現代の技術で安心してレトロ感を味わう

2019新車走評:国産ヘリテイジスポーツ編[カテゴリー別“試乗インプレッション”大図鑑 #05]

「遺産」「伝統」を意味するヘリテイジな外観に、スポーティな走りを融合したジャンル。国産勢は、往年の名車をモチーフにした車両が多い。ロングセラーのCB1300をはじめ、近年はZ900RSが大ヒットを記録。’19年は新生カタナがデビューし、注目を集めている。外国車勢に比べ、総じて現代的に洗練されており、高性能な走りが特徴的だ。

中身はスポーツ車が主流。テイスト系もしっかりアリ

見た目は懐古的だけど、中身は現代的。そんな「ネオクラシック」や「カフェレーサー」が近年、欧州でブームになり新作ラッシュが続いた。日本では、’90年代にレトロ系のネイキッドが大流行し、CBがベストセラーを記録。ある意味、時代を先取りしていたわけだが、近頃、国産勢の動きも活発だ。

外見も中身も本物のレトロ感を追求しがちな外国車勢に対し、日本車は走りにヘリテイジ感を求めず、スポーティなモデルが多いのが特徴。ホンダのCB1300系を筆頭に、ヤマハのXSR900/700、2019年にデビューしたスズキのカタナも走りが俊敏だ。

一方、空冷エンジンで味わいを重視したタイプもしっかりラインナップ。CB1100に加え、2019年にはW800が待望の復活を果たした。2018年に登場し、大型クラス1位の販売台数を記録したZ900RSもスポーティ路線だが、水冷エンジンながらテイスト感を演出。中間的な存在と言えるだろう。

SUZUKI KATANA[攻守を鍛えし新刀]間口の広いイージーファイター

SUZUKI KATANA
SUZUKI KATANA■水冷4ストローク並列4気筒 DOHC4バルブ 999cc 150ps/10000rpm 11.0kg-m/9500rpm 215kg 12L■シート高825mm ●151万2000円

GSX-S1000をベースに、現代風にアレンジした名車GSX1100Sカタナのスタイルを与えた本作。専用マフラーを与えたエンジンは、6000rpm以下の日常域から扱いやすく、スロットルレスポンスも良好。ギクシャクすることなく、大きく右手を捻れば軽やかに伸び上がる。着座位置はGSX-Sより前方かつやや高め。ハンドルも極端に高く広くなったため、ライポジの印象はベース車とかなり異なる。リラックスして流すのはもちろん、アップハンドルを使ってねじ伏せるような攻めの走りにも応える。

車体は軽量コンパクト。φ43mmのKYB倒立フォークやリンク式モノショックもベース車と共通だが、ライポジに合わせてリヤのバネレートを変更してあり、初期設定ではサスがハードに感じる場面も。コーナーでは、従順なエンジン特性と、初期タッチが柔らかく十分な制動力を発揮するブレンボ製モノブロックキャリパーと相まって、イメージ通りのラインをスムーズに描く。気負わずスポーツできる実にイージーな旋回性だ。3段階+オフのトラコンも自然な効きで、安心感に貢献する。

普段使いからツーリングまでオールマイティに楽しめる新時代のカタナ。マニアックな乗り味だった初代カタナと違い、間口の広いストリートファイターに仕上がっている。

SUZUKI KATANA
メーターは専用パネル。キーONで刀のロゴが現れる。タンク容量はGSX-Sから5L減の12L。シート高は15mm高い。

KAWASAKI Z900RS[新スタンダード]快適に「昔」を味わえる

KAWASAKI Z900RS
KAWASAKI Z900RS■水冷4スト並列4気筒 DOHC4バルブ 948cc 111ps/8500rpm 10.0kg-m/6500rpm 215kg 17L■シート高820mm ●132万8400円

これぞ「Z」と呼ぶべきレトロスタイルながら、走りは現代的。Z900ベースの水冷直4は、低中回転域を重視した専用チューンで、トルクが豊か。特に4000~7000rpmのレスポンスが鋭い。それでいて重いクランクが回る、ほどよい直4テイストが楽しめる。ハンドリングは、安定感と軽快さが上手くバランスされ、扱いやすい。旋回力自体そう高くはないが、走行ラインを自在に組み立てられる、幅の広さが光る。視線を向けただけでスッとナチュラルに曲がるのだ。

これを生み出しているのが、レスポンス良好なエンジンと、しなやかなサスによる安定感。万人が安心できる旋回特性と言えよう。ブレーキも制動力とコントロール性を調和。現代のスタンダードと言うべき出来だ。

KAWASAKI Z900RS CAFE[より快適に俊敏に]巡航力と攻めの走りを強化

KAWASAKI Z900RS CAFE
KAWASAKI Z900RS CAFE■水冷4スト並列4気筒 948cc 215kg 17L■シート高820mm ●136万800円

低く構えたハンドルや流線形状のビキニカウル、段付きのシングル風シートを与えたカフェレーサー仕様。カウルは、上体全てを風から守るわけではないが、前傾姿勢と相まって風圧をしっかり中和。分厚いシートの乗り心地も秀逸だ。「前傾」と言ってもSTDよりやや前傾する程度なので、ロングランでも決して辛くはない。コーナーでは、一段と前輪荷重がかけやすく、旋回力を引き出しやすい。攻めたい人にはカフェがオススメだ。

HONDA CB1300SF/SF[SP][重厚軽快、完全熟成]意のままに巨体を操る愉悦

HONDA CB1300SF/SF[SP]
HONDA CB1300SF/SF[SP]■水冷4ストローク並列4気筒 DOHC4バルブ 1284cc 110ps/7250rpm 12.0kg-m/5500rpm 268kg 21L■シート高790mm ※諸元はSTD ※写真はSP ●[STD]148万3920円 [SP]185万1120円

’92年に登場したCB1000SF以来、進化を重ねてきた本作。2018年モデルで9ps増とした水冷直4は、低回転から重厚なトルクとシルキーな吹け上がりを示し、右手の動きに応じて威風堂々とした体躯をキビキビと加速させる。脈動感があり、図太いサウンドも迫力十分だ。

ショーワ製前後サスを採用するSTDもハンドリングがナチュラルだが、前後オーリンズを備えるSPはさらにスポーティだ。足がしっとりと上質に動き、スッと軽快に向きを変える。車体がコンパクトになったかと感じるほど快旋回力が増し、ラインの自由度も高い。もちろん、乗り心地もアップしている。ブレーキは、STDのニッシン製も十分だが、ブレンボはよりコントロール性に優れ、耐フェード性能も高い。

HONDA CB1100/EX/RS[懐かしき鷹揚さ]往年のCBを今に伝える

HONDA CB1100RS
HONDA CB1100/EX/RS■空冷4ストローク並列4気筒 DOHC4バルブ 1140cc 90ps/7500rpm 9.3kg-m/5500rpm 255kg 16L■シート高780mm ※諸元はEX ※写真はRS ●[STD]123万1200円 [EX]133万8120円 [RS]137万8080円

1140cc空冷直4は、2000~4000rpmでいかにも直4らしいザラザラした脈動感を発生。野太い重低音サウンドに加え、タメや重厚感がある優しいレスポンスが心地いい。ハンドリングは、全体的に重心が低く、安心感を伴う。前後18インチと細目のタイヤを履くSTDとEXは、どんな操作にも応える大らかな操縦性が魅力。

特にEXは、幅広いアップハンドルにより軽く車体が寝て、穏やかに旋回する。前後17インチなど専用の足まわりと立ったキャスター角を与えたスポーティ仕様のRSは、EXと対照的。バンキングの反応が一段とスムーズで、フロントから曲がっていく。特に旋回中はリヤが腰高な印象で、よりバンク角も深い。専用のラジアルFキャリパーも強力だ。

YAMAHA XSR900[運動性能ピカイチ]SS顔負けのスポーティさ

YAMAHA XSR900
YAMAHA XSR900■水冷4ストローク並列3気筒 DOHC4バルブ 845cc 116ps/10000rpm 8.9kg-m/8500rpm 195kg 14L■シート高830mm ●104万2200円

先代MT-09の水冷トリプル+アルミフレームをベースに、往年のヤマハ車をイメージした外装を採用。サスは引き締められた専用設定だ。低速域からトルク感があり、トラコンOFFではフロントが浮き上がるほどパンチの効いた鋭い加速を発揮する。5000~8000rpm辺りの領域が楽しく、吠え上がるような高回転域の伸びも美点。往年のRZ350を連想させる2スト的な過激さだ。ナチュラルかつ高度な旋回力も特筆すべき。リニアなエンジン特性と「止まる感」が高いブレーキ、MTより腰高かつ前傾するライポジと硬い足まわりによって、コーナーの大小を問わず極めてイージーにクリアできてしまう。高速道路でも車体の安定感は抜群。実に走りの質が高いネオレトロだ。

YAMAHA XSR700[優しい万能選手]柔軟&スポーティなキャラ

YAMAHA XSR700
YAMAHA XSR700■水冷4ストローク並列2気筒 DOHC4バルブ 688cc 73ps 6.9kg-m 186kg 13L■シート高835mm ●89万9640円

XSRの第2弾で、初代MT-07がベースとなる本作。低速時のレスポンスが滑らかで、4000~8000rpmの幅広い回転域でスムーズにトルクが立ち上がる。柔らかい鼓動感も心地いい。8000rpm以降ではギュンと伸び上がり、扱いやすくもスポーティな特性だ。着座位置は高めで、車格が大きく感じるものの、ハンドル切れ角が大きく、小回りが得意。サスはソフトな設定だが、丁寧に扱うことで旋回力を引き出せる。乗り手やステージを選ばない万能選手だ。

KAWASAKI W800 Street/Cafe[いい案配レトロ]味わいを残しつつ現代的に

KAWASAKI W800 Street/Cafe
KAWASAKI W800 Street/Cafe■空冷4ストローク並列2気筒 SOHC4バルブ 773cc 52ps/6500rpm 6.3kg-m/4800rpm 223kg 13L■シート高790mm ※諸元&写真はカフェ ●[Street]99万3600円 [Cafe]111万2400円

ほぼフルチェンジしたバーチカルツインは、従来型に比べ、最大トルク発生回転数が2500→4800rpmと高回転側に。低回転のトルクフルな脈動感はそのままに、右手を大きく開けた時の伸び上がり感が強調された。排気音も歯切れがよく、クルージングが心地いい。ハンドリングはナチュラルに舵角が入るタイプ。F18インチとなり、19インチだった従来型より現代的だが、緩さはしっかりある。

シャーシも強化され、ブレーキもキッチリ効かせることが可能だ。ビキニカウルとスワローハンドルのカフェは、ハンドルとステップが手前にあるので意外とラク。胸部付近の走行風もガードする。ストリートはいわゆる殿様ポジション。アップハン+低シートのため、街中や小回りが得意だ。

SUZUKI SV650X[ナチュラル派へ]ひたすらに従順な基本特性

SUZUKI SV650X
SUZUKI SV650X■水冷4ストロークV型2気筒 645cc 76.1ps 6.5kg-m 197kg 14L■シート高790mm ●78万1920円

20年の歴史を誇る伝統の90度Vツインを搭載。アクセルの動きに対してレスポンスがダイクレトで、流したい時はまったりと、攻めたい時は爽快に吹け上がる。特に7000rpm超の伸びがパワフルだ。軽い車体としなやかな脚でハンドリングにクセがなく、気軽にスポーツできる。’19で採用した4ポットキャリパーの反応もいい。カフェ仕様のXは、セパハンにより深く前傾し、マシンとの一体感が強い。何にでも使いたいならバーハンのSTDがオススメだ。

【掲載インプレッションについて】本文は、本誌の膨大なデータベースから、様々なテスターのインプレを統合し、凝縮している。そのため掲載写真のライダーによるインプレとは必ずしも限らないので、ご留意を! また、限られたスペースを有効活用するため、車両の解説は最小限としている。マシンデータは関連記事をサブテキストとして参照されたい。
※表示価格はすべて8%税込です。

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