専用工場稼働&部品も再生産

絶版名車VFR750R(RC30)をホンダが自らレストア〈リフレッシュプラン〉前編

2輪史に燦然と輝く名車「サンマル」こと、ホンダVFR750R(RC30)。登場から33年が経過し、完調の維持が危ぶまれる中、なんとホンダ自らが整備を行うプランを開始した。これで末永く名車を楽しむことができそうだ!

年間10台を想定、1人の整備士が妥協なく仕上げる

ホンダ熊本製作所に専用のリフレッシュセンターを新設し、ホンダ自らがベストコンディションまで整備、さらに新規金型を含む150点の部品を再生産する――RC30オーナーに最高のプレゼントが贈られることになった。

VFR750R(RC30)

近年、ホンダはNSR250RやCB750Fなどの生産終了パーツを再販するなど旧車オーナーへのサービスに力を入れてきたが、今回始まったプランはまさに別格である。

その理由はやはりサンマルが”特殊”な車両である面が大きい。2輪世界初採用のチタンコンロッドをはじめ、レーサーに近い部品や設計を持つだけに、整備には高度なスキルと経験が必要。ホンダは、スーパーカーのNSXに’93年からリフレッシュプランを実施しているが、サンマルも同等の存在と言えるだろう。

メニューや再生産部品の技術的検討には、当時の開発者やRC30オーナーの社員が参加。整備は熟練のメカニックが担当し、想定台数は年間10台。1台を1年程度で仕上げる。

驚くべきは整備士が”1人”という点だ。これは、特殊な車両であるRC30を妥協なくベストな状態に仕上げるため、一定の”尺度”を定める必要があったため。採算性を考慮しつつ、「自ら手を下し、場合によっては巻き戻してもやり直す。クオリティを保証するため」の1人という。さらに検査の一環として、HSR九州で”Aランクのテストライダー”が実走を行うなど、実に贅沢だ。

料金設定は、基本メニューのみで60万3900円〜。ホンダ自らにリフレッシュしてもらうと考えれば決して高くない価格とも思えてくる。

一方、生産終了していた部品が再販されることで、自力や付き合いのあるショップで修理する道も選べる。純正部品の販売点数は52%(約650点)に下がっていたが、再販後は65%(約800点)に向上。再販が困難と思われたカウルなどの外装やエンジン部品までリリースされ、一般販売されるのは大きなメリットだ。

加えて「モーターサイクルリフレッシュセンター」という名称の通り、今後、他の車両を扱うことも想定している。今回のプランが軌道に乗れば、3年後程度を目安に’80〜’00年初頭の車両に拡大したいとのこと。ホンダファンは動向を注目したい。

【すべてが本気、伝説の公道レプリカ】ワークスRVF750の公道レーサーとして’87年デビュー。その本気度は凄まじく、148万円が安く思えるほど。限定1000台が即完売し「現在も約7割が登録されている」という。

リフレッシュ専門工場を新設。全国7店のドリーム店で受付

7月28日から受付を開始し、8月上旬から熊本のセンターが稼動。希望者はまず全国7店舗のドリーム店に電話し、受け入れ可能な車両か確認。店舗に車両を持ち込み、オーナーと店舗スタッフ、センターから出張する整備士の3人で整備内容を決定する。その後、センターに車両が搬入され整備開始。オーナーがセンターを訪れた際、整備風景を見学できる粋な計らいも検討中だ。

モーターサイクルリフレッシュセンター(熊本)

【NSXで得たノウハウを活用】ホンダを代表する4輪・NSXでは’93年からプランを継続中。所長の宮地氏が熊本センター長に就任し、経験を発揮する。

●車両の受入条件

  • 国内向け販売車両であること
  • 保安基準に適合している車両であること
  • 重大事故やレースでの酷使などで、フレームや重要保安部品等に復元不可能な損傷がないこと
  • 書類付車両であること
    (※不動車の場合は、不動期間を参考に整備受入れ可能かどうかを判断)

リフレッシュ受付店

〈次のページは…〉プロジェクトチームインタビュー「ホンダがやらなければ乗れなくなる」