’17年にサイレンサーを変更するなどモデルチェンジを実施したVFR800Fに、新色のトリコロールが登場。新色のパールグレアホワイトの元ネタは、’86年に北米で販売されたVFR750Fインターセプターだ。今回は、長年ハイテクイメージで押してきたVFRシリーズの最新モデルの試乗を通し、スポーツツアラーとしての実力を再検証する。
(◯)手の内にある107ps トリコロールは好印象
’14年にラインナップに復帰して以来、5年ぶりに触れるVFR800Fはやけに重く感じた。事実、公称243kgはCBR1000RRより47㎏も重く、また近しい排気量で鉄フレームを採用するNC750Sと比べても25kgも上回る。そう、錯覚などではなく、実際に重いのだ。
まずはエンジンから。回転数に応じて作動バルブ数を切り換えるハイパーVTECを採用した781cc水冷90度V型4気筒は、排気量からイメージするほど下からトルクフルというわけではないが、スロットルの動きに対して忠実に、かつ滑らかに加速する。そして、動き始めてさえしまえば、先ほど感じた取り回しの重さはフッと消えるのだ。V4特有のドゥリュリュリュッという不等間隔爆発サウンドと、それに伴う脈動感はどこまでも体に心地良く、これを味わうためだけにVFRを手に入れたいと思うほど。スロットルを開け続けると、約6500rpmを境に2バルブから4バルブへと切り替わり、加速感が一段と増す。とはいえ、上乗せされるパワー感は、最新モデルの多くが採用するモード切り替えのスポーツとレインほどの差ではなく、ライダーを適度に高揚させる程度のもの。気が付けばレッドゾーンの始まる1万1750rpmまで引っ張っており、誰もが最高出力107psを扱いきれるようセッティングしたことに感心させられる。
ハンドリングは、直進時、旋回時ともリッタークラスのような安定性があり、主戦場がヨーロッパであることを実感させられる。’90年代後半にホンダが熱を上げていたピボットレスフレームの影響か、はたまた純粋に車重のせいかは不明だが、特に高速域になるほど倒し込みや切り返しが重くなり、シャキッとした反応が希薄に。だが、どんな操作でも寝かせてさえしまえばオンザレール感覚で向きを変え、旋回中のギャップもスムーズに吸収する。モノブロックキャリパーを採用したフロントブレーキは、この車重に対して十分以上の制動力を発揮し、またリヤは非常にコントローラブル。防風効果の高さもスポーツツアラーとして及第点だ。
(△)基本設計に懐かしさ。アップデートに期待
トラコンの作動感は1~2世代前という印象で、ウインカーのオートキャンセラーも反応はいまいち。クラッチはアシスト&スリッパーではないのでレバー操作が重く、V4ゆえに信号待ちではエンジン熱がライダーを襲う。今後の改善に期待。
(結論)こんな人におすすめ:このスタイルと色に惚れたら迷わず買いだ!
長年ハイテクイメージで押してきた歴代VFRだが、最新モデルの基本設計は’90年代後半にまで遡るわけで、走りからも懐かしさが感じられた。とはいえ、スポーツツアラーとしての実力は高く、ホンダV4の楽しさを再確認できた。
●写真:山内潤也
※取材協力:本田技研工業
※ヤングマシン2019年7月号掲載記事をベースに再構成
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