
疑問に思っている人も必ずいるはずな「エンジンオイルを規定量以上入れたら何がおこるのか・・・?」。やってみましょう、試してみましょう。エンジンに注入したオイルの量は規定量の3倍! これでエンジン始動したら・・・オイルを吹くのかシールが飛ぶのか、はたまたエンジン焼き付くのか? やってみなけりゃ分からないというわけで、実験してみます!
●文:ヤングマシン編集部(DIY道楽テツ)
【ご注意】本記事は、エンジンオイルの過剰注入がエンジンに与える影響を確認するための実験であり、一般使用車両での実施や再現を推奨するものではありませんのでご了承ください。
オイルの規定量は守らなくちゃイケマセン?
「オイルは規定量を守ってください」。整備マニュアルやオイル缶の注意書きに必ず書いてあるこの文言。でも、ふと思ったことはありませんか?
「オイルが多い方がエンジンが冷えるんじゃない?」「オイルが多い方が潤滑しそうな気がする?」「どうせ減っちゃうんだから、少ないよりマシでしょ?」などなど。
ええ、何を隠そう筆者もそう思ってました。そして、いつか試してみたいと思っていたのですよ。「エンジンオイルをたっぷり入れたら、エンジンはどうなっちゃうんだろう?」・・・と!
試してみよう「オイル満タン」!
そんなわけで、皆様に代わって実験してみますよ。実験に使うエンジンは、じつは一度オイルの油膜切れを起こしてダメージを受けているモノ。部品交換したもののなんとなく異音が消えないので、とりあえずお蔵入りさせて、いつかフルオーバーホールしようと思っていたエンジンです。なので、万が一どこか壊れても問題ないので、遠慮する必要はありません。さぁ、実験してみようじゃないか。
焼き付きから復活したエンジン。めっちゃ丈夫です。
さて、オイルを入れる量なのですが、なんたって実験なので、ちょっと増やしたぐらいじゃ違いがわかりにくいので・・・「よっしゃ、入るだけ入れよう!」ってことにしてみました。
まずは規定量のオイルをいれて、さらに同量のオイルを注入。ここで溢れるかと思いきや、まだまだ余裕がありそうなのでさらにオイルを入れてみた。
注入口から漏れ出るまで入れたら、なんと規定量の約3倍のオイルが入ってしまった。小さいエンジンなのに、そんなに入るんかいっ!!
起きるトラブルを予想してみよう
それでは。エンジンを掛けてみる前に、起きるであろうトラブルを予想してみましょう。サァ皆様もご一緒に!
筆者の予想としては・・・
- ブローバイホースからオイル吹き出しそう
- 内圧上がりすぎてオイルシール抜けそう
- ピストン上下の圧力かかりすぎてピストンの動き悪くなりそう
- 最悪のケースとしては内圧上がりすぎてコンロッドが曲がる!?
…などなど、不安しかない未来が見えてきます。少なくともオイルはぶちまけると思うので間違っても実走はしません。ブルーシートでオイル漏れ対策をしてからエンジン始動実験に挑むのです。
いざ、エンジン始動!
そんじゃ実験開始。いざエンジン始動!!
「カシュッ!」「・・・ドルルルルルルルッ」
・・・普通にエンジンかかちゃった。とくに問題なくアイドリングしてる。しいて言えば、ちょっとだけエンジンのメカノイズが籠っている気がする(ミッションがオイルに浸かってるからだろうか)・・・。
そして五分後。まったく変化ないので、アクセル開けて回転数を上げてみた。
「ブイイーーン」「ブイイーーーーン」
・・・なんてこった。なにも起きない。回転数も普通に上がるし、吹けあがりもいつも通りだ。これ一番困るパターンだ。何も起こらないんじゃ、実験した意味がないじゃないか・・・。
オイル抜いてみたら衝撃の事実
中がどうなってるだろう?と、オイルフィラーキャップを開けてみたら、すごい違和感を感じた。
・・・ん? なんか泡立ってない?? ドレンボルトを外してオイルを抜いてみる。
・・・ふおっ!?
泡立ってる! オイルがクリーミーになってる~~~!
結論:やっぱり「適量」が一番!
これ、完全にアウト。エンジンが逝っちゃうパターンでした。中を見てないので断言はできないのですが、エンジンオイルを入れすぎたために、クランクシャフトの回転によってオイルが攪拌されて「オイルのエアレーション」と呼ばれる泡立ち現象を起こしている模様。
オイルが泡立つと、下記のような問題が発生する可能性があります。
- 潤滑不良: オイルに気泡が混じることで油膜が途切れやすくなり、金属部品同士の摩耗を促進させてしまう
- 油圧低下: オイルポンプが気泡を吸い込んでしまうと、油圧が正常にかからなくなることがある
- オイルの劣化促進: オイルが高温の空気と接触する機会が増えるため、酸化劣化が進みやすくなる
つまり、オイルが泡立つことで本来ならば「オイル-オイル-オイル」と連続的に流れているところに「オイル-空気-オイル-空気」といった具合に断続的になってしまうわけです。
過酷な環境にあるピストンやロッカーアーム、カムシャフトにとっては油膜の減少は致命的になってしまうわけで、そのまま走っていたら潤滑不良によるエンジン焼き付きの危険性が高まってしまいます。
やっぱり、エンジンは規定のオイル量で設計されているので、それを越えた量のオイルを入れると、なにかしらの不具合が起こってしまうということですね。分かりきっていたことではありますが、こうして実験してみるとなるほど納得! なのでした~。
まとめ:当たり前だけど、入れすぎはキケン!
今回の実験では、オイル入れすぎると泡立つ→潤滑不良→最悪エンジンブローという危険性を学びました。ほかにもオイルが多すぎることで、クランクケースの内圧が高まってオイルシール破損や吹き出してしまうといったリスクもあります。今回はアイドリング+短時間の空ぶかしだったので、まだ大丈夫だったようですが、実際に走行などしていたらオイルをぶちまけるのは時間の問題だったことでしょう。
そんなわけで、エンジンオイルはやっぱり適量がベスト! 皆様におかれましてはメーカー指定の量を守って平和なバイクライフをお送りください。この記事が皆様の参考になれば幸いです。今回も最後まで読んでいただきありがとうございました~!
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