穏やかに走れば緩やかに反応するのがヤマハ

ヤマハのバイクに乗って感じること5選! ライダーの高揚感とシンクロするように表情を変える

世界で生産されるバイクの1割弱を生産し、国内ではホンダに次ぐバイクメーカーとして認知されているヤマハ。原付スクーターから大型スーパースポーツまでフルラインナップするヤマハの特徴とは?


●文:ヤングマシン編集部

1955年に設立、同年にはYA1を発売しレースでも活躍、その後はホンダに次ぐバイクメーカーに

2025年に設立70周年を迎えるヤマハ発動機は、楽器などで知られるヤマハ株式会社から派生した歴史を持ち、モーターサイクル第1号機「YA1」ですでに流麗なデザインという特徴が生まれていた。二輪車の生産台数では日本で2番目に大きい規模で、世界でも3番目(2位はインドのヒーロー)に位置している。

当初から富士登山レースや浅間高原レースで優秀な成績を納め、1961年にはロードレース世界選手権に初参戦。1963年には250ccクラスで初優勝を遂げ、よく1964年には同クラスでフィル・リード選手の手により初のメーカー&ライダーチャンピオンを獲得した。これまでにMotoGP/500ccクラスで7人のチャンピオンを生み出し、2023年シーズン終了時点までに全クラスでトータル520勝を挙げている。

モトクロスマシンではリヤサスペンションに初めてモノショックを採用、市販車で初めて2ストローク分離給油を採用、その後も4ストロークへ移行すると見られた時代にRZ250/350を生み出すなど革新的な技術で世間を驚かせてきた。世界初DOHC5バルブエンジンやクロスプレーンクランクなど、4ストロークでも同様だったほか、SR400のようなロングセラーモデルを生み出したことも記憶に焼き付いているライダーは少なくないだろう。

そんなヤマハのバイク、昔から“ハンドリングのヤマハ”や“デザインのヤマハ”と言われることが多かった。優等生的に見えるホンダと対比されることも多い。

というわけで、ヤマハのバイクに乗って感じることを選んでみた。これ以外にもたくさんある! というご意見もあるだろうが、目立ったものに絞って5つに集約してみたい。

1.高いデザイン性

かつての艶のあるボディラインや近年の近未来を先取りしたようなデザインはヤマハならでは。モーターサイクル第1号機のYA1からGKダイナミックスというデザイン会社に委託していたこともあって、長らく同社と二人三脚でやってきている(スクーターは基本的に別のエルムデザインによる)。

そんなヤマハだけに、創業以来ずっとデザインにはこだわりを見せている。ヘッドライトなど灯火類に多くの型を用意していたりして、他メーカーの開発者に言わせると「うらやましい」となることも!?

2015年型YZF-R1から採用した吊り目のポジションランプ+LEDヘッドライトといった組み合わせは、それまでの猫目と呼ばれた2眼フェイスを新世代に進化させたものだった。

MT-09

2.ライダーの気分にシンクロするハンドリング

ゆったり走りたいときには鷹揚に曲がり、気分が高揚してくると鋭いハンドリングが引き出せる、そんな優しさとアグレッシブさの二面性を気分次第で行ったり来たりできるのがヤマハらしさ。

ホンダのバイクはとても素直ながら、ライダーの気分に合わせて反応を変えることがあまりない。言ってみればヤマハはこれと対照的であり、ホンダユーザーがヤマハのバイクに乗ると、またヤマハユーザーがホンダのバイクに乗ると、最初は少し違和感を覚えることもある。

バイクで脳が活性化するという「二輪乗車と脳の活性化の関係」という研究を産学連携で発表したこともあり、また「人とくるまのテクノロジー展2024」では開発中のスマートフォンアプリ「感情センシングアプリ」を公開するなど、人とバイクの関わりについて積極的に研究しているのもヤマハなのだ。

3.わかりにくい!?

上記の項目2の裏面とも言える部分だが、フワッと乗ると特徴が掴みづらいと感じることがある。特に街中などの何気ない場面で反応が鈍いように思ってしまうこともあるかもしれない。特にホンダ車から乗り換えると、最初にそう感じることが多いと言われている。

これは、上記のようにゆったり乗りたいときに鷹揚な反応になるという特性が持つ一面で、少し慣れてシンクロするようになってくると気にならなくなるはず。

いずれも昔から伝統的な傾向ではあるが、時代が進むごとに各メーカーとも洗練されてきて差は小さくなってきている。それでも、傾向として少し残っているのが面白い。

YZF-R1M

4.他と違ったバイクをつくる

現在では国産バイクで唯一の3気筒エンジンを採用したり、フロント2輪のLMW(Leaning Multi Wheels)という機構を採用した3輪バイクを販売するなど、他メーカーがあまり製品化していない構成のバイクを市販することが多い。

ほかにも、初代TMAXに『オートマチックスーパースポーツ』のコンセプトを与えたり、かつてセロー225で「2輪2足走行」を提唱したり、前述のように独自のメカニズム(モノクロスサスペンションやクロスプレーンクランクなど)を最初に市販化したりと枚挙にいとまがない。

たまに尖りすぎていると感じることもなくはないが、それも含めてヤマハらしさ。そうした独自のコンセプトをつくり出すことが、かつてのSR400やセローシリーズのようなロングセラーモデルの誕生、そしてVMAXや後方排気TZR250のような記憶に残るマシンの誕生を後押ししているのだろう。

左からTMAX560、トリシティ125、ビーノ。スクーターだけ見てもオリジナリティのあるデザインやコンセプトをそれぞれのモデルで築いている。

5.ユーザーに優しい

ヤマハのバイクのミラーは右側が逆ネジだ。とても小さなことのようでも、ヤマハの細やかな配慮が見える点がこれ。通常のネジは上から見て時計回りに回すことで締まり、反時計回りに回すと緩む。これをそのままミラーの付け根に反映すると、走行中に何か障害物(木の枝など)や人に当たった時、左側は前から押されることで緩む=ダメージを低減するが、右側は締まってしまうことでダメージを逃がせず、さらにオーバートルクで締まることでミラーマウントの受け側が破損しかねない。

これを解消するのが、右側逆ネジ構造。左側ミラーと同じように前から何かが当たったときに緩むようになっている。

最近はヤマハも他メーカーも正ネジと逆ネジを組み合わせた二重ネジとすることで、どちらに回しても緩むようにしているものが多いが、ヤマハは昔から伝統的に右側ミラーの土台部分の逆ネジ構造を小排気量車~大排気量車を問わず採用しているのだ。

ほかにも、ライダーが触れる部分は丸みを帯びていたり扱いやすい位置関係になっていたりと、芸の細かい配慮がなされている。

まとめ

ヤマハは上記のほかにも故障が少ない、整備性に優れるなど国産メーカーとして標準的な特徴を当然ながら持ち合わせている。一方で、ここまで記したように優しさとアグレッシブさの二面性を持っていたり、他にないものをつくろうという意志が前面に出ていたりと、主張の強い個性がある。

バイクで何かをすることが楽しいというよりも、バイクに乗ることそのものが面白い、というのがヤマハのバイクの特徴としってよさそうだ。

※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。