BMWのスモールアドベンチャー「G310GS」は2017年11月の発売以降、普通二輪免許でも乗れるGSとして人気だ。その魅力にあらためて迫る。
(○)操安性とライポジでGSワールドを演出
R1200GSに代表されるシリーズ共通のエッセンスをミニマムなボディに凝縮した、BMWのG310GS。313㏄なので排気量的には軽二輪に近いが、見た目のボリューム感は兄貴分のF700GSに迫るほどで、シート高は同車のスタンダードを70mmも上回る。リヤシートの位置が高いので乗り降りはやや苦労するが、とはいえライポジに関してはユーザーフレンドリーだ。座面の広いシートと入力しやすい形状のハンドル、ヒザの曲がりが少なくなるステップの位置など、これら3点のポジショニングは限りなく最上位モデルのR1200GSに近い。
後傾シリンダー&後方排気レイアウトに注目が集まる水冷DOHC4バルブ単気筒は、最高出力を9500rpmで発生する。かなりの高回転型なので、低回転域でのスナッチ(かつてのBMWの単気筒、F650シリーズは低速でギクシャクしやすかった)を心配したが、それは杞憂に終わった。シングル特有の一発ごとに蹴り出される感覚は薄いものの、低回転域からスムーズに吹け上がり、およそ3000〜8000 rpmが実用域と言えるほどにフレキシブルだ。特に感心したのは巡航性能で、それなりにピックアップのいいエンジンでありながら、一定速度で走っている際にギクシャクせず、淡々と距離を稼げる。このあたりはさすがビーエムだ。
ハンドリングもいい。ホイールトラベル量が前後とも180mmと長いため、減速時に発生するピッチングが大きく、大径なフロント19インチホイールと合わせて、大らかに向きを変えていく。排気量が小さいのでスロットルのオンオフだけであまりピッチングは発生しないが、これはテレレバーサスを採用するR1200 GSにも通じるところがあり、巡航時の疲労軽減に役立っている。
スクリーンは小さめだが、下半身も含めて防風効果は高く、また乗り心地も非常にいい。ブレーキは前後ともバイブレ製のキャリパーを採用しており、初期からコントローラブルだ。なお、標準装備のABSはボタン操作でキャンセル可能。こんなところにもGSらしさが息づく。
(△)微振動が意外と多くミラーが見えづらい
細かな振動がハンドルやステップに発生し、特に高速巡航時はミラーが見えづらくなる。それと極低回転域でのトルクが薄く、ダートを流しているときに何度かエンストしそうになったので、その点は注意を。
こんな人におすすめ:BMWの哲学をこの車体に凝縮。万能性は高い
アドベンチャーの祖であるBMW のR-GS。憧れているけれども大きさや重さ、免許などがネックとなっていた人にとっては、まさに福音となるモデルだ。排気量は小さくともGS ワールドが構築されており、BMW の開発力に感心しきり。
【BMW G310GS】
●価格:68万2600円 ●色:赤、黒、白
主要諸元 ■全長2075 全幅880 全高1230 軸距1420 シート高835(各mm) 車重170kg(装備) ■水冷4スト単気筒DOHC4バルブ 313cc 34ps/9500rpm 2.9kg-m/7500rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量11L ■ブレーキF=ディスク R=ディスク ■タイヤF =110/80R19R=150/70R17
●写真:飛澤 慎
●取材協力:BMW Motorrad 0120-269-437(BMWカスタマー・インタラクション・センター) http://www.bmw-motorrad.jp/
※ヤングマシン2018年12月号掲載記事をベースに再構成
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