装備を簡素化して購入しやすい価格を実現したエレクトラグライドスタンダード。ツーリング系は圧倒的な快適性や豪華さを誇るだけに、カラーや装備を簡素化した当モデルは異色の存在と言える。ホイールはフロント17インチ、リヤ16インチで、リーンアングルは右側が31度、左側は29度を公称する。素の実力を味わえ、カスタムベースとしても最適だ。
(◯)エンジン、車体ともに熟成の妙を感じさせる
このモデルが属しているツーリングファミリーは、’17年モデルで伝統の45度V型2気筒エンジンが“ツインカム”から“ミルウォーキーエイト”へと進化した。2→4バルブ化されたのが最大のポイントで、当モデルが搭載するのは、シリンダーヘッドに冷却用のオイルラインを持つ1745㏄の空油冷エンジンだ。
自身初体験となるミルウォーキーエイト。その進化は目覚ましく、ツインカム時代に感じていたネガティブな問題が、ほぼ全て解消していたのだ。まずはアイドリング。メーター読みでおおよそ800rpmという低い回転域で安定しており、従来のせわしなさは皆無だ。そして、電子制御スロットルの開け始めの反応に違和感がなくなり、さらにシリンダーヘッド付近から聞こえていたメカノイズも大幅に静かになった。
驚きはまだ続く。1次バランサーのおかげで高回転域でも振動は過大にならず、スロットルを大きく開けることに躊躇がなくなった。高速巡航はひたすらに快適で、最大トルク発生回転数3250rpmよりも少し下あたり、2500rpm付近で流すとビッグVツインの心地良い脈動感が伝わり、ありきたりな表現だがどこまでも走り続けたくなる。
そして、これを支えるシャーシも素晴らしい。エンジンの振動が少なくなった分、マウントラバーの硬度を上げることができたのか、実質的にシャーシ全体の剛性がアップしたようだ。前後のショーワ製のサスペンションも作動性は優秀で、巡航時の乗り心地がいいのはもちろん、きれいにピッチングが発生するのでハンドリングもいい。ツーリングファミリーは、ステム軸とフォークの関係(位置と角度)が特殊で、それゆえに取り回しの際やタイトターンで最初は戸惑うが、走り出してしまえば376㎏という車重を感じさせないほど軽快に走らせられるのだ。
アイコニックなバットウイングカウルは防風効果が高く、パニアケースも片手で開閉できるので使い勝手は良好。上位機種よりも装備が簡素化されているとはいえ、だからこそ素の性能が存分に味わえるのだ。
(△)類似モデルとの差額小。かなり迷う可能性大だ
ツーリングファミリーの売れ筋と言われるストリートグライド(右ページ参照)は、’19年モデルでアップルカープレイと接続できる最新のインフォシステムを導入。さらにタンデムもできるので、試乗した機種との差額を考えると悩みどころだ。
(結論)こんな人におすすめ:シンプルゆえに持ちうる実力を存分に楽しめる
購入しやすい価格、とはいっても乗り出しで優に300万円を超える。それを支払える人にだけ特別な世界を見せてくれるのがハーレーであり、だからこそ100年以上も支持されているのだ。ツーリング系はやはりハーレーの真骨頂だ。
【類似機種は10万円高。装備がかなり豪華に】
最新のインフォシステムやフロント19インチホイール、カウルマウントのミラーなどを採用。スタンダードとの差額を考えるとお買い得だ。【ストリートグライド(299万8000円~)】
●写真:岡 拓
※取材協力:ハーレーダビッドソンジャパン
※ヤングマシン2019年8月号掲載記事をベースに再構成
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