マシン・オブ・ザ・イヤー2018
G310Rベースのオリジナルマシンを造る

G310Rのカスタム仕様、フルカウルのG310SSがついに完成!

本誌が描いた妄想CGが現実へ──。BMW・G310Rのフルカウル仕様を製作するプロジェクトが大きく前進し、ついにプロトタイプが完成した。 ※ヤングマシン2019年1月号(2018年11月24日発売)より

まるで”純正モデル?!”な見事な仕上がり

パッと見て「S1000RR?」と勘違いした人も多いのではないだろうか? ──ベース車は紛うことなきネイキッドのG310R。本誌プロジェクトから生まれた夢のマシンだ。このプロジェクトは、ヤングマシンがCGで考案したフルカウル仕様を、外装パーツで有名なエーテックが製作するというコラボ企画。モチーフはBMWが誇る最強スーパースポーツ=S1000RRの「ベビー版」に決定。大人のライトウェイスポーツをコンセプトに本誌でデザインを重ねた。

YMの案を元にエーテックが実車合わせで開発を進め、完成したプロトタイプがコチラとなる。その圧倒的なクオリティに本誌も驚いた次第──。全身を豪奢なドライカーボンカウルで包み、センターラムエアダクトの顔はまさにS1000RRだ。そしてテールにはセンターアップマフラー(試作品)。S1000に加え、もう一つのモチーフであるモト3レーサー風の装備で、「後方排気シングル」を強調している。

ここまでフォルムが激変しながら、パーツは基本的に全てボルトオン。ノーマルに戻せるというからエーテック恐るべし、である……。今後はもて耐への参戦も視野に入れ、ストリート版も開発予定だ。

【A-TECH & YOUNGMACHINE G310SS(左)プロトタイプ】ネイキッドのG310R(右)をベースに、カーボンエアロパーツで全身を武装したオリジナルマシンが「G310SS」。全くの別物に生まれ変わった。黒で統一したドライカーボンの「ブラックダイヤモンド」はエーテックの看板ブランド。S1000RRと同様、サイドパネルは左右非対称だ。

マフラーと尖ったテールが凛々しいリヤビューを演出。これらはシングルで最高峰のモト3レーサー=NSF250RWがイメージソースだ。

前後ビューはベース車と同様、極めてスリム。伏せると体が隠れるようスクリーンは高さを持たせてある。ヘッドライトはステッカー。センターマフラーもスリムさに貢献する。

ライダー(身長172cm&体重65kg)がまたがると、実はこんなにミニマム。セパハンとバックステップで、スポーツできる戦闘的なライポジとなる。

BMWの旗艦SSであるS1000RR(左)をコンパクト&スリム化するのが基本コンセプトのカスタム。各部に様々なバイクのイイとこ取りもしている。車重は兄貴分に対し、約50㎏も軽量! ※写真:安井宏充

【YOUNGMACHINE G310SS CG】本誌初出は’15年10月号のCG。基本線を変えずに約3年の月日を経てついに形になった。

ラムエア&後方排気を最大限に生かす

G310Rは、通常のマシンとは逆の「前方吸気&後方排気」というレーシーな車体レイアウトを持つ。「この素性を活かしたスーパースポーツを造りたい」と妄想したのが本プロジェクトの発端だ。そこで導入したのが、前方吸気のメリットを最大限に発揮するラムエア過給と、後方排気を強調するセンターアップマフラーだ。

製作期間は約2か月。通常は3か月程かかるが、急ピッチで開発された。元がネイキッドだけに装着用のステーをゼロから造る必要があり、苦労したのは「全部」(!)。特にタンク回りの造形に苦心したと言う。現状はレーサーだが、公道走行を目指し、今後は灯火類も装着。可能な限り小型のLEDで統一する予定だ。

気になる市販版は、FRP製の外装セット(フルカウル、スクリーン、タンクカバー、シート台座&ラバーベース、各種ステー込み)が予価15万円。単品販売も行う予定だ。マフラーは、現状では走行すると後輪に干渉するため、様々な方法を模索中。スタイル的にセンター出しを推したいが、ダウン化やショート化を含め、検討している。ツイン全盛のミドルSSに、シングルのG310SSが殴り込みだ!

前から吸って後ろに排気するエンジンを生かしたラムエア&マフラーセンター出しのレイアウト。バッテリーは軽量で高性能なイタリアALIANT製を使用している。

【右上】S1000RRと同様のセンターラムエアダクトを忠実に再現。【左上】吸気ダクトは右サイドを経由して、エアボックスに接続。【右下】ワンオフのチタンエキパイは、モノショックを避けてトグロを巻く。ヒートガードを装備し、こちらもカーボン製となる。【左下】楕円形状のチタン製サイレンサーも一品モノ。

スポーティなセパハンなれどハンドル切れ角は十分確保できた

ベース車のG310Rはハンドルポスト+バーハンを採用するが、ポストを外し、Fフォークにセパレートハンドルをマウントした。純正のインナータンクは横に張った独特な形状。セパハンは厳しいが、変更すると価格が上昇するので、純正を活かす形でタンクカバーを製作した。ハンドル切れ角はストッパーで調整したが、公道で楽しむSSとして常識的な範囲の切れ角を確保する。

インナータンクが容量を稼ぐためか前方左右に張り出しており、セパハンとのクリアランスが確保できるか危惧されたが、絶妙な仕上がりとなった。

タンクカバーは、ベース車のカバーを外して被せるだけ。タンクサイドカバーはシート下まで伸び、まるでカーボンフレームに見える?

テールカウルはストッパー付きで、丸々換装。シートはラバーベースを交換し、専用の台座で固定する。スポンジシートも追加した。

ノーマルもエアロタイプのフェンダーだが、より深くタイヤを覆う空力重視の設計とした。倒立フォークとラジアルキャリパーに馴染む。

リヤのインナーフェンダーとスイングアームカバーは別体成型。スイングアームカバーは純正リヤフェンダーにも装着可能。

テール横には空力パーツとして機能するウイングが。同社はカワサキワークスの外装などを手掛けたこともあり、風洞テストの経験も豊富だ。

専用のバックステップキットを新開発。純正のピボットカバーからステップを分離し、スポーツできる位置に設定した。

左右のケースカバーもカーボン製で、BMWのロゴを白抜きで強調した。独特な後傾エンジンを一際目立たせる。

飛び石を防ぐラジエターコアガードを装備。薄いステンレスを特殊加工でメッシュ状に仕上げた。エーテックのロゴも美麗。

後方排気といえばエーテック?!

マシンを製作したエーテックは、外装パーツの名門ブランドだが、実は後方排気と縁が深い。エーテックの宮崎明人社長は、元ダイシンのスタッフ。ダイシンと言えば’80年代、後方排気に情熱を注いだプライベーターで、鈴鹿8耐にFZ750の後方排気カスタムで参戦したり、’87年にはヤマハに先駆けて後方排気TZR250を造り上げた歴史もある。当時、宮崎社長はダイシンでカウルを製作しつつライダーとしても開発に携わっていた。

これぞ本誌がエーテックに製作を依頼した理由の一つ。言わば後方排気のマエストロが、時代を超えて甦った後方排気ネイキッドをスーパースポーツのG310SSに仕立てたのである。

ダイシンは、’89TZR250(3MA)に先駆け、1987年に初代TZR250(1KT)を後方排気にカスタム!

【左】TZR250後方排気改とライダーが宮崎さん、右は大真工業の谷口さん(故人)。【右】ドライカーボンを成型するオートクレーブ窯の前に立つ宮崎明人社長(左)と息子さんでスタッフの真也さん。今回は社長が中心になってG310SSを造り上げた。

撮影:鶴見健
取材協力:A-TECH(エーテック)

ヌマ王

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ヤングマシン編集部出身の敏腕フリーライター。特にバイクの社会&時事ネタに詳しく、20年以上にわたって特ダネを追い続けている。趣味はユーラシア大陸横断。

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