ハーレーをも超える粘り気

超端麗! ホンダ渾身の空冷ネオクラシック・ハイネスCB350 DLX/PRO登場〈後編〉

’20年にはCBR1000RR-RやCT125ハンターカブなどの意欲作を送り出し、勢いに乗るホンダ。’21年も数々のブランニューを放つ。中でも話題騒然なのが空冷単気筒ネオクラシック「ハイネスCB350」。ファイター系全盛の時代に反し、本格的な懐古フォルムと最新デバイスを融合したこの快作、エンジンはボア70mm×ストローク90.5mmで、超ロングストロークのテイストが重視されている。


●文:ヤングマシン編集部(沼尾宏明) ●写真:Honda Big Wing India

キレイに伸びて車体も安定指向、長距離もイケる!

(前ページより続く)

空冷シングルに鋼管セミダブルクレードルフレームというCB350の基本構成は、昔ながらのパッケージ。一見、目新しさがないようだが、実は様々な工夫を凝らした最新の設計だ。

エンジンは直立のバーチカルだが、シリンダーを前方にオフセットすることで、高効率化を促進。さらにバランサーを2つ設置し、振動を抑えたスムーズな回転を実現する。加えてアシスト&スリッパークラッチで使い勝手を高め、背面にキャニスターを備えることで環境性能も追求した。

トラクションコントロールのHSTC(ホンダセレクタブルトルクコントロール)もトピックだ。後輪のスリップを緩和する先進デバイスで、スロットルの急操作時や濡れた路面でも安心感がアップ。ビッグバイク以外の採用例は少なく、近年ではカワサキ ニンジャZX-25Rしか見当たらない。手元のスイッチからオン&オフの切り替えまで可能だ。

そして衝撃的なのがボア70mm×ストローク90.5mmの超ロングストローク設定。テイストを重視したモデルで比べると、CB350は飛び抜けてボア×スト比が高い約1.3となる。これに匹敵するのは、味わい深さで有名なロイヤルエンフィールドやハーレーダビットソン スポーツスター883ぐらいのもの。

【テイスティモデル・ストローク比べ】“味”を重視したネオクラシック系をボア×ストローク比で並べると、CB350は突出してロングストロークということが分かる。最大のライバルと目されるロイヤルエンフィールド クラシック350も上回る。

となれば、CB350は歩くような極低速域から粘り、単気筒ながら回してもしっかり伸び上がる――そんなマッタリと急かされない出力特性になるハズだ。スペック上では3000rpmで最大トルクを発生し、最高出力も21psと十分。街乗りはもちろん、ツーリングなどのロングランも快適だろう。

また、ロングストロークエンジンは強い鼓動感が特色だが、本作ではバランサーで適度に抑えられ、トントンと心地良く、丸みのあるバイブレーションが楽しめるに違いない。

さらに妄想すると――大排気量版やチューニングへの夢も膨らむ。ケースにどれほど余裕があるかは不明だが、仮に90.5mmのストロークのままピストン径を同じφ90.5mmにまで拡大、つまりスクエアとした場合の排気量は約582ccとなるのだ。

車体に関してはフレームが見どころ。エンジンの締結位置とヘッドパイプとの距離を長く取り、搭載スペースを確保。冷却性やメンテナンス性が向上するほか、低重心による安定感と適度なフロント荷重にも貢献している。

軸間距離は1441mmと長めで、キャスター&トレールの数値は安定性重視。最低地上高も166mmと十分で、インドの道路状況でも走りやすそう。一方でフロント19インチにより倒し込みはヒラヒラ軽やかだろう。

見てカッコよく、走れば扱いやすく味もあるCB350。アンダー400で希有な滋味深い1台となりそうだ。

【最新の設計思想が反映された空冷シングル】シリンダーをクランク軸の中心から前方にオフセット。シリンダー側壁への摩擦ロスを低減し、燃焼効率を向上させる最新設計だ。同時にコンロッド長を稼げるため、異例のロングストロークに貢献しているハズ。加えて、1次バランサーシャフトとメインバランサーシャフトを設置し、振動を軽減。

【実用域の扱いやすさにフォーカス】最大トルクは3000rpmという低回転域で発生。フラットかつ下から力強い特性となるだろう。一方のパワーカーブはキレイに伸びており、シングルながらスムーズな吹け上がりと高回転パワーが期待できる。

【スリッパー&アシストクラッチ】過度なエンジンブレーキを逃し、クラッチレバーの握りを軽くする機構を標準装備。実用面でもスポーツにも効能アリだ。

【トラクションコントロールも標準装備】後輪のスリップを感知し、空転を緩和するHSTC(ホンダセレクタブルトルクコントロール)を投入。アンダー400のネオクラシック系では世界初だろう。スイッチでオフにもできる。


【解析技術は段違い】最新の解析技術を用い、柔軟かつリラックスしたハンドリングを謳うスチール製セミダブルクレードルフレーム。エンジン懸架位置を下寄りとし、ヘッドパイプとの距離を離すことで、低重心化とフロント荷重の最適化を図った。


【ユーロ5対応でサウンドチューニングも】サウンドにこだわった二重構造のエキゾーストパイプと多段膨張式のメガホンマフラーを採用。動画でも低く歯切れのいい排気音が確認できる。

触媒を採用し、排気ガスはクリーン。環境性能はインドでユーロ5相当のBS6対応となり、欧州や国内にも導入できるハズだ。


【19/18インチでチューブレス&ABS】フロントはφ310mmの大径ディスクにニッシン製片押し2ポットキャリパーの組み合わせ。前後独立式の2チャンネルABSを搭載する。後輪は130mm幅とそこそこワイドで、φ240mmディスク+1ポットを採用。ホイール径はフロント19&リヤ18インチとし、Y字7本スポークのキャストホイールを履く。タイヤはチューブレスかつクラシカルなパターンのMRF製ザッパーが標準。全体的に必要にして十分な足まわりだ。


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