電動の日常モビリティの本命は交換式バッテリーにあり! 1個を使う電動スクーター「EM1 e:」から8個を使う軽バンまで【JMS2023で拝見】
Hondaは、ジャパンモビリティショー(JMS)2023にて電動モビリティの未来を示す展示を行い、発売されて間もないパーソナル電動スクーター「EM1 e:」のほか、Hondaとヤマト運輸が実証で使用している軽EV「MEV-VAN Concept」、さらにミニショベルカーや未来に発売されそうな新型電動スクーターなどをお披露目した。
●文/写真:ヤングマシン編集部(ヨ) ●BRAND POST提供:Honda
“充電時間”の課題を解決する筆頭候補が「MPP e:」だ!
Hondaは、国内初のパーソナル向け電動スクーター「EM1 e:」を8月24日に発売。すでにかなりの受注数に達しているという。さらに、東京ビッグサイトで開催中のジャパンモビリティショー2023(JMS2023)には、EM1 e:のほか、原付二種クラスに相当すると思われる新型電動スクーター「SC e: Concept」や、Hondaとヤマト運輸で実証中の軽EV「MEV-VAN Concept」などを参考出品した。
それらに共通するのは、着脱可能な交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:(モバイルパワーパック イー=MPP e:)」を使用していることだ。
MPP e:は、車体から外して室内に持ち込むことも可能で、通常の充電池と同じように専用充電器を使用して充電すれば再び使えるようになる。これに加え、充電済みのMPP e: に差し替えることですぐに走行可能になる、といった使い方も想定されている。
出先で充電済みバッテリーを入手できれば、使用済みバッテリーと交換して走り出せる──。これを可能にするのがバッテリー交換ステーションだ。普及はまだまだこれからだが、目的地までの途中にバッテリー交換ステーションがあれば、充電による時間のロスを気にすることなく自由に移動できるようになるはずである。
こうしたMPP e:の使い方を提案し、実証中も含めて使用している電動モビリティを紹介したのが、今回のJMS2023の展示だった。
原付一種=50ccクラスに属する電動スクーター「EM1 e:」
EM1 e:(イーエムワンイー)は、『日々の生活スタイルにマッチするちょうどいいe: Scooter』をキャッチコピーとした、原付一種に区分される電動スクーター。二輪免許のみならず、普通自動車免許の所持者も運転できる間口の広さが特徴だ。Hondaが国内で初めてパーソナル向けにリリースした電動スクーターであり、これからのカーボンニュートラル実現に向けて重要な役割を担っている。
シート高は740mmと低く、車重はバッテリー込みで92kgと、ガソリン車よりも少し重い程度。最高出力は2.3psと、ガソリン車に比べて低そうに思えるが、実際の体感加速では遜色ない。1回の満充電による航続距離は実測で40~50kmだが、登り坂などが多いと短くなる傾向だった。 ※詳しいインプレッションはこちら
嬉しいのは、原付一種の区分ゆえに駅前の公営駐輪場などで駐輪が許可されているケースが多いこと。通勤通学や日々のちょっとした買い物に使える原付バイクなのだ。早朝や深夜の住宅街を気兼ねなく走れる静粛性も特筆モノ。
価格は、車両本体が15万6200円、バッテリーが8万8000円、充電器が5万5000円の計29万9200円。令和5年度でいえば、クリーンエネルギー自動車導入事業費補助金で2万3000円、予備バッテリーを追加する場合はさらに2万円の補助があるほか、自治体によって独自の補助を受けられる地域もある。
PCXがライバル?! 原付二種の電動スクーター「SC e: Concept」
こちらはコンセプトモデルとして世界初公開されたもので、その名も「SC e: Concept(エスシー イー コンセプト)」。このままの形で市販されるわけではないだろうが、MPP e:を2個搭載することから、かつてリース販売されていたPCXエレクトリックと同等の走行性能を持ち、原付二種の区分になることが期待できる。
コンセプトモデルではあるが、現状でメーターは6~7インチ程度の大画面TFTを想定しているように見え、スイッチ類の造形も新しい。ホイールはフロント13/リヤ12インチ程度だろうか。EM1 e: よりはひと回り大きい車格で、タンデム走行も快適そうだ。
参考までに、同クラスのEVスクーターとしてPCXエレクトリックの性能を記しておくと、最高出力は5.7ps/5500rpmと控えめだが、最大トルクは1.8kg-m/500rpmと180ccクラスに匹敵する数値を極低回転から叩き出す。実際の加速性能もガソリン車の原付二種に遜色なかった。約10kgのバッテリー2個を搭載した車重は144kgで、満充電の走行距離(届出値)は41kmだ。
MPP e: を8個搭載して70km走る軽EV「MEV-VAN Concept」
Hondaとヤマト運輸が、集配業務における実証を11月より開始すると発表したのは10月19日。すでに固定式バッテリーの軽EVは実証済みだが、短く決まったルートを走行し、必ず基地局に戻ってくる集配業務で交換式バッテリーがどの程度有効か、また効率的な運用方法は何か、といったところを探るのが目的だろう。
ベースになっているのはN-VANで、これをEV化するとともに、カーゴスペースの前半分の床下にMPP e:を8個搭載できるようになっている。後部座席は省略されているが、低床ぶりはガソリン車のN-VANと遜色ないように見える。よって、荷物の積載性も同等と見てよさそうだ。
バッテリーの総重量は約80kgだが、手で持ち運べる重さのものが8個と考えれば、交換作業はそれほど重労働でもなさそう。集配業務は多ければ1日に100個以上の配達をこなすというが、基本的にエリアごとの担当が決まっているので、総走行距離は想像するほど長くない。たとえば午前中に配達し、いったん積み込みのために基地局に戻った際にバッテリーも交換する、といった使い勝手が目に浮かぶ。
みんな大好き電動ショベルカー「PC05E-1」プロトタイプモデルはコマツと共同開発
電動マイクロショベル「PC05E-1」プロトタイプモデル(コマツ)は、MPP e:を2個搭載して運用するミニサイズのショベルカー。座席を後ろに倒すとバッテリーが現れ、横挿しで交換するタイプになっている。狭い路地での機動力に加え、排気ガスや動力による騒音が出ないことによって、作業可能な時間やエリアが広がることが期待できる。
すでにコマツによる実証試験が進んでおり、工事現場ではほかにもデンヨーのLED投光機(MPP e:×2個搭載で連続点灯可能時間は約9時間)に使用されている。
電動三輪タクシー「リキシャ」や小型船舶向け電動推進機プロトタイプも
インドで運用されている電動三輪タクシー「リキシャ」には、MPP e:を4個搭載。タイで一般的に使われるトゥクトゥクに似た構成がカワイイ。また、島根県松江市で「水上のカーボンニュートラル」の実現を目指して実証実験中の「小型船舶向け電動推進機(プロトタイプ)」も展示された。後者は関連記事で詳しく取材している。
発電機の代わりに使える「Honda Power Pod e: プロトタイプ」
こちらはMPP e:を1個搭載することで100V電源として利用できるほか、USB給電も可能なプロトタイプ機種。すぐにでも実用化できそうだが、MPP e:がもっと普及し、バイク用の動力などに使用した後に再利用する形も想定しているようだ。また、同様のコンセプトと思われるが、形状が異なり、工具入れや車輪が付いたアウトドア向け仕様も別のコーナーに展示されていた。
バッテリー交換ステーションの普及がカギだ!
ここまでに紹介した製品やプロトタイプモデルが、より便利に利用できるようになるためには、街中に一定以上の数のバッテリー交換ステーションが普及していくことが不可欠。もちろん各家庭で予備バッテリーを用意して使えば不便というほどではないだろうが、やはり出先で時間をかけずに充電済みバッテリーを入手できるのは魅力的だ。
特に、低価格で利便性が求められるコミューターカテゴリーでは、機種ごとの専用バッテリーを搭載するよりも、交換式バッテリーを使うほうが運用コストが抑えられるし、バッテリー切れを気にせず出かけられる。ツーリングを楽しみたい中~大型モーターサイクルや乗用車では実用化が難しい方式だが、スクーターや配達用の軽EVなら遠くない未来に実現するはず。そんな期待をせずにはいられないJMS2023だった。
※本記事はHondaが提供したもので、一部プロモーション要素を含みます。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。