昨秋のミラノショーで発表されたロイヤルエンフィールドの新型2気筒モデル・コンチネンタルGT650。同じアイシャーモータースの傘下にあるイギリスの伝説的ビルダー、ハリスパフォーマンスがダブルクレードルフレームの設計に関与する、カフェレーサー風のモデルだ。生産拠点をインドに移行してから初となるパラツインエンジンも要チェック!
(◯)旧来の乗り方が通用。実用的かつ味わいも
生産拠点をインドに移行してから初となるパラツインは、空油冷方式や燃料噴射、SOHC4バルブなどを採用。排気量は648ccで、圧縮比は直接のライバルとなるW800ストリート/カフェの8・4:1よりも高い9・5:1を公称。最高出力は約48psで、W800の前身であるW650とほぼ同等の数値だ。
昨今のパラツインの主流である270度位相クランクを採用するこの新型エンジン、1次偶力バランサーを採用していることもあり驚くほど微振動が少なく、スロットルを開ければスムーズに回転が上昇する。わずか2500rpmで最大トルクの80%を発揮するとあって、少々シフトチェンジをサボってもスルスルと加速してくれ、レスポンスもこのバイクの雰囲気に合った穏やかなものである。トップ6速、100km/h巡航時のエンジン回転数は約4000rpmで、心地良い脈動感が伝わってくる。以前の記事で(関連記事参照)同社のヒマラヤンを試乗しており、411ccの単気筒ながら振動が過大でないことに感心したが、コンチネンタルGT650のそれは圧倒的に少なく、ロイヤルエンフィールド社の実力を思い知らされた。
続いてハンドリング。前後18インチというホイール径は現行W800と同じで、タイヤ幅も共通だ。ホイールベースは1398mmとやや短めながら、高速巡航時の直進安定性は良好。前後サスの動きは決して上質ではないものの、しなやかなフレームと相まって路面のギャップをうまくいなしてくれる。峠道での走りもなかなかで、セパハンに頼らず腰を引いた後ろ乗りを意識すると、舵角主体で気持ち良くコーナリングできる。なお、標準装着タイヤのピレリ製ファントムは、トレッドパターンこそ往年のものだがグリップ力は十分以上。マシンの雰囲気とも合っており、この選択は大正解だろう。
ブレーキは、フロントのフローティングディスクにブレンボ、キャリパーにその傘下であるバイブレ製を採用しており、高いコントロール性を実感した。薄く見えるシートも乗り心地が良く、長旅も楽しめるだろう。
(△)アフターパーツ少なめ。工夫する楽しみがある
海外ブランドのレアなメーカー全般に当てはまるのが、車種別専用のアフターパーツが少ないこと。とはいえ、汎用品を付けやすいシンプルな車体構成であり、それを長所と捉えるのもアリ。現行W800よりも10万円以上安いのも魅力だろう。
(結論)こんな人におすすめ:初のパラツイン。完成度が高くて走りも楽しい!
ミラノショー発表時から注目していたモデル。50年以上前から基本設計をほぼ変えずに作り続けてきたメーカーが、初めて新設計で投入したネオクラである。現行のW800ほどのモダンさはないが、進歩の度合いは予想を超えてきた。
【アップハンドル版の「INT650」も設定】
ハンドルやシート、タンクなどが異なる兄弟モデル。日本やアメリカなど一部の国を除き“インターセプター”の名で販売される。
●写真:岡 拓
※取材協力:ウイングフット
※ヤングマシン2019年9月号掲載記事をベースに再構成
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