R25から遅れること約3か月、兄弟車のYZF-R3も同様のフルモデルチェンジを実施。R25では行われなかった標準装着タイヤのラジアル化に着目して試乗した。ハードブレーキング時の安心感、そこからの倒し込みで伝わる接地感の高さなど、やはりラジアルタイヤの恩恵は圧倒的で、これを決断したのはやはり大正解だったと言えよう。
(◯)接地感の高さが印象的。倒立化の効果が生きる
YZF-R25と共通のシャーシにボアを8mm拡大した320ccの水冷並列2気筒エンジンを搭載し、’15年4月に国内での販売が始まったYZF-R3。’19年モデルでR25と同様の大胆なマイナーチェンジを実施した。42psの最高出力などエンジンスペックは先代から変更はないが、R25と大きく異なるのは標準装着タイヤがラジアル化されたことだ。3万2400円という価格の上げ幅は共通なので、新型R3はお買い得という見方もできる。
まずはエンジンから。アイドリング時の排気音はR25よりもわずかに太く、プラスされた71cc分の排気量差を想像させる。そして、スタート時の出足の速さからそれが実感に変わり、その後に続く加速感も明らかに力強いのだ。市街地で自然と多用する4000~7000rpmでのトルクが厚いので、R25より1段高いギヤでもスロットルのオンオフによってキビキビと走れてしまう。そして、大きく開ければレッドゾーンの始まる1万2500rpmまで気持ち良く回る。7000rpm付近からもう一段伸び上がるR25よりも表情の変化こそ少ないが、やはり実用域でのトルクの差は明らかだ。
続いてハンドリングについて。以前、R25の新旧を比較した際、荒れた路面の峠道では正立式フォークを採用する旧型のしなやかさに軍配を上げた。その印象が残る中で新しいR3を走らせたところ、排気量が増えた分だけ自然と速度域が上がったのか、倒立式フォークの剛性アップによるメリットを感じ取ることができた。加えて、ハードブレーキング時の安心感、そこからの倒し込みで伝わる接地感の高さなど、やはりラジアルタイヤの恩恵は圧倒的で、これもあって倒立の優位性を感じ取ることができたといっても過言ではない。そして、R25のオーナーにはぜひともラジアルを試してほしい。
昨年、400ccクラスで販売台数が第3位(MT‐03と合わせて)だったR3。モトGPマシンYZR‐M1やシリーズ最高峰のYZF‐R1を彷彿させる魅力的なスタイリングを手に入れただけに、引き続き好調な売れ行きを見せるだろう。
R25との違いは?
エンジン特性は、ついつい回したくなるR25に対し、R3は早めにシフトアップして厚いトルクに物を言わせる的な印象だ。ハンドリングは、倒立化によって車体にややオーバースペック感が漂うようになったR25に対し、R3はパワーとのマッチングの良さを感じる。
(△)同種のライバルに対し排気量を上げてもいい
’17年にスタートしたSBKの下位クラス、SSP300でも活躍しているR3。同様に250ccと車体を共有するニンジャ400やRC390Rの躍進が目覚ましく、車体のキャパシティから察するにもう少し排気量を上げてもいいように思う。
(結論)こんな人におすすめ:ラジアル化を決断したのはやはり大正解
カワサキのZ400とZ250を比較したときにも実感したのだが、地面と唯一接しているタイヤの性能差は走りの印象を大きく変える。車検は確かに手間だが、プラス71ccによる余裕は明らかだ。R3が売れている理由が分かる気がした。
●写真:岡 拓
※取材協力:ヤマハ発動機
※ヤングマシン2019年8月号掲載記事をベースに再構成
激しさを増す250SSウォーズ。ヤマハは次なる一手としてYZF-R25のスタイルを一新し、倒立フォークを投入した。'15年に登場、'18年に新排ガス規制対応により36→35psとなった本モデル。今回は[…]
モトGPにおけるヤマハのファクトリーチーム“モンスターエナジー ヤマハ MotoGP”が走らせるファクトリーマシン、YZR-M1が纏う黒×青カラーが施されたYZF-R3が北米で発表されたのに続き、日本[…]
元々は初級者向けの親切なスポーツツリングマシンとしてして生まれたYZF-R3だったが、SSP300カテゴリーのレースが始まると、より根本的なサーキットスポーツに生まれ変わることを求められた。そう、ただ[…]