前回までのホンダ同士のニーゴー対決では、予想通りというか予想以上の差で4気筒パワーが炸裂した。ならば、禁断の排気量アップで勝負に挑めばどうなる!? かつて4気筒は750ccまで、2気筒は1000ccまでとされていたスーパーバイク世界選手権になぞらえ、ヤマハFZR250RとYZF-R3が対決する!
●まとめ:伊丹孝裕 ●写真:真弓悟史
第1回における0-1000m加速の結果を踏まえ、それをもう少し細かく分析した内容が今回、第2回で示した数値だ。ピュアにパワーを追求したMC22(4気筒 CBR250RR・1992年モデル)に対し、MC[…]
気筒数か、排気量か? 小さなSBKが開幕!!
時代が違うとはいえ、排気量が同じニーゴーなら、そりゃあ気筒数が多い方が有利でしょ。出来レースにもほどがある……という批判をかわすべく、次なる戦いとして用意したのが、1990年型のFZR250Rと最新のYZF-R3という新旧ヤマハ対決である。
そう、ご存じの通り、R3は2気筒ながら320ccの排気量を持つR25の強化バージョンだ。高回転型の4気筒と、排気量を拡大したトルキーな2気筒との対決は、さながら小さな世界スーパーバイク選手権である。
リアルな戦いでは、排気量に勝る2気筒のドゥカティが国産4気筒勢を蹴散らす場面が多かった。果たしてこのクラスでも同じことが起こるのか? ホンダ対決の時と同様に、0-1000m加速のタイムを計測した結果はグラフに示した通りだ。
格上にも喰らいつける!
いや、実にいい戦いだった。スタートから100km/hまでの加速ではR3が前に出るも徐々にFZRが追い上げて逆転。そのまま振り切るかと思いきや、R3もねばりにねばり、1000m通過時点でのタイム差はわずか0.6秒ほどだった。排気量アップに勝るチューニングはないと言われるが、それぞれの特性を存分に活かした、見ごたえのある勝負で盛り上がった。
ただし、冷静に考えてみるとFZR250は70ccも排気量が少ないだけでなく、29年も前のモデルである。それで勝ってしまったのだから、やはり当時のマシンの本気度には驚かされる。
「パワーで車速をゴリゴリと押し上げるのがホンダで、ヤマハは洗練されていてスムーズに回り切る。いつの時代もそういうイメージだけど、この頃のニーゴーもやっぱりそうだった、とあらためて実感できた。クラッチをいたわりながらの走行だったにもかかわらず、R3に勝てたという事実にちょっとした凄みを感じる。タイム差はわずかながら、スピード感やパワー感はまったく違い、レーシングマシンを思わせるダイナミックなフィーリングが心地よかった。対するR3はトルクに頼れるから断然楽。CBR-RR対決以上にそれぞれのキャラクターが立っていて楽しかったね」と丸山は語る。
「あまり高回転まで引っ張るよりも、トルクのピークを逃がさないように早めにシフトアップすれば、R3のエンジンの特性は活かせますね。でも爽快なのはやっぱりFZRの4気筒。ホンダよりパワーの発生回転は低いものの、バイブレーションがほとんどなく、上質なマシンに乗っている感覚が強い」とは伊丹。ニーゴー4気筒の底力が見えた対決だった。
0-1000m加速:発進でつまづくが伸びで上回る
トルクに勝り、その発生回転数も低いR3はクラッチミートが楽なことも加わって、鋭いスタートダッシュを披露。車重はFZRより重いがそれを相殺するだけ力強さで400m付近までならリードすることが可能だ。ただし、ギヤが上がっていくとFZRのパワーが逆転。1000mラインを超えてもまだジワジワと車速が上がっていく、底知れない伸びしろが印象的なエンジンだった。
出力&トルク:極端に異なる出力特性
’80年代を謳歌したテスターふたりはやはりニーゴー4気筒がお気に入り?
スペックでFZR250RとYZF-R3を比較!
パワーチェック&車両協力(FZR):モトアップ
JSB1000に参戦する「テルルMotoUPレーシング」の母体ショップで、最新SSを得意としつつ、広い店内には’80~’90年代レプリカがズラリと並ぶ。今回はFZR(販売済)の借用に加え、取材車両4台のパワーチェックもお願いした。
車両協力(MC22):磯部祐子さん
GPS計測器:デジスパイスⅢ
加速データの計測はおなじみ、超小型GPSロガーのデジスパイスⅢ。今回は中間加速の速度を正確に把握するため、速度を表示できるスマホアプリ「DigSpice SPEED」も併用。計測には代表の田口幸宏さんも立ち会って下さった。
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