大胆なマイナーチェンジ!
ヤマハ YZF-R3 ABS試乗インプレッション【倒立式&ラジアル化で走りが1ランクアップ】
- 2019/8/10

R25から遅れること約3か月、兄弟車のYZF-R3も同様のフルモデルチェンジを実施。R25では行われなかった標準装着タイヤのラジアル化に着目して試乗した。ハードブレーキング時の安心感、そこからの倒し込みで伝わる接地感の高さなど、やはりラジアルタイヤの恩恵は圧倒的で、これを決断したのはやはり大正解だったと言えよう。
(◯)接地感の高さが印象的。倒立化の効果が生きる
YZF-R25と共通のシャーシにボアを8mm拡大した320ccの水冷並列2気筒エンジンを搭載し、’15年4月に国内での販売が始まったYZF-R3。’19年モデルでR25と同様の大胆なマイナーチェンジを実施した。42psの最高出力などエンジンスペックは先代から変更はないが、R25と大きく異なるのは標準装着タイヤがラジアル化されたことだ。3万2400円という価格の上げ幅は共通なので、新型R3はお買い得という見方もできる。

【YAMAHA YZF-R3 ABS[2019]】主要諸元■全長2090 全幅730 全高1140 軸距1380 シート高780(各mm) 車重170kg ■水冷4スト並列2気筒DOHC4バルブ320cc 42ps/10750rpm 3.0kg-m/9000rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量14L ■ブレーキF=ディスク R=ディスク ■タイヤF=110/70R17 R=140/70R17
まずはエンジンから。アイドリング時の排気音はR25よりもわずかに太く、プラスされた71cc分の排気量差を想像させる。そして、スタート時の出足の速さからそれが実感に変わり、その後に続く加速感も明らかに力強いのだ。市街地で自然と多用する4000~7000rpmでのトルクが厚いので、R25より1段高いギヤでもスロットルのオンオフによってキビキビと走れてしまう。そして、大きく開ければレッドゾーンの始まる1万2500rpmまで気持ち良く回る。7000rpm付近からもう一段伸び上がるR25よりも表情の変化こそ少ないが、やはり実用域でのトルクの差は明らかだ。
続いてハンドリングについて。以前、R25の新旧を比較した際、荒れた路面の峠道では正立式フォークを採用する旧型のしなやかさに軍配を上げた。その印象が残る中で新しいR3を走らせたところ、排気量が増えた分だけ自然と速度域が上がったのか、倒立式フォークの剛性アップによるメリットを感じ取ることができた。加えて、ハードブレーキング時の安心感、そこからの倒し込みで伝わる接地感の高さなど、やはりラジアルタイヤの恩恵は圧倒的で、これもあって倒立の優位性を感じ取ることができたといっても過言ではない。そして、R25のオーナーにはぜひともラジアルを試してほしい。

【φ37mm倒立&ラジアルで脚を強化】Fフォークはφ41mm正立→φ37mm倒立のカートリッジ式に。標準装着タイヤはミシュランのパイロットストリート(バイアス)から同じサイズのダンロップ・GPR-300に変更。
昨年、400ccクラスで販売台数が第3位(MT‐03と合わせて)だったR3。モトGPマシンYZR‐M1やシリーズ最高峰のYZF‐R1を彷彿させる魅力的なスタイリングを手に入れただけに、引き続き好調な売れ行きを見せるだろう。

【外観刷新で魅力アップ。ABS仕様のみを設定】R25に対してボアを8mm広げ、排気量を249→320ccとした水冷並列2気筒エンジンを搭載。最高出力42psは先代から変わらず、車重もR25のABS仕様と全く同じ170kgを公称。フレームは鋼管ダイヤモンドで、これも従来型から変更なし。

先代比でハンドル位置は22㎜下がったが、それでも前傾姿勢は深くなく万能的に使える。シート高は780㎜のままで足着き性は良好(身長175cm 体重62kg)。

【M1風トップブリッジとフル液晶メーターで精悍さアップ】YZR-M1やYZF-R1を彷彿させる肉抜きトップブリッジを採用。液晶メーターはR25と共通で、レッドゾーンと上限回転数が異なる。

ヘッドライトの光源はフィラメント球からLEDへ。新しいダクトはM1を彷彿させる(左)。タンデムシート裏にヘルメットホルダーあり。収納スペースはご覧のとおり狭い(右)。

インナータンクと樹脂カバーを変更。上面を20mm下げつつ左右最大幅を31.4mm広げることで、タンク容量14Lを維持している(左)。特徴的なレイヤードカウル。空力性能の向上で、実験では最高速が8km/hアップしたという(右)。
R25との違いは?
エンジン特性は、ついつい回したくなるR25に対し、R3は早めにシフトアップして厚いトルクに物を言わせる的な印象だ。ハンドリングは、倒立化によって車体にややオーバースペック感が漂うようになったR25に対し、R3はパワーとのマッチングの良さを感じる。

【YAMAHA YZF-R25 ABS[2019]】主要諸元([ ]内は非ABS車)■全長2090 全幅730 全高1140 軸距1380 シート高780(各mm) 車重170[167]kg■水冷4スト並列2気筒DOHC4バルブ 249cc 35ps/12000rpm 2.3kg-m/10000rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量14L ■ブレーキF=ディスク R=ディスク ■タイヤF=110/70-17 R=140/70-17 ●価格:64万2600円(ABSなしは59万9400円) ●色:青、つや消し黒、つや消し赤

2車を諸元で比較すると表の通りだ。
(△)同種のライバルに対し排気量を上げてもいい
’17年にスタートしたSBKの下位クラス、SSP300でも活躍しているR3。同様に250ccと車体を共有するニンジャ400やRC390Rの躍進が目覚ましく、車体のキャパシティから察するにもう少し排気量を上げてもいいように思う。
(結論)こんな人におすすめ:ラジアル化を決断したのはやはり大正解
カワサキのZ400とZ250を比較したときにも実感したのだが、地面と唯一接しているタイヤの性能差は走りの印象を大きく変える。車検は確かに手間だが、プラス71ccによる余裕は明らかだ。R3が売れている理由が分かる気がした。
●写真:岡 拓
※取材協力:ヤマハ発動機
※ヤングマシン2019年8月号掲載記事をベースに再構成
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ヤマハ YZF-R3の価格情報

ヤマハ YZF-R3
※ 価格は全国平均値(税込)です。
新車 145台 | 価格種別 | 中古車 61台 |
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本体 60.88万円 価格帯 49.8~68.75万円 |
本体価格 |
本体 44.48万円 価格帯 38.49~55.89万円 |
諸費用 8.99万円 価格帯 6.67~8.3万円 |
諸費用 |
諸費用 8.66万円 価格帯 4.68~7.46万円 |
乗り出し価格 69.87万円 価格帯 58.1~75.42万円 |
乗り出し価格 |
乗り出し価格 53.14万円 価格帯 43.18~63.36万円 |