近年バイクメーカーが力を入れている「ネオクラシック」というカテゴリー。かつて人気を得たレジェンドバイクを現代の技術でリバイバルするが、はたしてそこに「旧車の味わい」はあるのか? 本記事で取り上げるのは、国産ネオクラシックの中でも図抜けた人気を誇るZ900RS。ファイター系ネイキッドがベースとは想像できない、完璧なまでの旧車風のフォルムを纏い、堂々たる走りの本質に迫る!
●文:ヤングマシン編集部(伊藤康司) ●テスター:丸山浩 ●写真:関野温 真弓悟史 ●外部リンク:カワサキ
カワサキ Z900RS 概要:人気の王道に抗わない直球スタイルで勝負
Z900RSは’17年の東京モーターショーで世界初公開。ベースはストリートファイター系のZ900で、水冷4気筒や鋼管ダイヤモンドフレーム、足まわりなどシャシーのレイアウトを基本的に踏襲。しかし、エンジンを中速寄りにセッティングしたり、フレームもヘッドまわりを中心に最適化し、ネオクラシック(カワサキでは“レトロスポーツ”と呼ぶ)のスタイルと走りのフィーリングを生み出す。
そしてモチーフとなったのは、もはや説明不要、カワサキのレジェンドZ1。先行したホンダCB750FOURを追撃すべく、900ccで市販量産車世界初のDOHC4気筒エンジンを搭載。当時の自主規制により国内向けは750ccのZ2となったが、排気量を下げるにあたってボア×ストロークを共に変更して性能を追求。国内外でZ1/Z2ともに大人気を博し、現在も絶版旧車市場を牽引する存在だ。
Z900RSはティアドロップ型の燃料タンクやテールカウル、砲弾型のメーターケースなど、Z1ならではのディテールを現代的にアレンジしながらも忠実に再現。カラーやグラフィックもZ1/Z2を踏襲する“直球スタイル”がカワサキの強みだろう。
カワサキ Z900RS 試乗インプレッション:すべてにおける柔らかさが王道の走りの本質を支える
もはやスタイルについては何の説明も必要ないほど、カワサキ空冷Zを再現しているが、実際に走らせてその乗り味を聞かれたら、ひとことで言えば「古い感じ」。もちろん誉め言葉だ。
フロントフォークは太い倒立だし、リヤもリンクのモノサスペンションだが、動きは昔のサスペンションのように柔らかい。また、(これは個体差かもしれないが)クラッチミートする時も少しフワッとしたフィーリング…。
スーパースポーツやネイキッドとか問わず、現代のバイクは基本的に“カッチリ”しているが、Z900RSはすべてにおいて柔らかで落ち着きがある。だから少々大袈裟かもしれないが「王道スタイル」で走りを楽しめる。
ゆっくり走ることばかり褒めているようだが、走りの本質がしっかりしているので、攻める走りをすればもちろん速い。そのうえで飛ばさなくても楽しめる、という意味。これはネオクラシックというカテゴリーにおいて、極めて重要な評価ではないだろうか。
登場からすでに5年経ち、大きなリファインも受けていないからか、電子デバイス装備はトラクションコントロールのみ(もちろんABSは備わるが)。今どきのスポーツ車のように色々ついていないけれど不満なく走れるし十分に楽しめる。もしかすると新しい世代のライダーがZ900RSに乗ったら、逆説的に「だから旧車は楽しいのかな?」と感じるのではないだろうか。
たっぷり厚みのあるシートに跨って腕を伸ばせば、そこに自然にハンドルグリップがあり、ミラーもよく見える。当たり前のことを言っているようだが、現代のバイクでは意外と少ない。こんなところも旧車の雰囲気を感じる。
それくらいZ900RSは、カワサキの“空冷Z”の味わいを見事に再現しているが、エンジンは現代の水冷だしフレームも足まわりも空冷Zとはまったく異なる。それを、ここまで旧車風に寄せた技術もさることながら「この味で売り続ける」と決めたカワサキの潔さにも凄さを感じるのだ。
カワサキ Z900RS ネオクラポイント
カワサキ Z900RS 車両紹介
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