暗闇に遠くから幾多の光芒が射す。あるものは一際強い光を放って過ぎ去り、あるものは留まり今も輝き続ける。――過去半世紀に及ぶ二輪史において、数々の革新的な技術と機構が生み出された。定着せず消えていった技術もあれば、以降の時代を一変させ、現代にまで残る技術もある。しかし、その全てが、エンジニアのひらめきと情熱と努力の結晶であることに疑いはない。二輪車の「初」を切り拓き、偉大なる足跡を残した車両を年代順に紐解いていく。
※本稿で取り挙げる「初」は、“公道走行可能な量産二輪市販車”としての「初」を意味します。また、「初」の定義には諸説ある場合があります。
- 1 世界初2ストV型3気筒「WGP譲りの挑戦的ユニット」HONDA MVX250F[1983]
- 2 「後継機は2気筒」HONDA NS250R[1984]
- 3 世界初タンデムツイン「現在まで唯一無二のレイアウト」KAWASAKI KR250[1984]
- 4 スクーター初水冷2スト50cc「ギミック満載のスーパー原付」HONDA BEAT[1983]
- 5 世界初WGPレプリカ500「ヤマハの総力を結集した孤高のV4」YAMAHA RZV500R[1984]
- 6 「再現度抜群リアルレプリカ」SUZUKI RG500Γ[1985]
- 7 「天才の気分に浸れるV3マシン」HONDA NS400R[1985]
- 8 関連する記事/リンク
- 9 写真をまとめて見る
世界初2ストV型3気筒「WGP譲りの挑戦的ユニット」HONDA MVX250F[1983]
RZへの刺客として、4ストのVT250Fに続いてホンダが送り込んだ250初の本格2ストスポーツ。世界初の2ストV型3気筒は、F・スペンサーが駆り’83WGP王者に輝いたNS500のエンジンをイメージしており、ハイパワーかつ2気筒並みにスリムという利点を持つ。しかし’83年2月の発売直後、スズキから初代Γが登場。オイル飛散が多いなどの問題もあり、人気を得られず、わずか1年で後進のNS250Rに道を譲った。
「後継機は2気筒」HONDA NS250R[1984]
MVXの反省からレプリカスタイルで登場。市販レーサーRS250Rと共同開発によって生まれ、新開発の2ストVツインをホンダ初のアルミフレームに搭載した。サスやブレーキなどの基本設計もRS共通だ。
世界初タンデムツイン「現在まで唯一無二のレイアウト」KAWASAKI KR250[1984]
Γによって活性化したレプリカ戦線の早期に登場した異色作。シリンダーを縦置きに配置したタンデムツインは、’80年前後のWGP250や同350を連覇したKRを踏襲。後にも先にも唯一のエンジン型式となる。車体もアルミフレームや水平配置のリンク式モノサスを奢ったが、独特な造形などが原因でヒットには至らなかった。
スクーター初水冷2スト50cc「ギミック満載のスーパー原付」HONDA BEAT[1983]
’80年代に入ると、またぎやすいステップスルー式のスクーターが大流行。このジャンルに「速さ」を求める層に向けて登場したのがビートだ。心臓にはスクーター初の水冷2スト単気筒50㏄を積み、当時の原付自主規制最高値7.2psをマーク。MFバッテリーも世界初の装備だ。さらにV-TACSやスーパーカー風のデザインも衝撃的だった。
世界初WGPレプリカ500「ヤマハの総力を結集した孤高のV4」YAMAHA RZV500R[1984]
RZのヒットを受け、「史上初のWGP500レプリカ」にゴーサインが下った。当時、WGPでケニー・ロバーツがYZR500を駆り、’79年から3連覇。’82年はV4にスイッチした。これをイメージして開発された公道モデルがRZV500Rだ。完全新作の水冷2ストV4は、GPマシンと同様、2軸クランクと4本出しマフラーを踏襲。前側がピストンリード、後側がクランクケースリードバルブという異色の吸気方式も市販車初だ。排気デバイスのYPVS付きで、フルパワー88psと強力。同社初のアルミフレームに水平配置のリヤサスなど車体も豪華だ。走りは、重厚な回転上昇とターボ的特性が特徴だった。
「再現度抜群リアルレプリカ」SUZUKI RG500Γ[1985]
’76年から7年連続でメーカータイトルを獲得したスズキ。その中心となったRG500Γのレプリカが本作だ。スクエア4の心臓をはじめ、排気量、ロータリーディスクバルブ、ボア×ストロークもレーサーと同一。カセット式ミッションも採用した。フルパワー95psと超軽量な車体により、2スト最強と名高い。
「天才の気分に浸れるV3マシン」HONDA NS400R[1985]
MVX250Fと同様、F・スペンサーの走りで’83WGPを制したNS500をイメージ。前2&後1気筒のV型3気筒は、現在までクラス唯一の存在で、ライバルよりコンパクトな車格やクラスナンバー1のトルクを実現した。角断面アルミフレームと空気圧でプリロード調整可能なエアアシストサスも採用する。
関連する記事/リンク
暗闇に遠くから幾多の光芒が射す。あるものは一際強い光を放って過ぎ去り、あるものは留まり今も輝き続ける。――過去半世紀に及ぶ二輪史において、数々の革新的な技術と機構が生み出された。定着せず消えていった技[…]
暗闇に遠くから幾多の光芒が射す。あるものは一際強い光を放って過ぎ去り、あるものは留まり今も輝き続ける。――過去半世紀に及ぶ二輪史において、数々の革新的な技術と機構が生み出された。定着せず消えていった技[…]
暗闇に遠くから幾多の光芒が射す。あるものは一際強い光を放って過ぎ去り、あるものは留まり今も輝き続ける。――過去半世紀に及ぶ二輪史において、数々の革新的な技術と機構が生み出された。定着せず消えていった技[…]
カワサキZ系の純正鋳鉄スリーブがシリンダーバレルの中で踊って抜けるのは、Zユーザーにとっては半ば常識。バイクいじり専門誌『モトメカニック』がオススメしたいのは、鋳鉄より硬度が高く耐摩耗性も優れたアルミ[…]
NEW MODEL IMPRESSION[1985年9月号]トレールコース&一般道でテスト これがそう、これが本物のトレール・バイクなのだ。ヤマハから発売されたセロー225は、トレール・バイクの原点に[…]