かつてない発想がかつてないバイクの楽しさを生み、それが未来のスポーツバイクまでを楽しみにさせてくれる。ビモータはそんな斬新なバイクを作り続けてきた。それはカワサキ傘下になった今も変わらない。
【テスター:小川勤】’22年春に誕生した新WEBメディア『ミリオーレ』のディレクター。外国車の試乗経験が豊富で、ライテクにも精通している。
●文:ヤングマシン編集部(小川勤) ●写真:長谷川徹 ●外部リンク:カワサキモータースジャパン
ビモータ KB4:同エンジンのニンジャ1000SXより42kgも軽い
’19年のEICMAでイタリアのビモータがカワサキ傘下になることが発表され、約2年半が経過。カワサキ×ビモータの第1弾であるテージH2に続き、第2弾となるKB4のデリバリーもスタート。様々なメーカーがロケットカウル付きのカフェレーサースタイルを提案するが、ビモータは往年のイタリアンカフェを再現する。
様々なエンジンをオリジナルシャシーに搭載してきたビモータならではの手法は変わらず、KB4はニンジャ1000SXのエンジンを使って信じられないスペックを実現。特筆すべきは重量とホイールベースである。
重量はニンジャ1000SXよりも42kgも軽い194kgで、ホイールベースは50mmも短い1390mm。このスペックは各部にカーボンパーツやアルミ削り出しパーツを採用することと、ラジエターをシート下に移設することで達成している。
ビモータ KB4 試乗インプレッション:斬新なアイデアを形にするビモータらしさは健在
目の前のKB4は本当に短い。何だか前後タイヤがとても大きく見えるバランスで不思議な感覚。引き起こし、取り回しをするとすぐに軽さが伝わってくる。跨るとシート下に空気を導くエアダクトがカウル前部にあるため、それなりに大柄だが、走り出すと1000ccを感じさせない質量に驚く。
ニンジャ1000SXのエンジンはとても滑らかにKB4を加速させる。同じエンジンでこうも変わるのか…。軽量な車体はストレスなく進み、乗り心地もとても良い。軽さと短さはもちろんだが、よく動くサスペンションは走り出した瞬間から軽快感を演出。437万8000円の価格には、緊張せざるを得ないが、乗るのが難しくないバイクであることがすぐに分かる。むしろバイクとライダーの一体感が一瞬で得られることに驚かされる。
この感覚はワインディングでも変わらない。1000ccとは思えない質量で、その素直さは400や600cc感覚。直立付近からリーンするときに排気量と190のワイドタイヤを感じさせず、それでいてバンク中は安定感が高くなる異次元ハンドリングだ。さらに面白いのはサーキットでペースを上げても大きなアクションを必要せず、簡単に曲がれること。それもただ軽快なだけでなく、ここでも4気筒特有の安定感に溢れ、142ps全開も許容。
すべてのシーンで扱いやすいのは、軽さと短さだけでなく、よく動くオーリンズ製サスペンションが貢献。ニンジャ1000SXよりも42kgも軽いということと、一人乗り専用設計ということは、それだけサスペンションを柔らかくできるメリットがあり、これがミドルクラス並みに簡単に乗れるキャラクターを生み出している。
またこれは狙っていないと思うが、渋滞時もまったくバイクが熱くないこともよかった。太ももや膝のイン側がフレームではなくカーボン製エアダクトに接しているため、熱さは皆無。水温が上がるとシート下でファンが回り、微振動が伝わってくるが不快感はない。
これまでにない独創的な車体構成がまったく新しいテイストのスポーツバイクを生み出すことを「カワサキ×ビモータ」のタッグが教えてくれる。
KB5/KB6はいったいどんなバイクになるのだろう? どのエンジンでどんなシャシーになるのだろう? 性能だけに特化しないスポーツバイクの新しい未来に期待が募る。
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