ホンダがミラノショーで発表した新型CBR1000RR-R/SPは久しぶりの完全新設計モデル。狙いをサーキットに定めて徹底的に戦闘力を高めてきているだけに、多くの内容が盛り込まれている。今回はシャーシを解説しよう。
ロングスイングアームとクロスメンバーレスで安定性を確保
CBR1000RR-Rのエンジン小型化に合わせ、フレームとスイングアームは新作となり、ステアリングの精度や加減速時の安定性、限界域での接地感の向上を図るため、従来型からジオメトリーも刷新されている。全く新しいアルミ製ツインチューブフレームはエンジンを強度部材として活用するダイヤモンド型式で、クロスメンバーを省略。さらにエンジン後部をリヤショック上部のマウントにも活用している。プレス材で製作されたロングスイングアームはRC213V-Sの設計を模範としたものだ。
ダイヤモンドフレームは2mm厚のアルミで構成されており、剛性バランスは精密に調整されている。エンジンは6カ所で締結され、ハンドリングを改良。フレームは縦剛性とねじれ剛性がそれぞれ18%と9%向上しつつ横剛性は11%減となっており、これが最高レベルの操作フィーリングを生み出している。ホイールベースは1455mmでキャスター&トレールは24度/102mmとし、従来の1405mm、23度/96mmより安定性が向上。車重は201kgと従来より5~6kg増しているが、バランスと重心を変えることで、ピッチングを抑制しつつ俊敏性を高めている。また、RC213V-Sと同じ素材のアルミプレス板18枚で構成されたスイングアームは従来より32.7mm長い622.7mmに延長しつつ、重量は従来型と同一に抑えられた。グリップ力を確保するため縦剛性はそのままに横剛性を15%抜いて旋回性向上につなげている。
フレーム剛性の最適化と軽量化のため、リヤショック上部のマウントは、ブラケットを介してエンジンクランクケース背面に装着されている。これによりツインチューブフレーム後方のクロスメンバーが省略できるだけでなく、フロントまわりに対するリヤからの応力の影響を分離することができるので、高速時の安定性とトラクションフィーリングが改善できるのだ。
シートレールは、肉薄のアルミ製丸パイプで構成された。横からではなく上方からフレームにラジアルマウントし、タンク後方部の幅を抑えてコンパクトなライディングポジションを実現。また、シートレール後部を細くすることで空力にも優れたパッケージに仕上げられている。6インチ幅のリヤホイールは、ハブ部分を改良して剛性を維持しつつ軽量化。タイヤも190/50ZR17から200/55ZR17にサイズアップした。
ABSはストリートとサーキットの2モードに
SPには、第2世代のオーリンズ電子制御サス(S-EC)が搭載されている。径43mmNPXフォークはキャビテーション(泡立ち)を抑えるために加圧ダンピングシステムを採用し、より安定した減衰力制御やサーキット走行でのギャップ吸収力、前輪の接地感向上に貢献する。また、フォーク長を長めに確保していることからセッティングの自由度も確保。リヤショックはTTX36 Smart-ECを採用している。SPはサスペンション本体の進化に合わせてインターフェースもより細かくセッティング変更できるようになった。標準設定とは別に3つの個別モードを設定できるようにしており、ライダーが異なるサーキット用の設定を用意したり、走行中に瞬時に切り替えられるようにしている。
新しいブレンボのStylemaラジアルマウントキャリパーには、マスターシリンダーもブレンボを採用。フロントディスクは従来より10mm拡大した径330mmとし、5mm厚を確保し効率的に放熱する。リヤブレーキキャリパーはSTDともRC213V-Sで使用されているのと同じブレンボ製となる。バンク角やリヤリフトに対応するABSは従来モデルの特徴だったが、CBR1000RR-Rは2つのモードが選択できるようになった。スポーツモードは公道向けで、強いブレーキングでもピッチングを抑えてくれる。トラックモードは、高速のサーキットスピードに対応したモードとなる。
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