RナインTのヒットを受け、欧州メーカーから新作ラッシュが相次いだ当カテゴリー。並列、L型、ボクサーと様々なれど、エンジン型式はツインが大多数。スポーツ性能より、鼓動感やトルクなどテイストを重視したモデルが並ぶ。中でもボンネビルに代表されるトラインフのバーチカルツイン系、ドゥカティのスクランブラー系が勢力拡大中だ。
- 1 外観も中身も一段とヘリテイジ感高し
- 2 TRIUMPH Bonneville T120/T100[らしさ全開]水冷ながら伝統を継承
- 3 TRIUMPH Speed Twin[イブシ銀スポーツ]スラクストンとボンネを折衷
- 4 TRIUMPH Speedmaster[侮れない英国紳士]クルーザー風ながら愉快
- 5 TRIUMPH Street Twin[基本仕様も濃口]お気軽シンプルボンネ
- 6 TRIUMPH Thruxton/R[光る黄金の脚]これぞ正統派モダンカフェ
- 7 TRIUMPH Street Cup[本格カフェだけど手軽]効果的な変更で旋回力増
- 8 TRIUMPH Scrambler 1200XC/XE[本気の『大脱走』]オフもOKのネオクラ
- 9 TRIUMPH Street Scrambler[ワイルドに行こう]より扱いやすい弟分
- 10 DUCATI Scrambler 1100 Special[鼓動満開、個性の塊]荒々しさ満点の長兄
- 11 DUCATI Scrambler Desert Sled[新感覚の両刀使い]オフ強化でオンにも恩恵
- 12 ROYAL ENFIELD Continental GT 650[お気楽&極楽]ほどよい味とサイズ感
- 13 HUSQVARNA Vitpilen 701[刺激物の本物カフェ]手強くも操る醍醐味アリ
- 14 BMW R nine T Racer[独自の世界観に浸る]走りも真のクラシック
- 15 BMW R nine T Urban G/S[走りは等身大]元祖冒険野郎を今に再現
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- 17 写真をまとめて見る
外観も中身も一段とヘリテイジ感高し
2014年にヒットしたBMWのRナインTに続けとばかりに、2015年にドゥカティスクランブラーがデビューし、一挙にシリーズを拡大。2017年にはトライアンフのボンネビルシリーズが空冷→水冷化に踏み切り、世間を驚かせた。
前述したように外国車勢はスタイルでも走りにおいてもクラシックさを重視しているのが特徴。エンジンも直列4気筒が主流の国産勢に対し、ツインのみとなる(ハスクバーナのみシングル)。温もりのある鼓動感やサウンド、大らかさを重視したモデルが揃っており、「もっとスポーツしたい人はSSをどうぞ」といった割り切りを感じる。
とはいえ、その気になればパンチのある走りも可能。トライアンフの1200cc系はパワーモードを備え、ドゥカティスクランブラー系は高回転でLツインらしい弾けっぷりを見せる。異色なのはスラクストンR。昔ながらの骨格ながら足まわりを高級なパーツで武装した、いかにもカフェらしい個性派だ。
TRIUMPH Bonneville T120/T100[らしさ全開]水冷ながら伝統を継承
シリーズの旗艦であるT120は、270度クランクの1200cc水冷パラツインを搭載。トライアンフらしい本物感のある造形に加え、主張のある鼓動感と、路面を蹴り出すトルク重視の設定が楽しい。電子制御スロットルにより極低速から安定し、加速は淀みない。高回転での伸び切り感は薄いものの、下のトルク感は圧倒的だ。ハンドリングはいわゆる安定志向。ワイヤースポークホールとフロント18インチにより、マッタリした手応えがある。まさに大排気量バーチカルツインに相応しい落ち着いた走りだ。
一方、900cc仕様のT100は、ミッションが6→5速となり、パワーモードが非装備。より回して走るキビキビした印象で、鷹揚なT120に対し、一層スポーティだ。
TRIUMPH Speed Twin[イブシ銀スポーツ]スラクストンとボンネを折衷
走りを重視したスラクストンをベースに、ボンネビル風のスタイルと肩肘張らないスポーティさを追求したロードスター。並列ツインは270度クランク特有のパルス感を奏で、トルクフルかつ扱いやすい。右手を大胆に捻れば、キレイにパワーが立ち上がり、一直線にスピードが乗っていく。戦闘的ライポジのベース車に対し、アップハンドルと低めのステップを採用しており、自由度は高め。低速ではややハンドリングに重さを感じる場面もあるが、速度を上げていくと車体姿勢や状態にあまり気を遣うことなく、スッとマシンが倒れ込み、即座に旋回力を発揮する。
強烈な個性はないものの、自然で速さを引き出しやすい。しかも操る感覚がじっくり味わえるキャラだ。
TRIUMPH Speedmaster[侮れない英国紳士]クルーザー風ながら愉快
T120の派生モデルで、60mm長いホイールベースと前後16インチ、低い車高を与えた。エンジンは低中速寄りに調教され、排気音とパルス感がより濃厚。重心位置が低いため、車体の安定感はタップリだ。小径ホイールのためか、ハンドリングは意外とクイック。手前に引かれたハンドルとお尻の重心移動で曲げていくスポーツクルーザーらしい走りが楽しい。一見リジッドフレームのようだが、リヤはリンク式モノショックで乗り心地は秀逸だ。
TRIUMPH Street Twin[基本仕様も濃口]お気軽シンプルボンネ
同社のヘリテイジ系で最もベーシックな1台。2019年モデルで大幅刷新され、270度クランクの900cc並列2気筒は55→65psに増強された。全域で滑らかに吹け上がり、低中回転域では鼓動感、高回転域では心地いい伸びを見せる。あらゆる要素で従来型を上回っており、高回転高出力型になった気配はほとんどない。足まわりも一新され、コーナーでは一段とプッシュでき、ロングランも快適になった。T120に比べて小柄で、気軽なのもポイントだ。
TRIUMPH Thruxton/R[光る黄金の脚]これぞ正統派モダンカフェ
T120をベースに、専用チューンで17ps増を達成。さらにバックステップ&セパハンを採用したホットバージョンとなる。T120と乗り味は全く違い、アクセルを大きく開けるとキレイに吹け上がり、7000rpm超で強烈な加速を示す高回転型のキャラだ。体感的にも非常に速い。RはショーワBPFやブレンボモノブロック、オーリンズフルアジャスタブルなどを備えた上級版。リヤ2本サスながら抜群の接地感で、コンパクトに曲がる。ブレーキの操作感も極上だ。
TRIUMPH Street Cup[本格カフェだけど手軽]効果的な変更で旋回力増
T100と共通の900ccに、前後アルミキャストホールやスワローハンドルを与えたカフェ仕様。適度な前傾姿勢に加え、キャスター角が変更されており、T100より明らかに旋回力が高い。それでいて、18インチならではの適度な落ち着き感も残されているのがいい。エンジンはT100と同様、3500rpmも回せば事足りるほど低中速トルクが豊か。重いクランクが回るフィーリングも心地いい。バーエンドミラーは特徴的だが、見やすいのでご安心を。
TRIUMPH Scrambler 1200XC/XE[本気の『大脱走』]オフもOKのネオクラ
T120をベースに、専用フレームやショーワ製倒立フォークなど最新のオフ装備を投入。車重225kg(XE)の数値以上に軽く感じ、起伏のあるエンデューロですら存分に駆け回れる。特に前後250mmという長大なサスストロークを持つXEの走破性は、本格オフ車並み。映画『大脱走』のジャンプも可能だろう。直進安定性が抜群なので、高速道路の巡航も得意だ。エンジンは穏やかなレスポンスとパルス感が愉快。XEに搭載されるトラコンの出来もいい。
TRIUMPH Street Scrambler[ワイルドに行こう]より扱いやすい弟分
2019年型ストリートツインをベースに、ワイドなアップハンと右2本出しアップマフラーなどでオフイメージを演出した。大柄で上体が起きたポジションとなり、ワイルド感満点。ステップ位置もベース車より前寄りとなる。フロント19インチとやや硬いサス設定によって一段と旋回中の安心感があり、豪快にねじ伏せて走るのが楽しい。また、重心位置が高いため、、乗り手の操作に対する反応が明確。操る手応えとコーナーを攻める喜びはベース車以上だ。
DUCATI Scrambler 1100 Special[鼓動満開、個性の塊]荒々しさ満点の長兄
シリーズの旗艦で、同社の空冷Lツインで最大排気量を持つ。専用セッティングで強化した低中速トルクと、デスモドロミック特有のピックアップのよさが特徴。右手の動きにキッチリ反応し、車体を前に前に進める。この時に発生する空冷デスモならではの荒々しく、ザラッとした爆発感が唯一無二の個性だ。車体は800cc版より軸間距離が延長されており、高い接地感を発揮。しっかり前輪荷重できるスポーティなハンドリングは、モンスター系に最も近い。
DUCATI Scrambler Desert Sled[新感覚の両刀使い]オフ強化でオンにも恩恵
スクランブラーが持つ、オフのテイストと性能を強化した本作……だが、剛性を高めた専用フレームと硬めのロングストロークサスにより、オンロードの攻めやすさも抜群。開け始めが扱いやすく調教され、フラットにトルクが立ち上がる空冷LツインとF19インチが相まって、実に扱いやすい。オフでは安定感があり、ある程度の腕があれば走破性を引き出すことが可能。シート高は860mmと高いが、足が出しやすく、数値以上に足着きはいい。
ROYAL ENFIELD Continental GT 650[お気楽&極楽]ほどよい味とサイズ感
270度クランクの空油冷パラツインを積む新作。極低速からスムーズで粘りがあり、トコトコ走りも楽勝。ハンドル切れ角も片側37度と大きく、小回りもイージーだ。それでいて不等間隔爆発のトラクションが心地よく、3000~7000rpmの広範囲で力強いトルクを発揮する。車格はほどよい大きさで、低重心感があって安心。ハンドリングは立ちが強めだが、元気な中回転域を使えばメリハリよく旋回できる。やや上体は前傾するが、ツーリングもOKだ。
HUSQVARNA Vitpilen 701[刺激物の本物カフェ]手強くも操る醍醐味アリ
これぞ本物のカフェレーサーだ。このクラスで珍しいシングルはデューク690譲り。やや高回転高出力化され、4000rpm以下はギクシャクしがちだが、5000~8000rpmで太いトルクを発揮する。豊かな鼓動感もあり、回すのが楽しい。ほぼ真一文字のハンドルで深く前傾し、腰を後ろに引いてリヤのトラクションを高める。すると、キャスターを立てたフロントを軸に向きを変えていく。単気筒らしいヒラリ感は薄いが、積極的にマシンに働きかけられて愉快だ。
BMW R nine T Racer[独自の世界観に浸る]走りも真のクラシック
伝統の空冷ボクサーツインを受け継ぐRナインTにロケットカウルなどを与え、’70年代風カフェを体現。後方に下げたシートと低く構えたセパハンによる大柄なポジションは、まさしく往年のレーサーだ。心臓はドロロロッとゆっくり回転が上昇し、縦置きエンジン特有の右に傾く癖も実にクラシカル。実際は体感より速く、飛ばした時の加速感はライバルと同等だ。後ろ乗りかつ長い軸間距離により前輪荷重を残した走りは苦手。マシンなりに流すのが似合う。
BMW R nine T Urban G/S[走りは等身大]元祖冒険野郎を今に再現
RナインTスクランブラーをベースに、1980年に登場した初代GS=R80G/S風のルックスを再現。重めのクランクマスによる豊かなトルクと硬質な微振動が、本作の外観によく似合う。ハンドリングはデュアルパーパスよりネイキッドに近い。F19インチでホイールベースも1530mmと長いので、旋回力はそれなりだが、切り返しは軽快。峠道も楽しい。未舗装路を走るにはダンピングが強めでストローク量も短いが、一般的なネイキッドよりずっと走りやすい。
【掲載インプレッションについて】本文は、本誌の膨大なデータベースから、様々なテスターのインプレを統合し、凝縮している。そのため掲載写真のライダーによるインプレとは必ずしも限らないので、ご留意を! また、限られたスペースを有効活用するため、車両の解説は最小限としている。マシンデータは関連記事をサブテキストとして参照されたい。
※表示価格はすべて8%税込です。
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