
人気のカワサキZ900RSが、’23モデルで令和2年度排出ガス規制に対応するモデルチェンジを実施。一見すると外観はまったく同じようだが、実はマフラー形状が変わっているほか、制御系統など目に見えない部分もブラッシュアップされている。走りに注目した前回の記事に続いて、様々な観点から新旧モデルを比較してみた。
●文:ヤングマシン編集部(宮田健一) ●写真:長谷川徹 ●外部リンク:カワサキ
’23 カワサキ Z900RS:排ガス規制を技術と根性で跳ね返していた!
’22年11月以降から継続生産車にも適用される令和2年度排出ガス規制に対応した新型Z900RS。これに伴い、認定型式番号も2BLから始まる旧モデルから8BLから始まるものへと変更となった。
だが、STDでは車体色も旧モデルと同じとあってパッと見ではどこに違いがあるのか判別しづらい新モデル。外観上で新旧を見分ける唯一の方法(厳密にはフレーム番号でも見分けられるが)は、マフラー前半部分の形状だ。
新モデルではエキゾーストパイプ連結部と、その後に続く触媒が収められている部分。ここの形状がよく見ると変化している。新型では環境性能を高めつつ、スパイラル効果で性能アップを狙ったような造りとなっていた。他にもECUセッティングやセンサー類など、目に見えない部分も進化しているのだ。
【’23 KAWASAKI Z900RS】主要諸元■全長2100 全幅865 全高1150 軸距1470 最低地上高130 シート高800(各mm) 車重215kg(装備) ■水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ 948cc 111ps/8500rpm 10.0kg-m/6500rpm 変速機6段 燃料タンク容量17L ■キャスター25.0°/トレール98mm ブレーキF=φ300mmダブルディスク+4ポットキャリパー R=φ250mmディスク+1ポットキャリパー タイヤサイズF=120/70ZR17 R=180/55ZR17 ●価格:143万円 ●色:青 黒
【STD同士なら色も違いなし】新旧では型式認定番号が変更となり車検証の記載も変化。だが、STD同士では色も同じでパッと見では違いが分からない。写真の’22は50周年記念車でグラブバーはその特別装備。STDでは’23と同じくオプション扱いとなっている。
’23 カワサキ Z900RS:新旧の唯一の見分け方はマフラー前半の形状
写真上が規制対応の’23モデル、下が規制前の’22モデルのマフラーだ。並べてみると前半部、特に集合部付近の形状が著しく変化していた。なお型式変更に伴い、カスタム含め旧型用マフラーを新型に装着するのは法的にアウトだ。 ※写真提供:カラーズインターナショナル
’23 カワサキ Z900RS:’22→’23の進化はグラフにも! シャシーダイナモで進化を見える化
新旧Z900RSのエンジン性能差を数値的に明確化するために、埼玉県にある和光2りんかん協力のもと、フックス社のシャシーダイナモで測定を実施した(共に4速で測定のクランク軸出力)。
その結果、新排ガス規制対応による悪影響を最低限に抑え、要(かなめ)となる出力特性を描くカーブそのものは旧モデルの良さを継承し、さらにはそれを上回る気持ちよさを実現しようという開発者の努力の痕跡を見ることができたのだ!
【パワーはトップエンドで微増傾向】8200rpmまでは旧型よりパワーを抑えているが、そこからは逆転。マックスでは上回っている。特性を継承しつつ低中での扱いやすさと高回転の伸び感を高めた印象だ。(青:’23モデル/赤:’22モデル 以下同じ)
【スピードの乗りのよさは新型】同じ速度を出す場合、新型はトルクを下げる代わりに回転馬力で引っ張るも結果的には似たような曲線に。規制下でもパワーダウンを感じさせない工夫だろうか。
【トップエンドはスッと抜ける】新型の6速と4速とでは回転数含めてレブリミッターへの当たり方が違っている。各ギヤごとに制御を変えていることが、このグラフからも見て取ることができた。
’23 カワサキ Z900RS:一問一答 改良点をカワサキに聞いてみた!
───従来型の2BLから最新型の8BLとなったことで変更点を教えて下さい。
新しい環境規制に対応するため、主に以下の改良を実施しました。これに伴い排気マニホールド及び排気チャンバーは新規部品となっています。
- 三元触媒の排気ガス浄化性能の向上(触媒サイズUPと貴金属担持仕様の見直し)
- O2センサー制御の精度向上
- スロットルボディのFID制御特性変更
- FI-ECU制御プログラムの変更
───2BLモデルに対し、エンジンやFI、ECUやサスペンションのセッティングなど、走りやフィーリングに変化を及ぼす変更点はありますか?
FI-ECUのセッティング変更(燃料噴射量、点火時期、電子制御サブスロットルバルブ)により、加速時や減速時のフィーリング(スムーズさなど)を向上させています。
───2BL モデルに対し、WMTC モード燃費がやや悪化(20.0 km /L→18.8km/L)している理由を教えて下さい。
前述の改良のためモード燃費が若干悪化しました。しかし60km/h/定地燃費は2BLモデルと同じです。
’23 カワサキ Z900RS まとめ:牙は抜かれるどころか磨かれていた
’18年にデビューしてから、もう5年も人気ナンバー1の座に君臨し続けているZ900RS。あらためて新旧モデルを乗り比べてみると、ほんの少し前傾させながらビッグネイキッドらしい雰囲気を楽しませてくれるワイドなアップハンドルや、ゆとりあるステップ位置のバランス、しっかり車体を支えられる足着き性など基本的な良さはそのままに、ともすると音量自体も大きくなったと思えるような歯切れのいい新マフラーサウンドや、きめ細かいスムーズさが光っているエンジン制御などで商品力は増していた。
2段階+オフとなるトラクションコントロールの制御も相変わらず素晴らしい。伝統的なスタイルながらも、レスポンスのいい今どき水冷900ccで、ウイリーなども楽々こなすポテンシャルを持つZ900RS。それにふさわしいアクション性の高い走りをしてもトラクションコントロールは正確に作動してくれる。
排ガス規制対応という足かせをはめられながらも、いかにパワーをダウンさせず、さらには全体の性能をこれまで以上に高めるにはどうしたらいいか。開発者たちはきっと足りなかった部分をきっちり煮詰めることに執念を燃やしたことだろう。
Z900RSの入荷待ちをしている新しいユーザーもどんどん増え続けているであろうなか、カワサキもその期待に応えて裏切ることのない良いモデルチェンジになっている、というのが結論だ。
Z900RSを手にしたら、すぐにカスタムマフラーに換えてしまうユーザーも多いだろうが、その前にカワサキの思いが詰まったノーマルマフラーの良さもしっかり味わってから換えてみてほしい。その方が、きっとカスタム後の変化も楽しめるはず。
新排ガス規制対応ということで、テストする前はちょっと心配な点もあった’23モデル。しかし、その心配はまったく不要だった。「牙を抜かれる」どころか、さらに「牙を磨いた」正常進化を見せてくれた新Z900RS。これからも人気ナンバー1の座を不動のものにしていく予感をヒシヒシと感じさせてくれた。さすがカワサキ、よくやってくれた!
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