ネオクラシックモデルの美点をきっちり引き出す

ダンロップ TT100GP ラジアルの試乗インプレッション【荒れた路面も柔軟に対応】

  • 2019/4/29

ネオクラシックモデルが人気となってきたことから、タイヤにもクラシカルなパターンを求めるユーザーが増えてきた。そこでダンロップは、かつてのレーシングパターンを用いることで人気のバイアスタイヤ、TT100GPにラジアル版を加えることに。見た目だけでなく、扱いやすさも追求したTT100GPラジアルをテストする。

TEXT:Tomohiko NAKAMURA PHOTO:Tomonobu FUCHIMOTO

フレンドリーな特性で常用域が楽しくなる

試乗車と対面して驚いたのは、マシン全体の雰囲気が想像以上に変わっていることだった。昔風の縦溝が刻まれたタイヤを履くZ900RSカフェは、STDよりクラシック度が5割増し? という印象なのである。ここまで雰囲気が変わるなら、ドレスアップ用として選ぶ人がいても不思議ではない。

もっとも、TT100GPラジアルは見た目だけを重視したタイヤではなかった。僕がこの製品で最初に感心したのは、素直で軽快な応答性だが、上質な乗り心地もなかなかの好感触。本来は細身のバイアス用として設計されたトレッドパターンを、形を変えて現代の太いラジアルに導入したにも関わらず、不安や違和感がまったくないという事実も、特筆すべきことだろう。

【TT100GP RADIAL】サイズラインナップは、フロント=120/70ZR17/リヤ=150/70R17、180/55ZR17

とはいえ、そういった要素以上に、僕がこのタイヤで興味を惹かれたのは、常識的なペースで普通に走ったときのフレンドリーさだった。以下はあくまでも私見だが、近年のネオクラシックバイクは、足まわりにバランスの悪さやコストダウンの気配を感じることが少なくない。その原因は各車各様で、Z900RS/カフェの場合は、倒立フォークの剛性の高さが、常用域での素っ気なさにつながっているんじゃないか、と僕は感じていたのだが……。

ムキになって飛ばさなくてもいいキャラクターには好感が持てる。

TT100GPラジアルを履いたZ900RSカフェは、常用域での操作に対する反応が柔軟かつ明確で、接地感の変化がわかりやすいのである。ムキになって飛ばさなくても、操る手応えが十分に得られるから、日本によくあるチマチマした荒れた路面の峠道がすごく楽しい。言ってみればこのタイヤは、現代のラジアルとしての剛性を確保しながらも、旧車的、あるいはバイアス的と言いたくなる美点を備えているのだ。と言っても、サーキットのような良路を走る場合は、STDのGPR-300に軍配が上がりそうだけれど、ストリートをメインに考えるなら、TT100GPラジアルの守備範囲の広さは相当に魅力的だと思う。

外観に加えて、乗り味もネオクラシック用として作り込まれている。それがTT100GPラジアルに対する僕の印象だ。おそらくこの特性なら、CB1100RSやXSR700/900、トライアンフのバーチカルツインなどでも、好感触が得られるだろう。

’69年に開催されたマン島TTで量産車初のオーバー100mphを達成

’70~80年代前半に、スポーツ&レース用ハイグリップタイヤとして世界中で大人気を獲得し、大幅刷新を受けて復活した’96年以降は、旧車ユーザーから絶大な支持を集めて来たTT100/GP。その製品名の由来は、’69年のマン島TTプロダクション750ccクラスで、ダンロップタイヤを履くマルコム・アップヒル+トライアンフが、市販車で初めて平均速度100mphの壁を破ったこと。上級仕様となるGPが登場したのは’80年代から。

スラクストン仕様と呼ばれたボンネビルレーサーを駆るマルコム・アップヒル。100.37mph の平均時速は、当時の量産車としては驚異の記録だった。

Point1. その伝説のTT100GPをラジアル化!

バイアスのTT100GP は、伝統のパターンを継承。すべての溝は深く、ショルダーブロックは小さい。前2本、後ろ1本のジグザグの溝は、全周でほぼ同じ太さだった。そんな昔ながらの雰囲気を維持しているけれど、TT100GPラジアルでは、ラジアル化に伴いトレッドパターンを全面刷新。図版の文字を見ればわかるように、高剛性化には相当な配慮が行われている。そのかいあって、ブレーキングやフルバンク時の頼りなさは皆無だった。

イメージを残しつつトレッド剛性を高めているのが、TT100GPラジアルの特徴となっている。

バイアスのパターンをそのまま流用しようとすると、以下の問題が起こるのだ。【左】トレッド面を縦に分断する太い溝は、部位による接地面圧の差を生み出す。その差は偏磨耗の原因になりやすい。【中央】トレッドに深い溝が存在すると、車体を傾けようとした際にゴムが大きく変形し、ロール特性が悪く感じられる。【右】旋回時の荷重で変形しやすい小さなショルダーブロックでは、エッジの接地感が希薄になり、腰くだけ感が発生。

Point2. ラジアルで培った技術を転用

クラシックな雰囲気を構築するため、過去に前例がない作業が必要になったトレッドパターンとは異なり、コンパウンドには既存のラジアルで培った技術を転用。他製品で実績を積んだ微粒子シリカは、ウェット路面や低温時のグリップ確保に大いに貢献。ポリマー/カーボン/シリカの配合は、TT100GPラジアル用としての専用チューニングが行われている。

タイヤの主役は天然/合成ゴムで構成されるヒモ状のポリマーだが、カーボンやシリカの配合で、特性は大きく変わる。充填剤であるシリカを微粒子化(右上)することで、ゴムは柔らかくなり、それはもちろん、路面追従性の向上につながる。

Point3. GPR-300に通じる構成

【左】剛性向上と軽快感を両立するべく、Z900RS/カフェの純正タイヤであるGPR-300と同様に、リヤにはHES-JLB /APEXレス構造を導入。【右】フロントは2CUTベルト/ 高ハイトAPEX構造。開発時はパターン剛性とハンドリグのレスポンスの関係について、入念な検討が行われた。

TT100GP(バイアス)には新サイズが登場!

バイアスのTT100GPには、今春から前輪用の100/90-18が新登場。おそらくこのサイズは、トライアンフ・ボンネビル/スピードツインを意識した設定だ。

これでフロント/リヤとも8インチ~19インチで、それぞれ15種類ずつのサイズラインナップとなった。

TT100GP(バイアス)サイズラインナップ

フロント:
3.50-8(チューブ)
110/90-17(チューブレス)
120/80-17(チューブ/チューブレス)
3.00-18(チューブ/チューブレス)
3.50-18(チューブレス)
4.00-18(チューブレス)
80/90H18(チューブ)
90/90-18(チューブレス)
90/100-18(チューブ)
100/90-18(チューブレス)※
110/90-18(チューブ/チューブレス)
100/90-19(チューブレス)
 ※チューブタイプとしても使用可

リヤ:
3.50-8(チューブ)
110/90-17(チューブレス)
120/80-17(チューブ/チューブレス)
3.00-18(チューブ/チューブレス)
3.50-18(チューブレス)
4.00-18(チューブレス)
80/90H18(チューブ)
90/90-18(チューブレス)
90/100-18(チューブ)
110/90-18(チューブ/チューブレス)
130/80-18(チューブ)
100/90-19(チューブレス)

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帰ってきたネイティブ足立区民。ヤングマシン、姉妹誌ビッグマシンで17年を過ごしたのち旅に出ていた編集部員だ。見かけほど悪い子じゃあないんだぜ。
■1974年生まれ
■愛車:MOTOGUZZI V7 SPECIAL(2012)