんに尋ねた。
●文:ヤングマシン編集部(田中淳麿)
Sさんの息子さんは2年生(取材当時)で、二輪車競技部に所属して原付バイクの練習をしているが、免許の取得やバイク通学はまだこれから。現在はバス通学とマイカーによる送迎で矢部高校に通っている。
Sさんが住んでいる蘇陽(そよう)地区から学校までは15kmほどで、原付バイクだと30分以上はかかる。昔は蘇陽地区にも蘇陽高校があったが、2010年に矢部高校と再編統合した。少子化等による中山間地での学校の統廃合の影響を受けているのだ。現在の通学事情について尋ねた。
Sさん「バスが1日に3本ぐらい。部活のあと19時30分発のバスに乗って、国道沿いのバス停に20時40分ぐらいに着きますが、自宅はそこから1kmほど奥に入ったところなので、バス停までクルマで迎えに行きます」
原付免許が取れたらバイク通学をしたいという息子さんについて、Sさんは心配もあるようだ。
Sさん「最近は国道の交通量が増えて、飛ばすクルマも目立つし、高速道路工事の関係でダンプも多いので、危ないなという感じはしています」
――原付バイクだとそうしたクルマを抜かさせないといけない?
Sさん「そうですね。自分も国道をよく走りますが、矢部高校のバイク通学生は上手にやっています。30km/h制限も守っているし、大型車が来たら端に寄って止まり、先に行かせているのをよく見かけます」
Sさんとしては、息子さんが原付バイクを所有することは、矢部高校への通学のほか、個人としての移動手段や家業(農業)の手伝いにも必要であるという考えだ。中山間地ではよく「クルマがなくては暮らせない」というが、高校生にとっても、そうした移動課題を改善するために原付バイクは必要とされている。
息子さん自身は、バイクに乗って通学することをどう考えているのか。
Sさん「息子は特段バイクが好きというわけではないですが、バイクやバイク通学の必要性は理解しています。二輪車競技部に入っているのも、バイクが大好きというよりは、部活紹介を見て、運動部のひとつとして入部したという感じですが、最近は運転に自信がついたと喜んでいます」
――奥様はどうお考えですか?
Sさん「反対はしていません。バイクに乗れるものなら乗ってほしいという考えです。家族で旅行をするのが好きですし、私も昔はバイクに乗っていたので、将来はバイクで一緒に旅行に行きたいということも話します」
――息子さんと安全運転について話されることはありますか?
Sさん「クルマに乗っている時は『相手のミラーに自分が映るように』ということはよく言いますね」
バイクが大好きというわけではないが二輪車競技部に入っているという生徒は、これまでにも取材してきた。息子さんが二輪車競技部に入っていることや、矢部高校の安全運転への取組みについて、Sさんは保護者としてどう感じているのだろうか。
Sさん「監督のおかげもあって、息子は運転が上手になりました。ふだんはできないような練習もしているので、今後公道に出る時も安心ですね」
本田監督「矢部高校では、1年生の春休みに学科試験を受けて、2年生になったらバイク通学を始めるという流れです。原付免許取得時に、近くの自動車学校で3時間講習(法定講習)を受けますが、4月中旬には二輪車競技部による3時間の実技講習(技術向上のための少し高度な講習)も行われています。ですから、矢部高校の生徒は、バイク通学を始める前に3時間講習を2回も受けています」
二輪車競技部による独自の講習内容について聞いた。
本田監督「バイクを立ててから乗降車したりとか、技術を上げるための講習です。最後は少し怖い話もするんです。半キャップのヘルメットで走っていた先輩が前歯を折ったとか。夏場でも長袖とグローブは大事だぞ、ヘルメットのあご紐はちゃんと締めないといけないぞということも、毎年話します。今の生徒はこういう話をちゃんと聞いてくれます」
Sさん「生徒たちは本当にお手本のように走っていますよ」
しっかりした講習を独自に行っている矢部高校の生徒は、公道やバイクの危険について理解し、安全運転を実践している。保護者の理解や安心も、こうした点から生まれるのだろう。
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