コンセプトを保ち続けるスゴさ
ライバルとはひと味違う!? ヤマハ YZF-R25/R3はフルカウルスポーツの裾野を広げた「毎日乗れるスーパーバイク」!【バイクの歴史】

●文:[クリエイターチャンネル] 88サイクルズ@てんちょー
ヤマハのテッパンバイク YZF-R25/R3
次のお出かけはいつものつなぎにお気に入りのMA-1を羽織ってキャップにダテメガネってコーデにしよう! こういうベーシックなアイテムって色々なコーデに使えて便利だよね。そうそう、バイクにも現代のベーシックといえるスポーツバイクがあるよ。それがヤマハのYZF-R25とYZF-R3だね!
YZF-R25/R3といえばヤマハのクオーター/ミドルクラスのフルカウルスポーツモデル。ヤマハらしいお洒落なスタイリングのバイクだね! 今回はこのバイクの魅力を、同じクラスのライバルたちの動向を追っていくことで紐解いていきます!!
YZF-R25/R3ってどんなバイク?
1980~90年代のフルカウルスポーツはレーサーの技術を色濃くフィードバックしていて、ものによってはレースまでを想定したかのようなスペックを実現していたことから、「レーサーレプリカ」と呼ばれていました。当時は大ブームを呼んだカテゴリーでしたが、2000年以降になると下火になり、公道をメインステージとするスポーツカテゴリー「スーパースポーツ」へと移行していきました。
そんなスーパースポーツが市民権を得た2014年のこと。満を持してヤマハから初代YZF-R25が発売されました。
完全新設計の水冷DOHC4バルブ2気筒249㏄エンジンをダイヤモンドフレームに搭載したクオーターフルカウルスポーツです! 36ps/12000prmを発揮するパワーは登場当時はクラス最強でした。YZF-R6と共通の直径41㎜の正立フォークを採用し、左右非対称のロングスイングアームの長さはホイールベース比がYZF-R1と同じになるなど、ハンドリングに対するヤマハのこだわりがビシビシ伝わってくるぜ!
…と、ここまで見るとカリカリのスポーツバイクの雰囲気があるけれど、実はこのバイクのコンセプトは「毎日乗れるスーパーバイク」なんです!
166kgという軽さも相まって、免許取り立ての初心者でも扱いやすいサイズの車格に収めつつ、780㎜とスポーツバイクとしては低めのシート高に、セパレートハンドルながらスポーツモデルにありがちな前傾のきつさを感じさせないライディングポジション…。そして、エンジンも全域で扱いやすく必要な時に必要なパワーが引き出せるフレキシブルな特性で、日々の通勤通学から休日のツーリングやお買い物まで、正に毎日乗れるスーパーバイクに仕上がっていました! このバランスの良さは現行モデルまで引き継がれており、多くのライダーに高く評価されています。
翌2015年にはR25の排気量を320㏄まで拡大したグローバルモデルのYZF-R3も登場。R3は車両設計のほとんどをR25と共有することで、排気量をアップさせつつも車両重量169kgを実現しました。こちらも軽量で扱いやすいモデルとなっています!
2019年には両車ともにビッグマイナーチェンジを受けてカウルデザインが大幅刷新されて、フロントフェイスにはレーシングマシンYZR-M1と同じ形のセンターダクトが設けられました。
従来よりハンドル位置が22㎜低くセッティングされており、スポーツ走行をより楽しめるライディングポジションになりました。さらにフロントフォークは正立からKYB製の倒立フォークに、各部のセッティングも見直され、最適化されています。
そのほかヘッドライトのLED化、フル液晶メーターの採用などの変更が施されたことで、万能さにも一段と磨きがかかっているね。ほぼ同時にモデルチェンジを受けたR3の方ともなると、操縦性を高めるラジアルタイヤを履いています。その後、YZF-R25/R3は2022年モデルで排ガス規制対応と合わせてウインカーもLED化されました!
さて「毎日乗れるスーパーバイク」というコンセプトに近いバイクとしては、排気量違いになるけれど、ドゥカティの4代目スーパースポーツやスズキのGSX-8R等が挙げられます。
実は、こうしたバランス型のバイクをブレずにラインナップし続けるのってすごい事なんです! それは他のメーカーのライバル達を見てみると分かりやすくなります。次は国内メーカーのライバル達が新時代のフルカウルスポーツをどういう風にまとめあげていったか見てみよう!
方向性を模索し続けてきたカワサキ
カワサキは2008年に現在の250㏄フルカウルスポーツ復活の起爆剤となったNinja250Rを世に出しました。
街乗りしやすいスチールのフレームにエンジンはフレキシブルな並列2気筒を搭載。ライディングポジションはセパレートハンドルなのにきつさがない自然なもの。かといって完全なツアラーではなく、スポーツバイクとしてのスタイリングと走りも合わせ持っていました。2015年にはNinja250と名前が変わり、2018年に車体や足回りなどをNinja400と共通化を図るという大がかりなモデルチェンジを経て現在もラインナップされています!
そして2015年にはNinja250SLという単気筒エンジンのスポーツバイクも登場しています。149kgの軽量コンパクトな車体に29psのエンジンを積むという結構攻めたスポーツバイクです。
さらに2020年Ninja ZX-25Rという4気筒エンジンのスポーツバイクまで登場! 45psを発揮するエンジンや豪華な足回りに充実したデジタル装備など独自のプレミアムスポーツとして存在感を放っているね。
カワサキは多様なモデルを試していく中で、カワサキらしい骨太な方向性を模索し続けている感じがするね。
新世代スポーツ路線に挑戦するホンダ
ホンダからは2011年にCBR250Rという最新の水冷単気筒エンジンを搭載するライトウエイトスポーツが登場します。初代はVFR系のツアラーっぽいデザインだったけれど、2015年からはよりスポーティーなイメージのある二眼ヘッドライトのカウルデザインに変更されました。ここで開発されたエンジンは他の250㏄のバイクに使われたりしている隠れたキーパーソンのようなバイクです。
そして2017年にはCBR250RRが登場。トラスフレームに完全新設計の2気筒エンジンを搭載するガチなスポーツバイクとしてまとめられていました。当初38psだったパワーはモデルチェンジで41ps力にまで高められるなど、クラスのスーパースポーツモデルとして進化を続けています。
この二車共にかつてのレーサーレプリカと同じ名前を持つ通り、ホンダは「新世代のスーパースポーツを作る」という意思を持っていると感じるよね。
独自の路線を見出すスズキ
スズキからはまず2014年にGSR250Fが登場しました。
ネイキッドGSR250のシリーズ車種だったためか、かなりアップライトな乗車ポジションに大柄な車体とマイルドな2気筒エンジンが相まってクルージングが快適なスポーツツアラー的なキャラクターでした。
続いて2017年にはGSX250Rが登場します。よりスポーティーなカウルデザインやポジションになったものの、GSR250系のエンジンの扱いやすいエンジンフィールは健在で、街乗りやツーリングに真価を発揮するバイクとなっています。
同じエンジンを使っているバイクにV-strom250があることを考えるとGSX250Rはスポーツツアラースタイル、V-strom250はアドベンチャーツアラースタイルとGSR250Fの要素をそれぞれ進化させているのかもしれないね!
さらに2020年にはGIXXER SF250が登場します。このバイクに搭載されたのは、スズキが久々に開発した新世代の油冷単気筒エンジン。GSX250Rより20kg軽い車体に+2psの26psのエンジンの組み合わせはより軽快なスポーツバイクとしての魅力を最新の技術と共に打ち出した印象を受けるね。
スズキは他のメーカーが手を付けていないツーリングスポーツと油冷エンジンという独自性を強く打ち出してきたって印象があるよね。
YZF-R25/R3とヤマハの凄さ
こうやってメーカー各社の動きを見てみると新世代のフルカウルスポーツはどうあるべきかを各社試行錯誤しているのが見て取れるよね。そしてヤマハがすごいのは、「毎日乗れるスーパーバイク」というベーシックスポーツモデルをYZF-R25/R3だけで打ち立てて、ずっとそのコンセプトを維持していること! ブレない事山のごとし!!
YZF-R25/R3は日本のミドルクラスでこういった新時代のベーシックなフルカウルスポーツという存在を定着させて、スポーツバイクの裾野を広げてくれた偉大な存在なんです。
まとめ:現代のベーシックスポーツ YZF-R25/R3
Ninja250Rが再び火をつけた新しい250㏄クラスにおけるフルカウルバイクのムーブメント。そこに颯爽と現れたYZF-R25/R3は「毎日乗れるスーパーバイク」という新時代のベーシックなフルカウルスポーツという新しいあり方を提案しました。それがユーザーに受け入れられた結果、発売当初のコンセプトのまま現在まで販売が続けられるというロングセラーバイクとなったのでした。
フルカウルのスポーツバイクに、より豊かな楽しみの幅を提供してくれたYZF-R25/R3。新時代のベーシックフルカウルスポーツが気になる人は要チェックなバイクだぜ!
88サイクルズ Youtube本店では、今回の記事で取り上げたバイクをてんちょーが自由気ままに語り散らかした動画版「バイク小噺」を公開中です。Youtubeにも遊びに来てね!
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。
最新の関連記事(てんちょー)
バイクという乗り物の大きな魅力のひとつが多種多様な構成のエンジンです。みなさんもエンジンが気になって調べたことがあるんじゃないでしょうか。そこでよく出てくるのが「空冷」や「水冷」というワードです。これ[…]
細身のジャケットにワイシャツとネクタイ…ブリティッシュトラッドなコーデって、パリッとした王道スタイルだよね! そういえばバイクでも英国風なトラディショナルバイク、ホンダGB350シリーズが、人気になっ[…]
ホンダの英国車風シリーズ「GB」 ミドルクラスで大人気のバイクのひとつといえば、ホンダのGB350だよね! じつは、このGBという名前、かつてのホンダ、英国風カフェレーサーシリーズから引き継がれている[…]
BIGなCBとBIGな企画 ビッグマック! ビッグサンダー! ビッグカツ!! てんちょーもBIGになってバイクをもっと布教したい! そう、目標はホンダのBIG-1ぐらい大きくなきゃね。え、BIG-1っ[…]
1分でわかる記事ダイジェスト ハンターカブという通り名 ホンダのスーパーカブシリーズの一員「ハンターカブ」。オフロード性能を高めたアドベンチャーなカブで、アウトドアテイスト溢れている。その歴史と由来を[…]
最新の関連記事(ヤマハ [YAMAHA])
R1とR1Mで変更内容は異なる ファイナルエディションが登場しそうとか、スーパーバイク世界選手権でのパフォーマンス向上のためモデルチェンジするのではないかなどさまざまな情報(憶測?)が飛び交っていた「[…]
XSR900 GPの登場によりカジュアル寄りに回帰したXSR900 ヤマハは、クロスプレーンコンセプトの888cc並列3気筒を搭載するスポーツヘリテイジ「XSR900」をマイナーチェンジ。ライディング[…]
時代に合わせて生き続けた、愛すべきヤマハの象徴 スポーツバイクにおいて、スペックが重要な指標のひとつなのは間違いない。しかし1000ccで200psオーバーが当たり前の近代において、最高出力が25ps[…]
“つながる”機能搭載新の7インチTFTディスプレイほか変更多数 ヤマハが新型「トレーサー9 GT」を発表した。これまで上位グレード『GT+』の専用装備だった7インチTFTディスプレイを採用したほか、先[…]
兄貴分NMAX155と共通の車体に124ccブルーコアエンジンを搭載 ヤマハの原付二種スポーティスクーター「NMAX」がマイナーチェンジを受けた。従来のシックな雰囲気からアグレッシブな外観に刷新され、[…]
人気記事ランキング(全体)
自分のミスではないアクシデントで運命を分ける空気圧! タイヤの空気圧は大事……わかっちゃいるけど、つい面倒でチェックが疎かになりがち。 しかし脅かすワケではないけれど、実は空気圧が適正に保たれていない[…]
1位:「モンキー125」で黄色いモンキー復活【欧州】 ホンダが欧州で、125ccモデル×3車種を発表。いずれも、日本で販売中のカラーリングを纏ったモンキー125、ダックス125、スーパーカブC125の[…]
1990年に撤廃された、国内販売車の排気量上限自主規制 大排気量ランキングの話を始める前に、少し歴史を遡ってみよう。日本では、1969年のホンダCB750Fourの登場を機に、当時の国産車の最大排気量[…]
整備部門に加えて塗装や磨き作業まで社内で行うエルオート。コンディションに応じた最善策で販売車両を製作できるのが最大の強み 数ある絶版車の中で頂点に君臨し続けているカワサキZシリーズ。人気車種ゆえ大物の[…]
オイルの匂いとコーヒーの香り。隠れ家へようこそ。 56designが4月12日に奈良県奈良市にオープンさせる「56design NARA」。以前から要望が多かったという、同社初となる関西圏の新店舗だ。[…]
最新の投稿記事(全体)
目指すはボンネビルの最高速度記録! 前回はエンジンブローで力尽きたが…… 2024年4月の名古屋モーターサイクルショーで初お披露目されたトリックスター「ZX-4ターボ」は、2024年11月に日本自動車[…]
249cc/26psのスポーティな油冷単気筒エンジンを搭載 スズキは、油冷シングルのフルカウルスポーツモデル「ジクサーSF250」にニューカラーを設定し、2025年モデルとして3月25日に発売する。マ[…]
250ccフルスケールで断トツの安さ! 低燃費やスズキ独自の油冷単気筒も魅力 スズキは、独自の油冷単気筒エンジンを搭載した軽二輪ネイキッドスポーツ「ジクサー250」にニューカラーを設定し、2025年モ[…]
レトロポップ感がたまらないカラーを再現 ヤマハのレトロポップさが魅力の原付一種スクーター「ビーノ」。かわいらしいスタイリングそのままに、1/12スケールプラモデルとしてアオシマから登場した。 これまで[…]
ラムエア加圧時は49psの4気筒エンジン、オートブリッパー付きクイックシフターも装備 カワサキのニンジャZX-25R SEは、2023年モデルで令和2年排出ガス規制に適合しながら、最高出力&最大トルク[…]