
ホンダが初めて発売するパーソナル向け電動スクーター、EM1 e:に試乗することができたのでインプレッションをお届けしたい。交換式バッテリー×1個を搭載し、航続距離は53km。さまざまな走行条件や使い勝手を想定しながら都内の道をバッテリー残量が20%程度になるまで走ってみた。
●文:ヤングマシン編集部(吉岡直矢) ●撮影:長谷川徹
ホンダEM1 e: 概要
ホンダの電動バイクといえば、この6月より従来のジャイロe:/ベンリィe:といった電動ビジネスバイクの一般向け販売がスタート。そしてついに、パーソナルユース向けの電動バイクが2023年8月24日に発売されることになった。それが今回試乗した原付一種のEM1 e:だ。
まずお伝えしたいのは価格について。着脱式バッテリーと充電器を含んで29万9200円、さらに自治体によっては国と自治体で合わせて6万円近い補助金(経産省から2万3000円、東京都の場合は約3万6000円)が受けられるため、現行50㏄に近い24万円程度で購入できることになる。
車体は、中国向けの電動モペッド、U‐GOがベースで、固定式バッテリーから交換式バッテリーの「ホンダモバイルパワーパックe:(MPP)」に換装、タンデムステップ廃止といった変更が加えられている。
【HONDA EM1 e:】■全長1795 全幅680 全高1080 軸距1300 シート高740(各mm) 車重92kg(装備) ■交流同期電動機 定格出力0.58kW 最高出力2.3㎰/540rpm 最大トルク9.2kg-m/25rpm 1充電走行距離53km(30km/h定地走行) ■タイヤサイズF=90/90-12 R=100/90-10 ●色:白 銀 ●価格:29万9200円 ●発売日:8月24日
【ライディングポジション】シート高は740mmかつスリムな形状から足着き抜群。足元に窮屈さはなく、ハンドルの位置やミラーの見え方なども自然だった。小柄な方でも支えやすそうだ。[身長183cm/体重83kg]
生活道路はイーコンで、幹線道路は標準モードを
さて、気になるのはガソリン車の原付一種と同等の走行性能が得られるのかということ。電動ならではの静粛性などはさておき、今回は日常の走行にフォーカスしてみたい。
車重は92kgで、ガソリン車の原付一種に比べて10kg程度重いが、押し引きでそれを感じることはあまりなかった。センタースタンドを上げる際にやや手応えがあって、人によっては重さを感じるかもしれない。
メインキーで電源をオンにし、一般的なセルボタンと同じ位置にあるスターターボタンを押すと、走行スタンバイ状態になる。メーターにはイーコン/レディ/スピードのインジケーターがあり、それぞれイーコンモードのオン/オフ、走行可能状態、速度警告(30km/h超で点灯)を意味している。
バッテリー残量が100%になっていることを確認し、いざ発進だ。
右手側のスイッチでイーコン(ECON)モードとSTDモードを切り替えながら走ると、イーコンではかなり穏やかな発進加速を披露する。片側2車線の広い道路ではちょっと心もとないが、一方で自転車や歩行者も行きかうような生活道路では『これで十分』と感じる。
イーコンモードでは、実測30km/h相当と思われるメーター読み32km/hで速度リミッターがかかり、それ以上は加速できない。そこへの到達もやや時間がかかるが、これも生活道路なら気にならない。
STDモードでは空冷4ストの原付一種と同程度の加速力になり、クローズド環境で試したところ最高速度は48km/hほど。法規を守って走行するにしても、混合交通で流れを乱さずに走るためには、駐車車両を避ける際などにある程度の瞬発力が期待できるのはありがたい。
ちなみに、バッテリー残量が30%を切ったあたりで加速/最高速とも制限が入り、STDとイーコンの中間ぐらいにになった。
モードによって顕著な差が出るのは登坂路だ。編集部から近い東京都上野駅の周辺は坂道がいくつかあるのでアタックしてみたところ、ECONでは斜度がきついとグングン速度が落ちていき、場合によっては15km/hを下回る。たまたま並んで走った電動アシスト自転車もなかなか追い抜けなかったくらいだ。
これをSTDモードに切り替えると、ガソリン車と同様の力強さでストレスなく登るようになる。
じゃあ全てSTDモードで走ればいいじゃん、と思いたくなるが、そこで気になるのは電費である。
公称値はフル充電で53kmの走行が可能としているが、実際の走行では体重83kgの筆者で40km前後といった印象。イーコンモードでは400m強を走るとバッテリー残量が1%減るのに対し、STDモードにすると300〜400m間の300m寄りで1%。さらに、STDモードでキツめの登坂路になると、200mも走らないうちに1%減る。
例えば片道5kmの通勤を想定してみよう。幹線道路や坂道が多めなら、1充電で3往復(30km)はやや不安がある。しかし、不要なときはイーコンモードにするなど、電費を稼ぎながら走れるような状況であれば、4往復も難しくないかもしれない。体重の軽い方ならもっと距離が延びる可能性もある。
とまあ航続距離はともかく、こと走行においては原付一種と同等と見てよさそうだ。
一方で、使い勝手では1点気になる所が。充電は交換式バッテリーを外して充電器に載せるのだが、重量が10.3kgあるMPPを腰の高さまで持ち上げなければならず、華奢な体格の方は手こずるかもしれない。
一般的な走行性能は原付一種として十分だろう。あとはご自身の自治体の補助金や、普段の使用状況に合うかどうかが購入の判断材料になりそうだ。
サイズはコンパクトで、電動ならではの静粛性もあって乗り心地はいい感じ。左レバーを握ると前後ブレーキが利く連動式を採用していて安心感がある。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(ホンダ [HONDA])
より高度な電子制御でいつでもどこでも快適な走りを!! 【動画】2026 CB1000GT | Honda Motorcycles ホンダがEICMA 2025にて発表した「CB1000GT」は、「Hi[…]
“レールのないジェットコースター”のコンセプトはまさに二輪車のFUNを体現 ホンダは、昨年のEICMA 2024で世界初公開したV型3気筒コンセプトモデルに続き、「V3R 900 E-Compress[…]
スペンサーの世界GPでの大活躍がAMAレースの注目度を高めた 旧くからのバイクファンなら、だれもが“ファスト・フレディ”の愛称を知っているだろう。1983年に世界GP500でチャンピオンに輝き「彗星の[…]
原付免許で乗れる『新しい区分の原付バイク』にHondaが4モデルを投入! 新たな排ガス規制の適用に伴い2025年10月末をもってHondaの50cc車両は生産を終了しますが、2025年4月1日に行われ[…]
マニア好みのボルドールカラーが映える! アクティブが手掛けるCB1000Fカスタムだが、まずはカラーリングがインパクト大! CB-Fといえば、純正カラーでも用意されるシルバーにブルーのグラフィックの、[…]
人気記事ランキング(全体)
名機と呼ばれるVツインエンジンを搭載! 今や希少な国内メーカー製V型2気筒エンジンを搭載するSV650/Vストローム650が生産終了となり、名機と呼ばれた645ccエンジンにひっそりと幕を下ろしたかに[…]
より高度な電子制御でいつでもどこでも快適な走りを!! 【動画】2026 CB1000GT | Honda Motorcycles ホンダがEICMA 2025にて発表した「CB1000GT」は、「Hi[…]
スポーツライディングの登竜門へ、新たなる役割を得たR7が長足の進化 ミラノで開催中のEICMA 2025でヤマハの新型「YZF-R7(欧州名:R7)」が登場した。2026年から従来のワールドスーパース[…]
背中が出にくい設計とストレッチ素材で快適性を確保 このインナーのポイントは、ハーフジップ/長めの着丈/背面ストレッチ素材」という3点だ。防風性能に特化した前面と、可動性を損なわない背面ストレッチにより[…]
ニンジャH2 SX SE 2026年モデル発売! スーパーチャージャー搭載のスポーツツアラー「Ninja H2 SX SE」の2026年モデルが、2025年11月1日に発売。おもな変更点は、カラー&グ[…]
最新の投稿記事(全体)
11/1発売:カワサキ Z250 カワサキ「Z250」はニンジャ250と骨格を共有するこの軽二輪スーパーネイキッドは、アグレッシブな「Sugomi」デザインを継承。軽さと力強さを併せ持つ本格的スーパー[…]
長距離や寒冷地ツーリングで感じる“防寒装備の限界” 真冬のツーリングでは、重ね着をしても上半身の冷えは避けにくい。特に風を受ける胸や腹部は冷えやすく、体幹が冷えることで集中力や操作精度が低下する。グリ[…]
冬の走行で感じる“体幹の冷え”との戦い 真冬のツーリングでは、外気温が5℃を下回ると防風ジャケットを着ていても体幹が冷えやすい。特に走行風が首元や袖口から侵入し、次第に体の芯まで冷えが伝わると、集中力[…]
欧州では価格未発表だが、北米では前年から200ドル増の9399ドルと発表 ヤマハは北米で新型「YZF-R7」を発表。欧州で発表された新型「R7」にモデルチェンジ内容は準じつつ、北米独自のカラーリングで[…]
論より証拠! 試して実感その効果!! カーシャンプーやワックスをはじめ、さまざまなカー用品を手がけてきた老舗ブランド「シュアラスター」。そのガソリン添加剤シリーズ「LOOP」のフラッグシップモデルが、[…]





































