
渋滞中の高速道路の路肩といえば、日本ではもちろん走行禁止。本来の用途である緊急車両が通ったり、故障車が停車したりしているほか、一部の無法なクルマが通行したりする姿も見られます。一方、バイクは走行レーンの間を縫うようなスリ抜け走行が問題視され……。この危険な状態を合理的に解決する方法はないのでしょうか。
●文:Nom(埜邑博道)
真夏の高速道路は灼熱地獄! ライダーを守るために路肩走行を認めて欲しい!
コロナ禍が一段落した今年のゴールデンウイーク(4月29日~5月7日)は、ワイドショーでも連日報道していたように高速道路は昨年比で交通量が106%で、10km以上の渋滞回数は285回、最も長い渋滞は5月3日の関越自動車道・藤岡JCT付近で発生したもので、延長距離は54.0kmでした(NEXCO東日本発表)。
今回のGWも休日割引が適用されませんでしたが、結局、多くの人は休める日にしか移動・旅行ができないため、どうしても休日の高速道路は渋滞してしまいます。コロナが落ち着いたいま、おそらく今年のお盆期間の渋滞はひどいものになることが予想されますが、気を付けたいのが真夏日や猛暑日の走行です。
とくに今年は、5月から30℃を超える真夏日が発生していますから、本格的な夏がやってきたら……。
30℃以上の気温になると、高速道路上はクルマのエンジンが発生する熱や路面からの照り返しによって体感温度は40℃を超すことも多々あります。そんななかでは、メッシュジャケットを着て走っていても身体にあたるのは熱風で、どんどん汗が流れだしてきて脱水症になりそうになります。
そして、そんな日に何十キロもの高速道路の渋滞に巻き込まれてしまったら、エアコンがなく、プロテクターを装備したジャケットやライディングパンツ、ジーンズなどを身にまとい、ヘルメットをかぶったライダーはもはやゆでダコ状態。とくにトンネルの中などは、これに排ガスの臭いが加わって意識が朦朧としてしまうことも。
真夏のツーリングでは、ライダーはとくに熱中症に気を付けなければいけません。
そして、本線がどんなに渋滞していても空いている左端の路肩が走れればと、ライダーなら一度は思ったことがあるに違いありません。
国交省は「危険だから認められない!」の一点張りだが、スペインではOK!
実際、オートバイ協同組合連合会(AJ)は、自民党や公明党のオートバイ議連の政治家とともに、以前から渋滞時のみバイクが路肩を通行することを認めて欲しいと国土交通省に提案しています。
内容は、渋滞時のみ、ライダーの安全のために40km/h程度で路肩を通行することを許可してほしいというもので、実際にツーリング中に高速道路の渋滞に遭遇したことのあるバイクに乗る政治家の方などが強く主張されています。
しかし、国交省の回答は、路肩は緊急時に車両を停止する場合などに使用するものなので、原則、走行は禁止。また、緊急車両の走行を妨げる可能性もあるので認められないの一点張りだそうです。
ただ、ライダーの立場から言わせてもらえば、路肩を走行中に後方から緊急車両が走ってきたら速やかに通常の走行レーンに戻るか端に寄ればよくて、バイクなら簡単なことでまったく問題ないのではと思います。
渋滞のクルマの後ろに停車していて熱中症になってしまうよりも、危険性は少ないでしょう。また、無理なすり抜けをして、車と接触する危険性も格段に低下します。
ここ数年のコロナ禍の間に新たにライダーになった方などは、まだまだ経験が少ないので十分な暑さ防止策を講じていないかもしれず、その点も心配になってきます。
渋滞時に限って、制限速度は40km/h以下、緊急車両が来たら速やかに左端によって停車するなどのしっかりしたルールを作って、走行可能になった場合は何らかの方法で表示する(二輪走行可能のランプが点くとか)など、安全かつ現実的な手段で走行可能にしてはもらえないものでしょうか。
ヨーロッパの事情に詳しい友人によると、ヨーロッパでも路肩(ハードショルダーと言うそうです)は故障車や緊急車だけがここを使うことができると定められているそうですが、スペインはその例外で、渋滞時に限って、指定された特定の区間の路肩を40km/h以下でバイクが走ることが認められているそうです。また、イギリスの一部の高速道路でも一部の区間に限って、路肩通行を認めているケースがあるそうです。
AJ元会長で、現在はオートバイ政治連盟の会長を務める吉田純一さんによると、現在、自民党二輪車問題対策プロジェクトチーム(以下PT)は、高速道路の定率割引を休日以外にも適用して、365日いつでも割引が受けられるようにすることを最優先して活動中で、それが実現したのちに、高速道路の路肩走行についても取組んでいく意向とのこと。
その際には、ぜひスペインとイギリスに視察に行っていただき、現地のライダーとドライバーの声を聞いてきていただきたいものです。
自民党PTの座長になった三原じゅん子議員も、定率割引の365日化を実現すると本誌のインタビューで語ってくださいましたから、1日も早くそれが実現し、高速道路の路肩走行含め、よりバイクにやさしい使用環境を実現するように頑張っていただきたいですね!
そしてライダーのみなさんは、真夏のツーリングでは事故に加えて、高速道路での熱中症予防にもお気をつけてください。
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
あなたにおすすめの関連記事
高速料金問題は自民党PTの1丁目1番地。12年かかって一歩進んだと思います 2022年4月3日からスタートした“ETC二輪車定率割引”。土日祝日限定/事前に専用サイトで自分のETC機器を登録/片道10[…]
約500万人が便利に利用している原付一種の存続を強く訴えていく 全国オートバイ協同組合連合会(以下AJ)は、日本全国の約1600社のバイクショップが加盟する都道府県単位の協同組合で組織される団体で、大[…]
再びの価格据え置き宣言、イージス防水防寒スーツも対象だ! 快適ワーク研究所を新たに設立、今後の動向に注目だ! 新業態のワークマンカラーズ出店、プレミアムブランドも誕生! 本格展開スタートから1年、キャ[…]
人気記事ランキング(全体)
カワサキ500SSマッハⅢに並ぶほどの動力性能 「ナナハンキラー」なる言葉を耳にしたことがありますか? 若い世代では「なんだそれ?」となるかもしれません。 1980年登場のヤマハRZ250/RZ350[…]
マーヴェリック号の燃料タンク右側ステッカー エンタープライズに配属された部隊 赤いツチブタは、「アードバークス」の異名を誇る米海軍「第114戦闘飛行隊(VF-114)」のパッチ。1980年代には第1作[…]
※この記事は別冊モーターサイクリスト2010年11月号の特集「YAMAHA RZ250伝説」の一部を再構成したものです。 ヤマハ RZ250のエンジン「2ストロークスポーツの純粋なピーキー特性」 ヤマ[…]
カラーバリエーションがすべて変更 2021年モデルの発売は、2020年10月1日。同年9月にはニンジャZX-25Rが登場しており、250クラスは2気筒のニンジャ250から4気筒へと移り変わりつつあった[…]
公道モデルにも持ち込まれた「ホンダとヤマハの争い」 1980年代中頃、ホンダNS250Rはヒットしたが、ヤマハTZRの人気は爆発的で、SPレースがTZRのワンメイク状態になるほどだった。 しかしホンダ[…]
最新の投稿記事(全体)
カワサキW800(2017) 試乗レビュー この鼓動感は唯一無二。バイクの原点がここに 1999年2月に発売されたW650は2009年モデルを最後に生産を終了。その2年後の2011年、ほぼ姿を変えずに[…]
旧車の開発に使われた”鉱物油”にこだわる 1992年に創業した絶版車ディーラーのパイオニア・ウエマツ。販売だけでなく、整備にも徹底して力を注いできた同社がそのノウハウをフィードバックし、旧車に特化した[…]
インパクト大なシリーズ初カラー 現代的ストリートファイターのMT-09をベースに、アルミタンクカバーなど金属の質感を活かした専用外装などでネオレトロに仕上げられた1台であるXSR900。3種のパワーモ[…]
イベントレース『鉄馬』に併せて開催 ゴールデンウィークの5月4日、火の国熊本のHSR九州サーキットコースに於いて、5度目の開催となる鉄フレームのイベントレース『2025 鉄馬with βTITANIU[…]
ロングツーリングでも聴き疲れしないサウンド 数あるアドベンチャーモデルの中で、草分け的存在といえるのがBMWモトラッドのGSシリーズ。中でもフラッグシップモデルのR1300GSは2024年に国内導入さ[…]