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特集:加藤大治郎と原田哲也の物語[2001年、ふたりだけの戦いがあった]

加藤大治郎と原田哲也の物語

天才と呼ばれた、ふたりのレーシングライダーがいた。原田哲也と、加藤大治郎。世界グランプリ250ccクラスを舞台に、常人には知り得ない領域で戦ったふたり。引き合うように、そして、寄せ合うように。近付いたふたつの才能が、彼らだけの戦いを創り上げていく。才能が交差した2001シーズンの激闘を、原田哲也が振り返る。

〈前編〉鮮やかに登場した「新人」を、世界王者が迎え撃つ

光と、光。猛烈なエネルギーを発散しながら、もちろん、お互いに気付いている。だいぶ昔から、はるか彼方から、お互いのことがしっかりと見えている。進路を俯瞰する。完全に重なり合う。いや、「重なり合う」などという生易しいものではないだろう。衝突し、激突し、凄まじい何かが起こりそうな予感をそれぞれに抱きながら、徐々に、しかし確実に、交差しようとしている。

2001年の世界グランプリは、そのようなシーズンとして幕を開けようとしていた。250ccクラスは、’93年に世界王者となった原田哲也と、’97年に全日本王者となった加藤大治郎が、タイトル争いの最有力候補とされていた。加藤は、前年の’00年に世界グランプリにデビューした。5勝を挙げて、ランキング3位。新人賞を獲得するという、鮮やかな登場だった。

〈中編〉『絶対に、諦めたくない』

勝利を奪い合いながら、原田は「勝負になっていない」と冷静だった。しかし諦めるつもりもまったくなく、常に次の手を考えていた。

6歳年下の新人、加藤大治郎との直接対決を前に、世界チャンピオン経験者の原田は「勝つのは難しいだろうな」と、いたって冷静に判断していた。そしてシーズンは、原田の予想通り、完全に加藤のものとして始まった。鈴鹿での開幕戦、第2戦南アフリカGPは、加藤が予選ポールポジション、決勝優勝。原田はそれぞれ決勝2位、3位だったが、彼の言葉を借りるなら「まったく勝負になっていなかった」。

〈後編〉『悔しさよりも、エールを』

自分とはあまりに違う次元にいる加藤。そのことを見せつけられた原田は、敬意と期待を抱いた。日本人初の最高峰クラス王者という夢を――。

第12戦バレンシアGPで、加藤大治郎がシーズン8勝目を挙げた。表彰台のひとつ下の段に立った原田哲也は、「ああ、今年のチャンピオンは大ちゃんで決まりだな」と思っていた。そこまでに、原田は2勝していた。さらに、2位、3位と表彰台を重ねながら何とか加藤に食らいついていたが、バレンシアGP終了時点でポイント差は49点にまで開いていた。

「もはやチャンピオン獲得は難しい。でも、まだ仕事は残っている」と原田は考えた。「こうなったら、いかに大ちゃんのチャンピオン獲得を遅らせるか、だな」

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高橋 剛

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カート上がりのバイク野郎。心震わす原稿が得意で、あのスポーツ名門誌・Sports Graphic Numberにも寄稿したりしなかったり。セッティングさえ出れば怖いものなしの隠れ文豪。

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