ヘッドまわりだけでなくピストンや腰下も最新設計
シリンダーは、メッキ方式のオールアルミで冷却性能は抜群。また、横幅寸法の減少により軽量化にも効果がある。ピストンは鋳造製だが、超高回転用の仕様として大切なピストン総重量やピストンピン強度は、きちんと設計されているようである。
そして、何より超高回転に肝心な連桿比(コンロッド中心間とストローク半径の比)も、十分な検討を行ったと発表資料にあった。
クランクケースは、3軸配置を1000ccのスーパースポーツ達のような立てた三角形配置ではなく、昔ながらの同一平面配置にしたというが、このエンジンの小ささなら、エンジン搭載位置の最適化にも、さほど問題にならないだろう。むしろ、ギヤ比が割とワイドなので、後々クロスミッションを作る時は、かえって都合が良いかもしれない。
スロットル径φ30mmは、ZXRのφ30mmキャブから大きくなっていないように思うかもしれないが、インジェクション(FI)化で随分と進歩している。キャブレターだと、インテークポートの入口辺りではまだガソリンが液状で壁を這っているような状態だが、FIはインジェクターから細かく噴霧するので燃焼自体が良くなり、燃焼時間の短い超高回転エンジンでは、大きな助けとなる。また、フロート室のないFI用スロットルボディでは、インテークバルブから極力近くにバタフライ弁を設置でき、超高回転域の要求吸気長に対応できる。
おまけにZX-25Rでは、スーパーチャージャー過給仕様のZ H2と基本部が同じECUを使用するとのこと。これは、過給によりシビアになる領域をも細やかに制御できるコンピュータを使って、同じくシビアな領域になる超高回転域の制御を行うということ。ここでも手抜きなしである。
クランクについては、エンジンレスポンスに関連する慣性モーメントの減少や、フリクション減少に関連するジャーナル幅の減少について言及がある。このあたりも進歩しているに違いない。
吸気系には、ラムエアも採用され、1psの取り分がある(通常、ラムエアの取り分は最大性能の3%程度)。
エキゾーストマニホールドは、各パイプを繋ぐジョイントパイプで低回転域のトルクを強化し、集合部の形状で高回転域を強化しているようである。
マフラーは、高回転時の音にこだわった設計とのことで、確かに良い音になっていると思う。僕もこのエンジンの音が聞きたくて、カワサキ・インドネシアYoutubeの動画再生回数を増やしてしまったひとりだ(笑)。
マフラーの容量と出口のスペースの確保のため、スイングアームの片側が湾曲しているのも、昔のレーサーレプリカを知る世代にはナミダものである。
アシスト&スリッパークラッチの採用も、超高回転エンジンの運転のしやすさに貢献しているはずだ。
電子制御も、超高回転エンジンを堪能できるよう充実。パワーモードが2種類、トラクションコントロールはモードが3種類あり、走行環境や運転技術(または気分)に合わせて選択できる。クイックシフターも標準採用(SEのみ)され、シフト時にはエンジン制御(燃料と点火)が介入して、エンジンにダメージを与えることなく、素早く簡単なシフトをアシストする。これもまた超高回転域で運転するには、強力な武器となるだろう。
といった具合に、ZX-25Rは超高回転域が本当に使える回転領域となるよう工夫しており、多くの人が超高回転域を体験できるという意味で、ZXRよりも大きな進歩を遂げていると思う。
最後にチューニングの可能性だが、燃料をハイオク限定にすれば、ECUのマップ変更だけでフルパワーに近づけるのも可能ではないかと思う(レギュラー前提では、点火時期等、攻められないマップになってしまう)。また、サーキット仕様を前提とするならば、圧縮比をもう少し上げ(12.5ぐらいかな)、触媒のないフルエキタイプの排気系を付けてセッティングを出せば、まだまだ性能向上できそうだ。
ついでに言えば、今回の25Rについてはプロモーションも上手で、早くもカーボンパーツやヨシムラのマフラーまでティーザー映像に出てきて、僕もまんまとはまって何度も見てしまった。車重が183kgと少し重いが、これはスチール製のフレームやスイングアームのせいもあると思うので、アフターマーケットのパーツで、軽量化したいところである。パーツメーカーの皆さんも楽しみなのでは?
どうやら僕も含めて、4発クォーターの森(!)に迷い込んでしまう人が続出しそうだ(笑)。
●文:稲垣一徳(イナガキデザイン) ●写真提供:Webike THAILAND ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
〈特集〉ニンジャZX-25R完全解説|車両別アーカイブ:カワサキ ニンジャZX-25R
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