第47回マシン・オブ・ザ・イヤー2019

新型S1000RRの牙城に挑むのは!?

【2019海外直送・独日最強決戦】直4スーパーバイク1000 全開スーパーTEST[#02 ホンダ&ヤマハ編]

  • 2019/7/28

2019年は日本車キラーのBMW S1000RRが、『シフトカム』などの新テクノロジーを盛り込んでフルモデルチェンジ。ついにサーキットへと解き放たれた。ドイツ・PS誌では日本に先立ち、条件が同じ1000cc直4スーパーバイクのライバルを集めて、サーキットで全開テストを敢行。第1回ではアンダルシア・サーキットでS1000RRがベストラップをマークし、続く第2回ではホンダとヤマハが挑む様をお届けしよう。

文:Volkmar Jacob(PS) 写真:Arturo Rivas(PS) まとめ:宮田健一

舞台はスペイン・アンダルシア!

アンダルシア・サーキットは南スペイン・アルメリアにあり、旧コースの隣に約1年半前に完成したばかり。旧コースと接続することもできる。全長約4km半で習得は難しく、特にピット出口から数百m先の山頂直後はカーブが縮小し、早めのターンオフが必要となる。

舞台は新コースが完成したばかりのアンダルシア・サーキットだ!

タイヤはピレリで統一!

イコールコンディションでのテストを期するために、タイヤはピレリで統一。しかも、サーキットでの限界性能を引き出すことに挑戦するため、銘柄にはレーシングスリックのDIABLO SUPERBIKE SC1をチョイスした。このタイヤはSBK=ワールドスーパーバイク世界選手権の公式タイヤでもあり、まさにガチ仕様。タイヤ専門のスタッフも派遣され、エア圧などは厳密に管理された。

タイヤはレーシングスリックのDIABLO SUPERBIKE SC1に統一。

HONDA CBR1000RR SP:1000ccと思えぬコンパクトぶり

うぉーっ! 現行のファイアーブレードはどれほどコンパクトに構築されていることか! 思わずもう1度モデル名を見直してしまった。これは本当に“1000”なのだろうか? 他に例を見ないスーパーバイクで、600ccクラスに乗ってるような楽しい気分を伝えてくる。195kgとスーパーバイクとして最も軽い車体は貪欲にコーナーに突っこんでいくことができ、前輪はその先のラインを完璧にトレースすることができる。セミアクティブサスペンションは美しくバランスのとれた働きをし、スプリングもきれいに反応してくれる。ライディング中にたくさんの幸福ホルモンが身体から放出されてくるのが分かる。

600的なコンパクト感で、とにかく走りが楽しいCBR1000RR SP。

しかし、光があるところには影があるものだ。毎度ながらこのマシンのABSはレースだと少し早すぎるペースで作動し、まだカーブで路面を掴んでいるかグラベルにまっすぐに入ってしまっているかにかかわらずブレーキレバーがピクついてライダーのコントロールを置いてきぼりにしてしまう。イタリアの協力バイク雑誌が報告しているようにホンダは2019年モデルでABSをはじめとした電子制御デバイスまわりを再プログラムした。ウイリーコントロールもトラクションコントロールとは独立して別々に調整できるようになっている。ただ、ドイツのホンダはまだ最新型を輸入しておらず、今回の車両も修正前だったのが残念だ。

さて、サーキットの話に戻ろう。タイムは1分53秒1で、ホンダはBMWのちょうど2秒遅れとなってしまう。CBRはどこで後れを取ったのか。全セクションのデータ記録によると、タイムギャップは少しずつ増えており、これはもうパワー差以外の何物でもないという結果になった。ベンチテストによるCBRの実測値は188psで、BMWとはなんと26psもの差があり、全体で見ても一番不利な数値となっている。パワーがすべてではないが、十分なパンチ力がなければ最も洗練されているといってもいいサスペンションを十分に活かしきれていないのが残念。ただ、単独で走っている間は、初めに述べたように非常に楽しい。まとめるなら、CBRは限界領域ではなく中速域で非常に均等にそのパフォーマンスを提供してくれるマシンだと言えよう。

2008年型をベースに進化を続け、最新型では各種電子制御デバイスも採り入れてライバルと遜色ない内容に。さらにクラス最軽量を追求して大きな武器とした。SPは電サス装備。レースベース用にSP2もある。

最後に、この直4エンジンは非常に正確に動作する。しかも、排気フラップが約4000rpmで開くとき、まるで本物のレーシングマシンのようなクリアなサウンドを響かせる。実に素晴らしいが、正直なところとても音が大きい。ドイツ国内では公共の場所、そしておそらくサーキットでも大きすぎるくらいだ。しかし、少なくともここスペインのゲレンデでは、それを気にする必要はなかった。

S1000RRから2秒差となったが、走りの楽しさで独自の世界を切りひらいている。

CBR1000RR SPのディテール

このSPグレードでは、オーリンズの電子制御サスペンションが前後に採用されている。この足まわりの完成度が実に素晴らしく、思い通りのハンドリングを実現してくれた。

睨みのきいたLEDヘッドライトを持つフロントフェイス。左右の開口部面積を確保しながらコンパクト化も追求し、前面投影面積を低減。マスの集中化も図り軽量化も達成している。

ほとんど600ccクラスであるかのようにCBR1000RRのコクピットは、信じられないほど狭くてコンパクトに作られている。フルカラーTFTのメーターも実にレーシーな雰囲気だ。

丸山浩のミニインプレ:なんといっても車体の軽さがエキサイトメントを呼び込む

街乗りからツーリングまでストレスなくこなす万能性を持ちながら、いざスポーツをするときはクラストップの最軽量車体が俊敏でエキサイティングなハンドリングを提供する。パワーは最も控えめだが物足りなさ感はなく、低回転からかなり力強いトルクを発揮。トラコンやウイリーコントロールの介入度も絶妙。純粋にスポーツを楽しむのにオススメだ。

幅広いライダーに受け入れられる軽量ぶりと力強いトルクを評価。

YAMAHA YZF-R1M:『速さはパワーのみにあらず』を証明

今のBMWにとって最大の危険と言えるのはヤマハだ。昨年行ったテスト(ヤングマシン20 18年7月号掲載)でも、ラップタイムでR1Mは先代S1000RRに最も接近し、わずか0.4秒遅れの2番手タイムを記録した。また、エンジンとシャーシの点数評価では、先代S1000RRを数ポイント上回っていた。では、今回の評価は?

「スピードを感じないのに、本当に速いバイクだ」とテスター陣も舌を巻く。

「R1Mは本物のレーシングバイクに乗っているような気がする。スピードは感じないが、途中では本当に速いんだ」とテスター陣は答える。これはヤマハがホンダ同様、コーナーを貪欲に攻められるようにライダーに正確な前輪の感触を提供し、必要とあればラインを任意に調整することも可能としているためだ。この目的のために、R1Mはフルバンクした位置で驚くほど安定しており、足まわりが細かく動いてはいてもシャーシ本体は微動だにしない。ただ、ヤマハは足まわりを組み立てる方法を正確に知っていると思うだけに、ちょっとブレーキが鈍かったのが残念だ。

さて、テスター全員の意見が一致したのがエンジンだ。きちんとしたパンチ力、優れた燃料噴射、スムーズな特性、心地いい重低音サウンド。どれをとっても素晴らしい。もちろん、各気筒90度のクランクオフセットを持つクロスプレーンシャフトは操っていて本当に喜ばしい。コックピットのパワーセレクト(PWR)をポジション2に設定すると、4つのシリンダーは突然の全開入力でもスムーズで柔らかに加速してくれる。驚いたのは実測データで5000〜7500rpmまでのパワーとトルクが今回の中では最も出ていなかったということだ。しかし、ライダーには主観的にそれを感じさせない。なぜならこの領域の大部分がフルバンク状態にいるからだ。

かつての峠最速路線と完全に決別し、生粋のサーキットマシンとなったのが現行R1。R1Mは、オーリンズの電子制御サスペンションやカーボン外装などを備えた上級バージョンだ。

しかも、トラコンやウイリーコントロールといったアシストシステムが、あらゆる速度で優れた働きをする。特にウイリーコントロールは傑出しており、激しい加速でS1000RRのフロントが数cm浮いているような場面でも、R1Mは路面に触れるか触れないかほどしか姿勢を崩さない。

そして肝心のラップタイムはと言うと、これが驚いたことにR1Mと新S1000RRは、まったくの同タイムを記録した。実測パワーでは17psもの違いがあったが、それをものともしない完成度はさすが。今回もヤマハとBMWは容赦のない戦いを、我々の前に繰り広げて見せてくれた。

驚くべきことに17馬力差をものともせずにS1000RRと同じラップタイムを刻んだ。

YZF-R1Mのディテール

フロントフォークの上端にあるケーブルは、電子制御サスの駆動用。メニュー設定のためにハンドルには多数のスイッチとボタンがなければ、現代のスーパーバイクではもう通用しない。


前後のオーリンズサスは電子制御というだけでなく、リヤにTTX、フロントにNIXとレーシングレベルの高性能モデルを採用。サーキットファンの走りに応えてくれる。

ウイングレットのような特異な形状を持つ、独特のテールカウル。R1Mはシングルシートカバー上にデータロガー用のデバイスも持つ。

丸山浩のミニインプレ:これぞまさしくザ・レーシングマシン

跨った瞬間から「シロートお断り」感を隠そうともしないスパルタンなモデル。トラコンやオートシフターなど電子制御は車体に無駄な動きを一切起こさせず、ひたすらマシンを前に前にとタイムを削ることに専念させる実戦的な方向性を持つ。電子制御サスの設定メニューは2018年モデルから対話型で分かりやすくなっている。

一切の無駄なくタイムを削り取ることに専念させる様は、まさしくレーシングの世界だ。

テストはドイツの「PS」誌が敢行!

テストはドイツの「PS」誌が敢行! テストを行ったのは、最新スポーツバイクを中心に扱うドイツのナンバー1バイク月刊誌の「PS」。我々ヤングマシンのように実測テストで白黒つける妥協のない本格ガチンコテストが誌面作りのモットーで、今回もスーパースポーツ世界選手権ライダーの“ケリー”ことクリスチャン・ケルナーをメインテスターに熱い戦いを誌面で繰り広げた。

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ミヤケン

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天然のヤング脳を持つ伝説の元編集部員。現在は超フリーライター。