梅雨の電サスまつりだ!?

カワサキ ニンジャH2 SX SE+ vs SE 比較試乗[最新電サス兄弟の実力を探る! #01]

  • 2019/6/22

降りしきる雨のなか、カワサキが新投入した「電子制御サス」採用モデルの2台をチェック。驚異的な反応速度を持つ最新のショーワ製電サスは、スーパーチャージドツアラーおよびスーパースポーツ(後編にて紹介)という異色ジャンルとどんな化学反応を見せるのか!? ツーリングに連れ出して徹底チェックした!

絶対に転ばないライテク

テスター:丸山 浩(まるやま・ひろし)ご存じ本誌メインテスター。実は日本一周の経験があるツーリング好きで、ヤマハFJR1300のオーナーでもある。それだけに電サス仕様への興味は満々だ!

[スーチャーツアラー兄弟比較]Ninja H2 SX SE+ vs SE

KAWASAKI Ninja H2 SX SE+ 2019

【KAWASAKI Ninja H2 SX SE+ 2019】200㎰+スーチャーの圧巻ツアラーがH2 SX。’19で追加されたSE+は、豪華版のSEをベースに、電サスとブレンボ、スマホ接続機能などを与えた最高峰グレードだ。 ●価格:277万5600円 ●色:灰×黒

KAWASAKI Ninja H2 SX SE 2018

【KAWASAKI Ninja H2 SX SE 2018】STDより55mm高いハイスクリーンや、LEDコーナリングライト、双方向対応のクイックシフター、カラー液晶メーターなどを備える上級グレード。テスト車は’18モデルだ。 ●価格:239万7600円

KECS

【同社初のセミアクティブサスが「KECS」】ショーワとカワサキが共同開発した電サスがKECS。従来の電サスは、モーターなどを介して減衰力を制御するが、KECSはより速いソレノイドバルブを採用し、驚異の反応速度0.001秒を達成。ストロークセンサーの内蔵により制御の正確さと速さも実現した。

思わず乗り換えたくなる、SE+はそれほどの出来映え

路面状況に応じてリアルタイムに減衰力を変化させる魔法の脚こそ電子制御サスペンション。セミアクティブサスとも呼ばれ、従来はオーリンズやボッシュら海外勢の独壇場だった。だが’18年、ショーワが国産サスメーカー初の電サスを開発。これをZX-10Rに搭載した「SE」がカワサキ初の電サスモデルとして市販化された。そして’19年型で、スーパーチャージャー搭載のH2 SXにも最上級グレードとして電サス仕様の「SE+」が加わった。

電サスのKECS(カワサキエレクトロニックコントロールサスペンション)は、反応速度が従来の電サスより2倍以上速く、制御の正確性にも優れるとのこと。俄然期待が高まる中で試乗した。

まずはH2 SX SE+とSEを比較テストしてみた(続編記事でNinja ZX-10R SEに試乗)。結論から言えば……SE+は非常にツアラーとして優秀。私はFJR1300を普段の足として愛用しており、現在は4台目の’14年型が愛車だが、真剣に乗り換えを検討したくなるほどの出来だったのだ。

【HIGHWAY:衝撃吸収性に優れたSE+の快適性が際立つ!】ハイスクリーンや大型カウルによる防風性能が優秀な2台。100km/h巡航では、ギャップの吸収性に優れたSE+の乗り心地のよさが光る。さらに雨ではブレンボキャリパーによるブレーキの安心感を顕著に感じた。SEのサス設定は標準が硬め。本来はアウトバーンなどの超高速向きだ。

そもそもH2 SXは、スーチャーによる唯一無二のエンジンが魅力のツアラー。一般的な自然吸気直4より軽やかに、モーターのように回る洗練されたフィーリングが心地いい。中低速でマイルド、6000回転以降ではスーチャーが効いてパキーンと力強くなる。

万能ツアラーとしての完成度が1ステージ上へ

レスポンスが良好なのにギクシャク感のないエンジンに加え、車体も軽快だ。FJRはもちろん、同門のZX-14R、ハヤブサらライバルより常にハンドリングに軽さを伴う。足着き性も大型ツアラーにしてはイージーだ。

こうした素性は不変ながら、SEとSE+の乗り味はかなり異なる。サス設定が硬めのSEに対し、SE+は全般的にソフト。SE+には、「スポーツ」「ロード」「レイン」、任意設定の「ライダー」の4モードが用意され、3つの出力特性&トラコンと同時に、3種のサス設定も連動して一括変更される仕組みだ。

刻々と、劇的に変化する脚。

電サスの違和感は皆無で、反応速度や正確性に関しては公道レベルでは試しきれなかったが、実に自然。さらにモードを変更すると明確にサスの動きが変化する。最もソフトなレインはよく動き、乗り心地が非常にいい。中間のロードもSEより柔らかく、スポーツにしてやっとSEと同等の硬さに。途方もない性能のマシンだけに、SEでは硬いサスを標準にしたのだろう。

一方、SE+は電サスを用いることで、通常の走りはソフトでも、ブレーキングやコーナリング時では瞬時にダンパーを硬めてくれる。実際、ロードやレインモードで走っていても、サスが奥に入る場面ではノーズダイブを抑えてくれていることを実感できた。特にレインは、濡れた路面で安心感があるだけでなく、普段使いも優秀。ギャップをしっかり吸収し、のんびりと下道や高速をツーリングするのに最適だ。

【CITY:雨じゃなくても柔軟なレインモードが最適】サスが締まったSEは、特に街中で乗り心地が硬め。一方+はレインモードが街乗りに最適だ。適度にノーズダイブがあり、低い速度域では運動性も引き出しやすい。雨の安心感は絶大だが、普段使いもイイ。

SEは同様の場面でゴツゴツ感があり、姿勢変化にも乏しい。峠を攻めたり、超高速クルーズならSEの設定で問題ないが、そんなシーンはほぼない。その点、普段使いもハードな走りにも瞬時に対応できるSE+は、H2 SXが本来持っているポテンシャルを常に発揮可能。ネイキッド的な気軽さとツアラーとしての安定感を併せ持ち、まさに「2台持ち」の感覚と言えるだろう。

スマホとの連動機能で、出力とサス設定を任意に変更できるのも便利。自分なら、日常用にフルパワーと柔らかいサスの組み合わせをオススメしたい。メールや電話の着信をメーターパネルに表示する機能は、相手の名前を表示して欲しいところだが、インカムを使わない人には役立つはずだ。

加えてSE+専用のブレンボキャリパー「Stylema」も絶品だった。パッドによる部分も大きいのだろうが、SEは2次曲線的に制動力が立ち上がる印象。SE+は、レバーを握った分だけ利き、しかも常に最初のタッチが柔らかい。スーッと握ると奥でギューッと止まり、それ以上制動力が立ち上がらない。ノーマルは奥でギャーン、ンッとなるため、コントロールする手間があるのだが、SE+は実に使い勝手がいい。

【WINDING ROAD:激攻めもマッタリも許容、自由度が高いSE+】峠では、2台とも車重以上に軽快な旋回性を示し、スーパースポーツ的な走りが楽しめる。激しく攻めるならSEの標準設定でOK。SE+はスポーツモードがお勧め。ただしロードかレインでマッタリ流して、ペースを上げても瞬時にダンパーを効かせてくれるので問題ナシ。ブレンボのコントロール性も絶妙だ。

優れた素性に電サスを追加したことでオールラウンダーとしての実力をより高めたSE+。より豪華に、付加価値が高まり、ややキャラが被り気味だったZX-14Rとの差別化も進んだと言えよう。H2 SXには3グレードあるが、私ならSE+の一択。SEから約38万円高だが、その価値は十分ある。

ただし、ここまで豪華ならスクリーンの調整機構は欲しいところ。また、サスのイニシャルをボタン一つで変更でき、車高を増減できる(詳細は後述)が、シート高の電動調整機構も開発してくれないかな、と思った。シートの厚みを変更できれば、ヒザの曲がりが緩やかになり、ロングランがよりラクになる。こんな贅沢を考えてしまうのもSE+の完成度が素晴らしかったからこそ。試乗中にFJRオーナーとして羨ましくなる場面が何度もあった。……SE+は次の愛車候補筆頭である。

【TANDEM:電動プリロードで軽快な走りをキープ】SE+はリヤのプリロード調整も電動式。ソロの設定ではハンドリングが重くなるが、2人乗り用のモード(ソロ+手荷物)を選択すれば、沈み込みが減り、軽快な操縦性を保てる。後席は高めで、ライダーとの一体感はやや希薄。グリップはサイドにあり、形状も持ちやすい。

RIDING POSITION(身長168cm/体重61kg)

やや前傾し、スポーティさとラクさを両立したライポジ。2台ともシート高は820mmながら、SE+はプリロードが「ソロ」の状態でSEより約1cmカカトが上がる。それでも、足を真っ直ぐ降ろせるため、しっかり両足指の根本が接地する。この車格のツアラーにしては実に良好な足着き性だ。

[ライター 沼尾宏明]2nd OPINION

身近なのは断然SE+のほうだ。(沼尾宏明)

SEは街中レベルでは、しっかり荷重をかけないと曲がってくれないので若干気を遣う。片やSE+は、一般ライダーの私でもモード変更でサスの動きがしなやかに変化するのを体感できた。扱いやすさや気軽さは断然SE+だ。取材日は終始雨だったが、SE+のレインモードが実に心強かった!

マシン解説:Ninja H2 SX SE+

【豪華SEをベースに最上級の上を狙った】バランス型スーパーチャジャーをはじめ、鋼管トレリスフレームなどの基本構成は全車同一。SE+は、上級版のSEをベースに電サスを追加し、車重は2kg増となる。

外観上の違いは、サスとキャリパー、カラーリング程度だ。

初のスマホ連動は便利!!

スマホに専用アプリを入れ、車両のメニューモードを操作するとメーターにパスキーが表示。これをスマホに入力すれば接続完了だ。走行中はアプリONで常時接続される。

ユニット本体と基本画面×2種が選べるのは同じだが、液晶の表示内容は異なる。SEはパワーモード×3とトラコン×3段階+オフを表示。SE+はスポーツ、ロード、レイン、ライダーのモードを大きく示し、メールと電話の着信も表示する。中央やや左にあるブルートゥースのマークもSE+のみだ。

プリロード変更で足着き性も変化

SE+は左手元スイッチの「プリロード」で、リヤの初期荷重を3段階から選べる。ソロの設定でSEよりカカトが1cmほど高く、モード変更で約1㎝ずつ上昇した。各設定は±5段階に微調整が可能だ。

右手元のモード決定ボタンは2台とも同じ。左手のスイッチ左側がSE+ではモード選択とプリロード変更ボタンとなる。

右手のモードスイッチ長押しで、パワーやサスセッティングの組み合わせを任意に選べるライダーモードの設定画面に。電サスは伸/圧側の±5段階調整が可能だ。

国産では珍しいスマホ接続機能。設定が一段とラクチンだ

電サスは、リアルタイムの可変制御に加え、前述のとおりリヤのプリロード(初期荷重)もボタン一つで変更可能。SEも手動で調整できるが、SE+は「ソロ」「ソロ+荷物」「タンデム+荷物」の3モードがあらかじめ設定され、走行中も変更OKなのがうれしい。

カワサキ初のブルートゥースによるスマホ接続機能にも注目だ。これも外国車では採用例が多いが、国産車では導入が進んでいないアイテムの一つ。SE+では、専用の無料スマホアプリ「RIDEOLOGY THE APP」を使うことで、各モードや電サスの詳細な設定が可能。車両のスイッチとメーターでも設定できるが、タッチパネルのスマホの方がより操作が簡単だ。また、走行ルートのほか、最大バンク角、車速、水温、燃費などが記録され、ツーリング後に閲覧可能。H2 SXのある生活が一段と楽しくなるはずだ。

スーチャーは不変もバッジは異なる

元祖スーチャーのH2より圧縮比を高め、扱いやすくも強烈な加速を両立した998cc直4ユニットはH2 SXシリーズ共通。ただしチャージャーのエンブレムは異なり、SE+の方が凝ったデザインだ。

SE+の電サスは、’18ZX-10R SEのシステムを再設定し、ショーワ製φ43㎜倒立フォークに搭載。SEは手動のフル調整式で径も同一だ。+はトップキャップから配線が伸び、左側にKECSのロゴを配置。さらにブレンボ公道用キャリパーで最新&最上級のStylemaを採用。ダイレクト感に優れ、軽量かつ冷却性にも優れる。

リヤは上級サスに変更し、セミアクティブ化

SE+のリヤサスは、優れたトラクションが自慢のショーワ製BFRC lite。これに電制ユニットを組み合わせる。リヤの片押し2ピストンキャリパーはSE、SE+とも共通。ブレーキホースはステンメッシュだ。

SEはKYB製のフル調整式で、別体プリロードアジャスターを装備。

小キズ修復ペイントも採用

浅い傷を自己修復し、美麗な外観を維持する特殊コーティング塗装=ハイリーデュラブルペイントをSE/SE+に採用。タンクと下部カバーに施される。キズのテストはさすがにできなかったが、高級マシンに相応しい装備だ。

3グレードが揃い踏み!

STDは200万円を切る価格でスーチャーを堪能できるのが魅力。SEは快適なツアラー装備を満載。SE+はより豪華だ。3車とも’19で国内仕様が設定され、ETC2.0車載器を全車標準装備する。

【Ninja H2 SX SE+】●価格:277万5600円 ●色:灰×黒

【Ninja H2 SX SE+】●価格:277万5600円 ●色:灰×黒

【Ninja H2 SX SE+】●価格:239万7600円 ●色:緑×黒

【Ninja H2 SX SE+】●価格:239万7600円 ●色:緑×黒

【Ninja H2 SX】●価格:199万8000円 ●色:灰×艶消し灰

【Ninja H2 SX】●価格:199万8000円 ●色:灰×艶消し灰

Specification■全長2135 全幅775 全高1260[1205] シート高820 軸距1480(各mm) 車重262【260】[256]kg(装備)■水冷4スト並列4気筒 DOHC4バルブ998cc 最高出力200ps/11000rpm 最大トルク14.0kg-m/9500rpm 燃料タンク容量19L■ブレーキF=Wディスク R=ディスク■タイヤサイズF=120/70ZR17 R=190/55ZR17 ※【 】内はSE、[ ]内はSTD

グレード別 装備比較

KAWASAKI Ninja H2 SX シリーズ・装備比較表

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丸山 浩

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「全国2000万人のヤングマシン読者諸君!」の呼びかけでおなじみのヤングマシン誌メインテスター。レーシングライダー出身だがユーザーである一般ライダーの目線を忘れない。