「消化試合」の存在しないマルケスの日本GPも注目!

世界GP王者・原田哲也のバイクトーク Vol.19 「いちばん楽しめる排気量とは?」

  • 2019/10/15

1993年、デビューイヤーにいきなり世界GP250チャンピオンを獲得した原田哲也さん。虎視眈々とチャンスを狙い、ここぞという時に勝負を仕掛ける鋭い走りから「クールデビル」と呼ばれ、たびたび上位争いを繰り広げた。’02年に現役を引退し、今はツーリングやオフロードラン、ホビーレースなど幅広くバイクを楽しんでいる。そんな原田さんのWEBヤングマシン連載は、バイクやレースに関するあれこれを大いに語るWEBコラム。第19回は、トライアンフの国際試乗会に参加してきた件と、マルケスのチャンピオン獲得について。

TEXT:Go TAKAHASHI

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上質なエンジンで走りは変わる! 初めてのカルタヘナも安心

10月11日、スペインのカルタヘナで行われたトライアンフ・ストリートトリプルRSの発表試乗会に参加してきました。午前はツーリング、午後はサーキット走行だったんですが、結論を先に言ってしまうと、新型ストリートトリプルRSは素晴らしい出来栄えでした。

僕はもともとトライアンフの3気筒エンジンが好きです。2気筒のようにトルクは厚いのに、低回転域のドンツキは抑えられていて、なおかつ高回転域は4気筒のようによく回る。全体的にとても気持ちのいいエンジンだと思います。

いつも言っていることですが、公道を走るなら700~800ccぐらいのサイズ感が一番しっくりきます。ストレスのないパワーと扱いやすい重さのバランスがちょうどいい。ストリートトリプルRSは765ccなので、ドンピシャです。

新型ストリートトリプルRSのエンジンは現行よりトルクアップしていますが、相変わらずのスムーズさでフィーリングは良好。サウンドもいいので、「上質なエンジンのバイクで走ってるな~」と気分が上がります。

というわけで、結構いいペースの峠道も気持ちよく楽しめました。初めての道ですから、どうしてもコーナーを読み違えることがあります。深く回り込んでいる下りコーナーにちょっとオーバースピード気味で進入してしまい、さらに路面にうねりがあったりして「ヤバイ!」というような時でも、車重が軽いから安心してしっかり減速。なおかつサスペンションの動きもニュートラルなので、難なくクリアできます。

初めての道でも、路面にうねりがあっても、難なくクリアしていける。

エンジンモードはレイン、ロード、スポーツ、トラックの4パターンが用意されていましたが、僕はレインで十分満足。パワーは相当に抑えられますが、スロットルワークにまったく気を使わずに済むので、余裕を持って楽しめます。ちょっとペースを上げるならロードでOK。公道ではレインをメインにして、たまにロードという感じで良さそうでした。

サーキットではトラックモードで走りました。これまた楽しい! カルタヘナのサーキットを走るのは初めてでしたが、路面にはギャップがあってブラインドコーナーだらけの難コースです。しかも先導してくれたのはBSB(イギリススーパーバイク選手権)に出ているという現役バリバリのライダーで、めちゃくちゃ速い! 1周につき100mぐらい離されてしまうほどでした(笑)。

というわけでトラックモード一択でしたが、エンジンのレスポンスは鋭くなるものの、アクセルの開け始めが穏やかにしつけられているから、すごく扱いやすいんです。その恩恵でサスペンションが初期からしなやかに作動して、アクセルを開けてもリヤサスがドンと入り切ってしまうようなことがありません。ジワーッとストローク感が伝わってくるので、初めての難コース、しかもハイペースでも安心して走れました。

日本では11月中旬に発売予定とのことですが、この魅力を知らない人が多い気がします。もったいないので、ぜひ多くの方に乗ってもらいたい1台ですね。スタイルは独特ですが、新型は今まで以上にカッコよくなったと思います。特にアクの強いヘッドライトまわりも重量バランスを考えてデザインされているそう。とにかく走って楽しいバイクでした。

原田さんの走り映像はコチラ!

ワイディングの映像等、記事の最後にもう2本あります

本気走りのマルケスにクアルタラロが挑む! ぜひ生で観戦を

さて、MotoGPは第15戦タイGPでマルク・マルケス(レプソルホンダチーム)がチャンピオンを決めました。FP1でカーボンスイングアームが折れるほどの大クラッシュを喫したマルケスでしたが、「転んで勝つ」のジンクスを守りましたね。

ファビオ・クアルタラロ(ペトロナスヤマハSRT)も最後の最後まで頑張りましたが、ストレートであっさり抜かれてしまうのはちょっとかわいそうでしたね。速さもあるライダーなので、来シーズンもマルケスとクアルタラロの接戦が見られそうですが、何戦かいい勝負はできてもタイトル争いとなると厳しいかな……。

さすがにあれだけのエンジンパワー差があると、シーズンを通しての勝負はつらいものがあります。来シーズン、ヤマハがどんなエンジンを仕上げてくるか次第。来年の話をするのはちょっと気が早いですが、今から楽しみにしておきましょう。

それにしても、もっとも速いペースで走ったふたりが、最終ラップの最終コーナーで勝負を決めるとは、タイGPは本当にすごいレースでした。アグレッシブに見えるマルケス、コーナリングスピードが高いクアルタラロですが、両者ともそれぞれにセットアップがうまく行き、速くてなおかつタイヤに負担をかけない走りができていたのでしょう。

セットアップが決まっていないと、曲がらないからハンドルをこじってフロントタイヤが消耗し、寝かせながらアクセルを開けるのでリヤタイヤを消耗し……と、いいことがありません。ライディングスタイルが違っても、結局はタイヤへの負担をかけないライダーが勝つのがレースというものです。

マルケスが強かったのは、彼のライディングがキレキレだったことや、RC213Vのパフォーマンスの高さはもちろん、セットアップがうまく行っていたということにも注目したいと思います。

これで年間チャンピオンは決まってしまいましたが、今シーズン完走したレースは2位以下がないマルケスですから、今週末に第16戦日本GPが行われるツインリンクもてぎでも決して手は抜かないと思います。というより、マルケスは常に全力、「消化試合」だとか「ケガのリスク」なんてことを考えるタイプではありません(笑)。ホンダのホームコースだし、勝ち狙いの本気走りが見られるでしょう。

Moto2、Moto3もタイトル争いは決まっていませんし、各クラスとも見応えのあるレースが展開するはずです。僕も行きますので、ぜひ皆さんもツインリンクもてぎに足を運んで、生のレースの迫力を体感してくださいね!

タイGPではクアルタラロの背後にピタリとつけ、最後に仕留めたマルケス。日本GPではどんな戦いが見られるのか?

原田さんの走り映像でサウンドもチェック!

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原田哲也

原田哲也

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1993年ロードレース世界選手権(WGP)250の世界チャンピオン。1992年に全日本で同クラスのチャンピオンを獲得し、翌年に初挑戦のWGP250で戴冠した。現役当時のニックネームは「クールデビル」。'02年に現役を引退し、現在はツーリングやオフロードラン、ホビーレースなど幅広くバイクを楽しんでいる。