バイクのエンジンの中はオイルが入っていて、その潤滑方法に種類がある。スペック表の潤滑方式の欄にウエットサンプと記されているモデルが多いけれど、これってなんのコト? また他にもドライサンプやセミドライサンプという潤滑方式もあるみたい……。そもそもエンジンを潤滑するのにドライってどういうコト? 乾いていたらダメなんじゃないの?
エンジン下部のオイルパンにオイルを溜めているか、溜めていないか
バイクのエンジンの潤滑方式は現在だとウエットサンプが主流だが、他にドライサンプ、セミドライサンプがあり、すべてに共通する「サンプ=SUMP」は『溜める、槽』といった意味がある。機械用語だと「オイルサンプ=油だめ」という言葉がメジャーだがこれはアメリカ式で、英国だと「オイルパン」になる。
これでピンときた人もいると思うが、簡単に言うとエンジンのクランクケース下部のオイルパンにエンジンオイルを溜めているのがウエットサンプ。そしてオイルパンにオイルを溜めずに(カラカラに乾いているわけではないが)、独立したオイルタンクを持つのがドライサンプだ。
国産だとビッグバイクの草分けである1969年に登場したホンダのCB750FOURや、ロングセラーモデルであるヤマハSR400はドライサンプ方式だが、過去から現在までの多くのバイクがウエットサンプ方式だ。
安全性を高めるためにドライサンプを採用
本格オフローダーがベースだからドライサンプ
技術向上で採用したウエットサンプが現代に続く
車体設計にも影響? ウエットサンプとドライサンプ、それぞれの特徴は?
まずウエットサンプは構造がシンプルなので低コストで生産できる。また、エンジンオイルがすべてオイルパンに溜まっているのでオイル交換作業も簡単と、効率の良い構造だ。
対するドライサンプは、既存のオイルポンプの他にエンジンオイルを回収するためのスカベンジポンプやオイルライン、そして個別にオイルタンクも必用になるため、少なからず重量が増加する。そして部品点数が多いので高コストなのがデメリット。しかし、それに有り余るメリットが存在する。
まずエンジンの下部(クランクケースの下)に大きなオイルパンを装備する必要がないので、エンジンの全高を低く設計でき、その分エンジンを低くレイアウトすることで重心を下げられる。四輪のF1やレーシングカーがドライサンプ方式を採用するのはこれが主な理由だ。バイクの場合もオンロードスポーツなら低重心化やマスの集中に貢献するし、オフロード車なら最低地上高を稼ぎやすく、オイルパンをヒットする危険を減らすことができる。
また四輪レースの場合はコーナーで凄まじい横Gが発生するため、ウエットサンプだとオイルパンの中でオイルが側面に偏って吸い込めなくなって潤滑不良を起こす場合があるが、ドライサンプならその危険がない。バイクの場合はコーナーをバンクして曲がるため、エンジンオイルは遠心力で釣り合って底部に溜まるのでその心配は無いが……。