すでに2019年7月からホンダの新感覚スクーター、ADV150を販売している生産国のインドネシア。現地と長年取り引きしているショップから輸入モデルをお借りし、街乗りから高速道路、ワインディング、そしてフラットダートまで、あらゆるステージで現地仕様のニューモデルをじっくりチェックした!
PCX譲りの上質エンジンは、高速でも余裕の動力性能
ベースとなったPCXとはライディングポジションからして異なるADV150。バーハンドルは絞り角の少ないオフロード車テイストで、フロアトンネルが足でホールドしやすいことと合わせ、積極的な操縦性を意識している。いわゆる寝そべり系のPCXとは好対照と言えよう。
まずはエンジンから。149ccの水冷SOHC2バルブ単気筒は基本的に共通で、インドネシア仕様のADV150が14.5psなのに対し、国内仕様のPCXはわずかに上回る15psを公称する。体に伝わる振動の少なさや優しいスロットルレスポンスなど、上品な印象はPCX譲りで、アイドリングストップの作動についても特に違いを感じない。この迫力あるクロスオーバーフォルムから想像できないほどエンジンは上質であり、まさにスムーズでスマートなSUVといったところだ。
動力性能については、特に高速道路で力強さを感じた。90km/hで巡航している大型トラックを、多少の上り坂でもストレスなくパスできてしまうのだ。ADVに125cc版が登場するかは不明だが、日本国内で150ccを選ぶ最大の理由は自動車専用道路が走れることであり、そこでの余裕は誰もが気になるところ。PCX150がそうであるように、ADVもパワー的に高速巡航は得意といっていいだろう。
PCXとは異なる操安性で、未舗装路もかなり楽しい!
ハンドリングは、PCXに対してサスストロークがフロント100→130mm、リヤが90→120mmとそれぞれ30mm長いことに加え、タイヤが前後とも1サイズずつ太いことが影響しているようで、発生するピッチング量や倒し込みの適度な手応えなどから、だいぶモーターサイクル的な印象だ。こうした操安性には高めの着座位置も貢献しているはずで、入力しやすい広めのバーハンドルと合わせて、ワインディングを走らせるのが非常に楽しい。旋回力はそれなりだが、車高が高い分だけセンタースタンドが接地しにくい、つまりバンク角が深いのは好材料だろう。
さて、気になるダートでの走りについて。フェデラル製のタイヤはセミブロックパターンだが、溝が浅いので泥濘をがっちりつかむほどではない。とはいえ幅が太いので、砂地や砂利道では面でグリップしてくれ、優しいエンジンレスポンスもあって無駄に空転せずにヌルヌルと進んでくれる。長いサスストロークは、大きな段差を超えた際に底付きしにくいなど、その効果を実感できる。特に荒れた舗装路においての走破性と安心感は非常に高い。
2段階に高さを調整できるスクリーンは、高くしても視野を極端に狭くせず、それでいて防風効果は非常に高いという優れものだ。試乗車のブレーキは前後連動タイプで、街乗りやワインディングはもちろん、流す程度ならダート走行でも特に不満はなかった。
見た目はもちろん、走りもPCXとは明確に差別化されており、実に楽しいスクーターに仕上がっている。近日発売と言われる国内仕様の登場が待ち遠しい!
HONDA ADV150[インドネシア仕様]
●文:大屋雄一 ●写真:真弓悟史
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