~ニライカナイへ続く道~

【バイクで巡るニッポン絶景道】海と陸、島人の原風景 石垣市農道[沖縄県]#モトツー

『バイクで巡るニッポン絶景道』シリーズは、ヤングマシンの姉妹誌であるモトツーリング編集長カン吉(神田英俊)が案内人。第38回は、沖縄県石垣島での、レンタルバイクを利用した絶景トリップだ。地元で“ニライカナイへ続く道”と呼ばれる一直線の農道に心動かされる。

TEXT:Hidetoshi KANDA

守護祖霊達の故郷へ向け一直線!

沖縄県の石垣島といえば、憧れの南国リゾートとして大定番。しかし観光地としてのイメージが強く、ツーリングで走りたい絶景ロードとして名前が挙がることは少ないだろう。だが、絶景に囲まれたこの島をバイクで走らないのは、旅ライダーとして大変もったいない。

とは言え、愛車を石垣島へ持参するのはハードルが高い。そこで、おすすめなのがレンタルバイクでツーリングするという手法だ。比較的広い石垣島とは言え、島内巡りには50cc~125ccでも十分。料金も1日3000円程度とお手頃価格なのだ。

そんな石垣島の定番と言えば、島を周遊する国道390号線や川平湾周辺のルート。ガイドブックに載っているのはもちろん、WEBでも簡単に検索可能で、まずは走っておきたいルートなのは間違いない。しかし、モトツーリングとして紹介したいのは、石垣島のイメージをまさに絵に描いたような秘密の絶景農道だ。

彼方にはアクアブルーの海とサンゴ礁、沿線には微風に揺れるサトウキビ畑とハイビスカス……。南国の楽園、石垣島のイメージをそのまま具現化したようなロケーションは、衝撃的なほどに感動の光景だ。その道とは、地元で“ニライカナイへ続く道”と呼ばれている一直線の農道である。しかも、観光客は皆無。近年は知られつつあるものの、あまりにも穴場すぎて未だWEBでの紹介も少ない。

“ニライカナイ”とは八重山諸島をはじめ、沖縄や奄美諸島各地で伝承されている概念をのことだ。遥か東の果ての海にある異界と言われており、生命の源の地と考えられている。また、島人達の魂はニライカナイより来て、死後ニライカナイに去ると考えられており、守護神・祖霊神が生まれる場所とも伝えられている。この道はジェットコースターのようにアップダウンをしつつ、遥か東の海上までを真っすぐ望む道。まさに、ニライカナイへのメインストリートである。

島人の伝承とそのロケーション。石垣島の世界観を凝縮したようなその光景は“絶景”という言葉すらチープに感じる程、あまりにも神秘的な風景。島人の世界観と伝承が凝縮した、石垣島ならではの原風景だ。南国の潮風と共に走るバイクだからこそ、その感動は一層大きなものになるに違いない。

島北部の県道79号線より望む川平湾。通称“裏川平湾”と呼ばれており、観光客はかなり少なめ。やや遠望的な雰囲気だが、本土では味わえない絶景が堪能できる。
川平湾を望む間道。島の細道へ気軽に入れるのもバイク旅ならではのメリットだ。レンタルバイクは普段使いのモデルが多いが、だからこそ島の風景に溶け込む自然さがある。
こちらも穴場絶景ロード。島北部の東西を連絡する裏道、野底林道だ。途中の展望台から島を一望! サンゴ礁と青い海を絶好の展望で堪能できるぞ。
石垣島は八重山諸島観光のハブとなる中心地だ。周辺の離島へは主に高速船で移動。石垣本島だけでなく、離島巡りも八重山観光の醍醐味なのだ。
路面の真っ白な砂が印象的な竹富島。集落中心部は特長的な古民家が立ち並び、琉球王朝を思わせる異国情緒溢れた風景が堪能できる。
日本最南端の有人島、波照間島。台湾まで240kmという近さだ。年に数回、台湾の新高山が波照間島から目視できる。周辺はサンゴ礁。日本とは思えない風景が広がる。
波照間島では定番のビーチ、ニシ浜。リーフに囲まれた穏やかな天然のプールだ。水中に潜ると、波に合わせてサンゴや貝殻が奏でるメロディーが聞こえる。

ロード情報

交通量:交通量の多い国道390号線の枝道にもかかわらず、農作業車以外の通行はほとんどない。しかし、近年は絶景ポイントとして知られはじめており、観光客の路上駐車には注意が必要だ。

路面:幅も広く浮き砂もないため、大変良好。海を遠望するとジェットコースターのように凹凸した道路線形がとても美しい。一直線ながら農道のため、速度にはくれぐれも気を付けたい。

ニライカナイへ続く道
秘境感★
天空感★★★
潮風感★★★★
爽快感★★★★
根性感★
開放感★★★

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