街乗りから林道トレッキングまでこなす”マウンテントレール”として、’85年から続く伝統の長寿モデル。平成28年排ガス規制により’17年8月に生産終了となったが、第3次排ガス規制に適合する改良を実施、約1年の時を経て’18年8月に復活を遂げた。ここでは新旧モデルの違いを比較する。
’18モデルは車重3kgアップ。外観の差異はわずか
最小回転半径1.9mを達成するため、ハンドル切れ角は左右それぞれ51度に設定。メーターは軽量な液晶タイプで、速度と時計、ツイントリップというシンプルな機能となっている。
’18年モデルと旧モデルの違いを見比べる
空冷SOHC2バルブ単気筒はFIがO2フィードバック制御となり、第3次排ガス規制をクリア。さらに蒸発ガソリンの外気への排出を低減するため、クランクケース左前方にキャニスター(黒い箱)を増設(上:旧モデル/下:’18モデル)。
排気系はO2センサーを追加したほか、触媒の仕様を変更。サイレンサー出口の内径は実測で従来のφ17mmからφ20mmへ拡大。音質も変化した(上:旧モデル/下:’18モデル)。
給油口の内部に追加されたプレートは、ガソリンの上面の目安になるもの。これによってタンク容量は従来の10Lから9.3Lへと微減(上:旧モデル/下:’18モデル)。
(◯)諸元上では2psアップ。排気音が力強くなった
’85年に223ccでデビュー。’89年にセルスターターを採用し、’93年にはリヤブレーキがドラムからディスクに、’97年にはリヤタイヤがチューブレス化された。’05年のフルモデルチェンジで排気量を249ccに拡大するとともにフューエルインジェクションを採用。合わせてトランスミッションは6速から5速となった。そんな30年以上もの歴史を持つセローが、1年の休止期間を経てラインナップに復活した。新排ガス規制をクリアするため02フィードバック制御を採用し、さらに蒸発ガソリンの外気への排出を低減するキャニスターを増設。外観はリヤフェンダーのロング化とLEDテールランプの採用ぐらいで、セローらしさはそのまま継承されている。
伝統の空冷SOHC2バルブ単気筒は、kW表記では従来と同じ14kWのままだが、小数点以下の四捨五入によりps表記では18psから20psへと微増している。サイレンサーの出口径が拡大されたこともあってか、従来型よりも粒立った排気音となり、いかにも力強そうだ。ただ、実際に従来型と乗り比べてみるとパワー差は微少といったところ。100km/h巡航を余裕でこなす一方で、トレールでは轍を崩さないようにていねいに走ることも可能。新排ガス規制をパスしながら、最も大切な扱いやすさを維持してきたのはさすがだ。
ハンドリングについても大きな変更はない。フロントのサスストロークは225mmも確保されており、未舗装路ではトライアル的な走りが楽しめる一方、オンロードでは大きなピッチングを生かしてタイトに旋回することも可能だ。バンク主体で向きを変えるタイプで、峠道でペースを上げるとステップが接地することも。とはいえ、タイヤが多少流れても車体が軽いのでコントロールしやすく、下りのつづら折りではスーパースポーツ顔負けの速さを見せる。
ただし、前後のブレーキはコントローラブルではあるものの絶対的な制動力は低く、また容量も少ないため、調子に乗っているとフェードさせてしまうことも。同様のことが荷物を多く積んだ際やタンデム時にも当てはまるのでご注意あれ。
(△)価格は1割以上アップ。これは仕方なしか…
スポーティになったリヤ回りは好みが分かれそうだが、個人的にはテールランプのLED化により被視認性が向上したことを歓迎したい。なお、価格は5万7240円アップしており、上昇率は1割以上。せめて2〜3万円なら納得の範疇だが。
【結論】さすがは元祖。何はともあれ再登場に感謝
昭和の時代にマウンテントレールという分野を創造し、ライバルが登場しては消えていく中、今もキープコンセプトでファンを魅了し続ける。今回、新旧をじっくり試乗し、変わらぬ魅力と楽しさをあらためて実感。これぞ名車!
●写真: 飛澤 慎
※取材協力:ヤマハ発動機
※ヤングマシン2019年1月号掲載記事をベースに再構成
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