プロジェクトチームインタビュー「ホンダがやらなければ乗れなくなる」
このプロジェクトが動き出したのは’17年。RC30が30周年を迎えた年だ。
「熱心なバイクファンに応えつつ、モノづくりを進化できないか、と様々な議論を深める中、様々なトライをしていました。そんな中、RC30オーナーズミーティングに参加し、仲間同士でパーツをやりとりしながら何とか乗り続けている状況を知りました」とプロジェクトリーダーの並木氏は話す。
まさに「ホンダがやらなければ乗れなくなるギリギリの状態」だった。「社内に熱心な愛好家もいましたし、オーナーと車両のまとまりが強く、何をすべきかわかりやすいのも後押しになりました。また、今はバイクを通じた遊びを楽しむ方が増えています。当初は、部品の再販だけ予定していたのですが、オーナーの身になると『リフレッシュセンターを立ち上げるレベルまでいかないとダメだな』と考えを改めました」
還暦を迎えた並木氏としては、バイクが好きでホンダに入った原点に回帰するとともに「60歳を超えてもできる」事例を示したかったとも話す。
新設されるセンターに関しては、まずサンマル専用で立ち上げ、採算ベースが合う所まで専念する。希望者数は読めない部分もあるが、「自分で整備される方が非常に多いモデルなので、国内での整備希望者は3年程度でカバーできると想定しています。今後、プランを確実に何年続けるかはわかりませんが、できるだけ長く続けたいです」
プランの受け入れ基準として”損傷したフレームはNG”となるが、他にも無理な場合はあるのだろうか?
「スイングアームの損傷もお断りとなります。燃料タンクは穴が開いていたら修理不可ですが、歪みの修正は可能。転倒で傷ついたマフラーの場合も、外筒を交換してTIG溶接でつなげて対応します」
このように”部品交換以上”を想定しているのはうれしいところだ。では、カスタム車両の場合は?
「程度によります。標準出荷仕様に戻せる内容ならOKです。残念ながら、認定型式に沿った状態にならない車両はお引き受けしかねます。ただ一概に言い切れない部分もあるので、オーナー様との話し合いで決めることになります」
再販部品に関しては、要望の多かったパーツを中心に決定。後述の通り非常に力の入ったものだが、今後はどうなっていくのか?
「需要が読み切れないので、1年経過した時点で再生産する予定。将来的に予測できる数は確保したいです」
残念ながら特徴のひとつであるカムギアトレーンは再生産を断念した。
「検討しましたが、絶対買えないコストになりました。ミーティングでエンジンの音を聞いたかぎり、せらしギヤが外されているなど極端な状態でなければ大丈夫と思われます」
破格のバイクだけにパーツひとつの再生産をとっても話は尽きず、「部品の150点全てに物語がある」という。商売とはいえ、そこには採算性を超えた情熱が確実にある。オーナーではなくとも拍手を送りたい。
絶版名車VFR750R(RC30)をホンダが自らレストアする「RC30リフレッシュプラン」について、後編では注目のプランメニュー詳細と、実際に再生産されるパーツ群について解説する。
●文:沼尾宏明 ●写真:長谷川徹 Honda ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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