本場だけに、個性とスパルタン度マシマシ

2019新車走評:欧州大型ネイキッド編[カテゴリー別“試乗インプレッション”大図鑑 #08]

他の外国車クラスと同様、ネイキッドでも国産勢を上回る濃いキャラクターが多数。ストリートファイターブームの火付け役となったスピードトリプルをはじめ、ロングセラーのモンスターとデュークetc……。いずれも走りは強烈だが、そのぶん電子制御も充実しており、サポートしてくれるのがポイントだ。

テイスティな野獣系もサポート機能は万全

元々「ストリートファイター」というジャンルは、SSをネイキッドにカスタムしたバイクを指す。’90年代の欧州でブレイクし、メーカーカスタムとしてトライアンフが1994年に発売したスピードトリプルで完全に火が着いた。それだけに、欧州のストファイ人気は高く、魅力的なモデルも数多い。

スピードトリプルは表情豊かな3気筒を積み、弟分も用意する。同様に人気を博しているのがモンスター。初代は1992年登場と歴史が長く、フラットなバーハンによる前傾ライポジとトラクションに優れたLツインが特徴だ。

いずれもリッター超級はツインや3気筒ながら150psオーバーで、国産の直4勢と同等かそれ以上。中でもカテゴリー最大排気量の1290スーパーデュークRはSSに迫る177psを発生する。総じて走りは過激だが、電子制御が充実。モード変更すれば従順さもある。新作の790デュークなど扱いやすいアッパーミドルも選べる。

DUCATI Monster 1200/S/R[スーパースポーツNK]陶酔の領域をトラックにも拡大

DUCATI Monster 1200 R
DUCATI Monster 1200/S/R■水冷4ストロークL型2気筒 デスモドロミック4バルブ 1198cc 152ps/9250rpm 12.7kg-m/7750rpm 207kg 17.5L■シート高830mm ※諸元&写真はR ●175万5000円~

Lツインをトレリスフレームに積む、伝統のスポーツネイキッドがモンスターシリーズ。1200Rはその旗艦だ。心臓は専用チューンでSTDから6ps増の152psを発生。オーリンズ前後サスをはじめ、足まわりのセッティグをハードに変更し、830mmという高いシート高も特徴。とにかくスポーツ性能を徹底追求した仕様だ。

一見、大柄&マッチョでツアラー風に見えるが、走り出せば軽快そのもの。歯切れのいいサウンドを奏でながら、スムーズに低中速トルクが湧出する。さらに7500rpmから力感を増し、1万rpm超まで図太いトルクが続く。コーナリングは素直で、ブレンボモノブロックの強力なブレーキを使っての突っ込みでも車体は安定。ワイドなハンドルながら、剛性の高いFフォークと相まって、きっちりフロントに荷重を乗せていける。サーキットレベルの強烈な横Gにも持ち堪え、コーナー出口ではトラクションを濃厚に感じながら豪快に立ち上がれる。この一連の作業が実に爽快だ。

RはSTDやSよりピュアスポーツ性を前面に出し、150psを受け止めきれる設計だ。それでいて公道で6速60km/hでも走れる柔軟性を持つ。速さを追求しつつ、日常での扱いやすさを犠牲にしていないのが凄い。

ミッドレンジで獰猛

STDおよびハイグレードな足まわりのSは、獰猛なストリートファイター的。低中速域でのトルクはRを上回り、過激だ。とはいえ、そのスパルタンさはツーリングにも適した味付けで、ゆったりとした走りが楽しめる。シート高はRより35mm低く、足着き性でも断然有利だ。

DUCATI Monster 1200 S
DUCATI Monster 1200 S

TRIUMPH Speed Triple S/RS[上質にして余裕綽々]3気筒の味わいと絶品脚の化合物

TRIUMPH Speed Triple RS
TRIUMPH Speed Triple S/RS■水冷4ストローク並列3気筒 DOHC4バルブ 1050cc 150ps/10500rpm 11.9kg-m/7150rpm 189kg 15.5L■シート高825mm ※諸元&写真はRS ●146万円~

同社を代表する3気筒スポーツネイキッドがスピードトリプル。2018年にビッグチェンジを受け、同時に最高峰グレードのRSが追加された。

150psを発生する1050ccの強心臓は、直4より低い回転域から図太いトルクを発生し、これを幅広い回転域でキープ。しかも高回転までスムーズに回るため、スロットルを開けやすく、伸び切り感まである。さらに、伝統の痺れるようなサウンドも健在だ。

ハンドリングは軽快ながらシットリ感もある。倒し込みでSSのような鋭さはないが、大排気量スポーツらしいタメのあるダイナミックな旋回が楽しい。RSのオーリンズ前後サスは、乗り心地にグレード感が高く、絶妙なストロークで車体姿勢をコントロール。また、ピレリのスーパーコルサSPがねっちりした接地感を伝えてくれるため、安心してコーナーに飛び込んでいける。後はIMUが高度な制御を行うコーナリングABSとトラコンに身を委ねればいい。実に、ラクに安全に速さを引き出せるマシンだ。

サーキット遊びに似合うが、スタイリッシュに街を流すもよし。リラックスしたライポジと快適なシートに加え、オートクルーズにキーレスエントリーまで備えており、ツーリングを楽しむのもよし。個性豊かなエンジンと上質な脚で長旅も飽きないはずだ。

TRIUMPH STREET TRIPLE RS
近代並列3気筒の先駆者がトライアンフだ。現在、モト2に供給中の765cc仕様(兄弟車のストリートトリプルに搭載)では実測300km/hオーバーの新記録を樹立した実力を誇る。

KTM 1290 Super Duke R[変幻自在のビースト]高次元のFUNライドを実現

KTM 1290 Super Duke R
KTM 1290 Super Duke R■水冷4ストロークV型2気筒 1301cc 177ps 14.4kg-m 195kg(半乾) 18L■シート高835mm ●199万9000円

デュークシリーズのトップモデルに君臨し、「THE BEAST」を標榜する本作。177psの大パワーを誇る1301ccのVツインは、実に強烈だ。スロットルを大きく捻ると、暴力的に加速し、メーター読みで280km/hに到達。トラックモードだと回転域を問わず前輪が上げられ、コーナーの立ち上がりではリヤが豪快に空転してしまう。しかしモードをストリートやレインに変更すれば驚くほど従順に変貌。トラコンなどの制御も高度かつ自然だ。

車体は大柄で、着座位置も高いため、最初は手強さを感じるが、意外な乗りやすさがある。これは軽量な車体とクオリティの高いWPサスの恩恵。1300ccながら乾燥重量189㎏は破格の軽さで、取り回しもハンドリングも1クラス下のビッグオフに乗っているかのように軽快だ。ライポジは肩幅より広いハンドルバーを上から握るモタード的なもの。ハンドルで入力しやすく、振り回しやすい。また、上体がほぼ直立するため、リラックスしてVツインらしい鼓動感を楽しみながら、街乗りやツーリングもこなせる。ちなみにオートクルーズやキーレスエントリーも標準装備だ。

そしてWPサスは上質かつ動きがしなやかだ。街中では乗り心地がよく、旋回中に路面に凹凸があっても穏やかに収束。絶品のブレンボキャリパーと相まって、激攻め時は絶大なグリップ感に貢献してくれる。いかにもスーパーモト、KTMの原型と呼ぶべき1台。乗っていて実に楽しい。

スーパーバイクRC8譲りの75度Vツイン=LC8を搭載。吸気側にチタンバルブを採用し、IMUなど電子制御も充実している。
フルカラーTFTディスプレイはオプションで携帯電話の操作ができるKTM MY RIDEが使える。

BMW S1000R[キレッキレの武闘派]まんま直4SS感覚

BMW S1000R
BMW S1000R■水冷4ストローク並列4気筒 999cc 206kg 17.5L■シート高814mm ●183万800円~190万1800円

先代S1000RR譲りの直4は、最高出力を156psに抑えたものの、実にシャープな特性。発進からトルクの谷を感じさせず、1万rpmで一段と伸び上がる。高い回転域を使ってナンボのSS的フィーリングだ。モード切り替えに連動したセミアクティブサスにより、コーナリングでは常に安定感抜群。ハンドルが低く、やや前傾する特徴的なライポジに加え、高い接地感とフィードバックにより、旋回中の自由度も高い。クラスの中でも極めてスポーティなキャラだ。

DUCATI Monster 797/797+[愉快痛快、懐も深い]個性と従順さを兼備

DUCATI Monster 797 Plus
DUCATI Monster 797/797+■空冷4ストロークL型2気筒 803cc 73ps 6.8kg-m 193kg 16.5L■シート高805mm ※諸元はプラス

スクランブラー由来のLツインを積む空冷モンスター。低回転から粘り、パワフルながらレスポンスは穏やか。緊張感はなく、スムーズにトルクと鼓動が湧き出る。5000rpm程度からトルクがフラットになるので、飛ばさない方が楽しい。ハンドリングは、倒し込みが軽い上にリヤを主体に曲がる特性なので安心。一方、やや硬い足まわりと高性能なブレーキで、攻めた走りも可能だ。ハンドルはワイドで遠いが、兄貴分よりは手前。タンデムしやすいのも美点だ。

KTM 790 Duke[自由度バツグン]激しさも従順さも内包

KTM 790 Duke
KTM 790 Duke■水冷4ストローク並列2気筒 799cc 105ps 8.7kg-m 169kg(半乾) 14L■シート高825mm ●112万9000円

並列2気筒ながら、285/435度という独特な爆発間隔を持ち、フィーリングはVツイン的。鼓動感を伴いつつ、低速からトルクフルだ。右手の動きに忠実に反応する上に、103psという過不足ないパワーと相まって、積極的に開けたくなる。走行モードは4種あり、マイルドな走りも、ウイリーやスライド走行も可能だ。ライポジはやや腰高感があり、軽く前傾するモタード風。シートがフラットで前後に動きやすいため、状況に応じて着座位置を変えられる。ハンドリングは、軽い車体を活かし、基本的に軽快&素直だが、自由なライポジによって、さらに鋭さも安定感も引き出せるのがいい。WPサスは豊富なストロークで荒れた路面でも安心感あり。過激さと扱いやすさを兼ね備えた1台だ。

DUCATI Hypermotard 950/SP[随一の緊張感と爽快感]扱いやすくもスパルタン

DUCATI Hypermotard 950 SP
DUCATI Hypermotard 950/SP■水冷4ストロークL型2気筒 DOHC4バルブ 937cc 115.6ps/9000rpm 9.8kg-m/7250rpm 178kg(乾) 14.5L■シート高890mm ※諸元&写真はSP ●[STD]165万円 [SP]210万円

2019年にフルチェンジを受けて939→950に新生。STDは、低回転でギクシャクすることなく、力強いトラクションを楽しめる。長いホイールベースとゆったりしたサスストロークによって、街中を流すような走りは自然。パルス感のあるサウンドも心地いい。ただし、中途半端にペースを上げると途端に足まわりが落ち着かなくなる。シックリくるのはさらにスポーティな領域。サスが沈み、リズムが合って爽快に曲がれる。

SPはさらにスパルタンだ。軽量ハイパワー化され、前後オーリンズも高荷重設定。体感的には、Lツインのパニガーレさえ凌ぐスパルタン度だ。扱いやすさと過激さが同居するSTDに対し、SPは過激度100%。だが、その分、得られる充実感は非常に高い。

【掲載インプレッションについて】本文は、本誌の膨大なデータベースから、様々なテスターのインプレを統合し、凝縮している。そのため掲載写真のライダーによるインプレとは必ずしも限らないので、ご留意を! また、限られたスペースを有効活用するため、車両の解説は最小限としている。マシンデータは関連記事をサブテキストとして参照されたい。
※表示価格はすべて8%税込です。

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