ヤマハのフロント2輪バイク、LMWシリーズの最新作であるトリシティ300が発表された。今までのトリシティ125/155やナイケン(NIKEN)との最大の違いは、停車時の自立をサポートする「スタンディングアシスト」を装備していることだ。これで絶対に立ちゴケしないバイクの実現となるか? 発売日は2020年9月30日、価格は95万7000円だ。
スタンディングアシストや新フレーム採用、300ccはこの車格に見合う動力性能
ヤマハは、LMWシリーズのフロント2輪バイクの最新作、トリシティ300を発表した。2019年秋のミラノショーことEICMAで発表され、日本への導入が期待されていたが、既報どおりの先進的な機能を備えての登場となる。なんといっても目玉となるのは、停車時に車体を直立に保ってくれる“スタンディングアシスト”というシステムだ。
これは停車時や押し歩きにも便利な機能で、左手元のスイッチを操作することにより、LMW機構上部のアームに設置したディスクを電動キャリパーでロックし、車両の自立をアシストするというもの。アシスト中もサスペンションの機能は維持されるので押し歩き時に段差を乗り越える際なども車体が取りまわしやすいのが特徴だ。
また、大型スポーツバイクのLMWモデル「NIKEN」で実績のある“LMWアッカーマン・ジオメトリ”を新たに専用設計。前後3輪の全てが同心円を描くことでスムーズな旋回を可能としている。
車体はXMAXと共有するパーツはありつつも、フレームを新設計。細径パイプと板材を組み合わせ、LMW機構で増した車重やフロント2輪による強い制動力に合わせて、強度と剛性バランスを最適化した。3輪のLMWに対応したABS(アンチロックブレーキシステム)だけでなく、UBS(ユニファイドブレーキシステム)と呼ばれる機構も採用。ABSは3つのブレーキ系統をそれぞれ最適に制御し車輪のロックを低減、UBSは、リヤブレーキ操作でフロントブレーキにもバランスよく効力を発生させ、制動時の車体挙動を穏やかにする効果がある。
気になるのは、なぜ日本国内でも海外同様に300とし、軽二輪枠の250としなかったのか、である。これについてヤマハに質問してみたところ、まずLMW機構を採用することで車重が増し、それに見合った動力性能を必要としたことでの最適解が300だったとのこと。さらに価格も100万円近くになることから、トリシティ300を購入するユーザー層が求める満足度を実現するためにも必要だったという。
トリシティ300の価格は95万7000円、発売日は2020年9月30日となっている。
一定の条件を満たしたうえでスイッチを操作することにより、スタンディングアシストが作動して車体が自立する。作動中はインジケーターランプによって認識することができ、発進時には自動的に解除される。 [写真タップで拡大]
ちなみに、このスタンディングアシスト機構は他機種への展開も可能だという。具体的なモデル名は明かされなかったが、現行機種がモデルチェンジを受ける際にはぜひ搭載してほしいシステムだ。少なくとも立ちゴケ防止に大きな効果があるのは間違いない。さらには、他のさまざまなサポート技術と組み合わさることで、将来的にヤマハが目指す『転ばないバイク』へと繋がっていく可能性にも期待したい。
YAMAHA TRICITY 300[2020 model]
【YAMAHA TRICITY 300[2020 model]】主要諸元■全長2250 全幅815 全高1470 軸距1595 シート高795(各mm) 車重237kg■水冷4ストローク単気筒SOHC4バルブ 292cc 29ps/7250rpm 3.0kg-m/5750rpm Vベルト式無段変速 燃料タンク容量13L■タイヤサイズF=120/70-14 R=140/70-14 ●価格:95万7000円 ●色:灰、マット灰、マット緑灰 ●発売日:2020年9月30日
YAMAHA TRICITY 300[2020 model]ディテール
フロント2輪が平行に傾いていきながら、サスペンションの伸縮はこの動きから独立している。LMW(リーニング・マルチ・ホイール)の市販車としては第4弾となり、NIKENで採用していたアッカーマンジオメトリもトリシティ300専用に新設計。 [写真タップで拡大]
停車時に左手元のスイッチを操作することで、電動キャリパーによる自立ロック機構“スタンディングアシスト”が働く。ただし車両単独で完全に自立するシステムではなく、作動させるには(1)車速10km/h以下(2)スロットル全閉(3)エンジン回転数2000rpm以下(4)スタンディングアシストスイッチがON、という全ての条件を満たす必要がある。押し引き際はエンジンを停止するのが鉄則だろう。 [写真タップで拡大]
LMWのメリットとは?
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