
2023年末にタイ、そしてベトナムで相次いで発表され、2024年12月現在も国内導入が待たれるヤマハの「PG-1」。誰がどう見てもホンダのハンターカブ&クロスカブにブツけてきたライバル車だが、その実力やいかに。ハンターカブ&クロスカブも用意して、徹底的に比べてみたぞ。意外とPG-1はスポーツ寄りな構成!
●文:谷田貝洋暁/ヤングマシン編集部 ●写真:真弓悟史
前輪荷重多めでスポーティーなPG-1
ヤマハPG-1の現地向けプロモーションビデオは、往年のスズキ バンバンやドゥカティ スクランブラーシリーズを連想させる、アクティブ&ポップなテイストで構成されている。このイメージを裏付けるかのように、車体構成を見ていくと、思いの外しっかりとした車体に、ユニットステアではなく、バーハンドル、前後16インチのホイール採用と、“オフロードのヤマハ”らしい、スポーティーな作りであることに気付かされる。
とはいえ、“オフロードのヤマハ”と言われた状況も今は昔。テネレ700を除けば、ナンバー付きモデルからは土の匂いのするモデルが、ほぼ皆無な状況となっているだけに、ヤマハとしてもこのPG‐1が喉から手が出るほど欲しいに違いない。“オフロードのヤマハ”復活のためにも、ぜひ国内導入を!
エンジンを比較
全車、排気量は微妙に違うものの空冷SOHCの横型エンジンで4速リターン式(停止時のみロータリー)を採用しているのは共通だ。カブ系が63.1mmのストロークで統一されているのに対し、PG-1は若干ショート設定でボア&ストロークは50.0×57.9mm。圧縮比はPG-1が9.3ともっとも低い。
PG-1
◆114cc空冷単気筒の横型エンジン。ボアストローク比はロングストローク設定だが、ホンダ勢ほどではない。シリンダー内径50.0mmはハンターカブと同じ(偶然!?)。
◆ダウンマフラーながらテールに向かって上がっていく形状で、オフロード走破性への意識がうかがえる。音は意外とハスキーで低め。文字にするなら「ストトトト」
クロスカブ110
◆横型空冷109ccのエンジン。ストローク63.1mmはハンターカブと共通だが、ボアは47.0mmとひとまわり小ぶりに。最高出力は他の2車に譲るが、実際の走りでは互角以上の動力性能を見せつけた。
◆スーパーカブ然としたダウンマフラーにタフネスを表現したヒートガードを備える。サウンドは燃調が薄めなこともあってか「シュルルーン」と回る中にペチペチ音が混じる。
CT125ハンターカブ
◆同じく横型の空冷2バルブ単気筒で、排気量は124ccと3車中で最大排気量。エキゾーストパイプとエンジンを保護するスキッドプレートが標準装備されている。セルフスターターだけでなくキックスターターを併設。
◆唯一のアップマフラー装備。タンデム時の熱対策で黒いヒートガードが併設されている。サウンドはクロスカブ110に似るがもう少し太めの音がする。
操作系を比較
フロントフォークを長めにとり、アッパーブラケットの位置も上めのPG-1。おかげでCT125ハンターカブよりもハンドル回りの剛性が高く、ハンドリングはよりダイレクトになっている。
オフロードテイストの可倒式ステップを採用しているのは全車共通だが、PG‐1のスポーティさはここにも表れている。ステップを低めに設定しており、チェンジペダルもダイレクト式ではなくリンク式なのだ。
PG-1
◆シンプルなスイッチまわり。PG-1だけがハザードランプを装備している。
◆ステップはラバー装着タイプで、リンク方式を採用するシーソー式チェンジペダルはつま先側が足の甲での操作にも対応。ブレーキペダルはオフロード志向のギザギザ付きを採用する。
クロスカブ110
◆ウインカーとホーンの位置関係がヤマハと逆なのはホンダ勢で共通。機能はシンプルそのもの。
◆いかにもカブ系のフラットなペダル類。ステップにはラバーが装着されている。
CT125ハンターカブ
◆クロスカブ110と同じくシンプルな左右スイッチまわり。スイッチボックスの形状は同じホンダでも異なっている。
◆ステップはラバーを外せばガチオフの雰囲気にもできるタイプ。ブレーキペダルもオフロード志向だ。シーソー式チェンジペダルは前側が足の甲でも操作できる。
足まわりを比較
前後17インチホイールを採用するカブ系に対し、PG-1は小さめ16インチホイールだがワイドホイール&ファットタイヤでかなり重量感がある。フォークストロークは、CT125ハンターカブ(110mm)、クロスカブ110(105mm)に対しPG-1が最長の130mmを確保し、最低地上高は190mm。オフロード性能を狙って高めてきている。
ブレーキがフロントディスクなのは全車共通だが、リヤに関してはCT125ハンターカブだけがディスクで他はドラム式。PG-1は、フロントABSもしくはコンビブレーキ装着という、125cc以下モデルの要件に非対応。国内正規導入におけるネックのひとつは、これだろう。ちなみにホイールはクロスカブ110のみチューブレスとなっている。
PG-1
◆トップブリッジまで伸びたテレスコピック式フロントフォークを採用。フロントブレーキはディスク式でABSは非装備だ。16インチホイールに幅広のスチール製リムを採用しているのも特徴的。
◆リヤサスペンションは非調整式のツインショック、リヤブレーキはドラム式を採用する。IRC製のブロックパターンタイヤはホンダ勢よりもワンサイズ太い。スイングアームは角型スチールパイプをブラック塗装したものだ。
クロスカブ110
◆一般的なスクーターと同様にアンダーブラケットのみでフォークを支持するユニットステアを採用している。フロントのディスクブレーキは2ピストンキャリパーを採用し、意外と鋭い制動力を発揮する。
◆シルバー塗装の角型スイングアームにタンデムステップを直接マウント。リヤサスペンションは非調整式のツインショックで、リヤブレーキはドラム式だ。現行モデルにマイナーチェンジした際にキャストホイール&チューブレスタイヤを採用した。
CT125ハンターカブ
◆PG-1と同様にテレスコピック式フロントフォークを採用。フロントディスクブレーキはクロスカブ110と同様に2ピストンキャリパーを採用するが、初期の食いつきが抑えられたコントローラブルな設定だ。
◆車体色と同色のスチール製・楕円スイングアームを採用。タンデムステップが直付けされている。ツインショックは5段階のプリロード調整機構付き。リヤブレーキは唯一ディスクタイプだ。タイヤ銘柄とサイズはクロスカブ110と同じだがこちらはチューブが入っている。
スペック比較一覧表
車名 | PG-1(諸元はベトナム仕様) | クロスカブ110 | CT125ハンターカブ |
全長×全幅×全高 | 1980×805×1050mm | 1935×795×1110mm | 1965×805×1085mm |
軸距 | 1280mm | 1230mm | 1260mm |
最低地上高 | 190mm | 163mm | 165mm |
シート高 | 795mm | 784mm | 800mm |
キャスター/トレール | 26.5度/83mm | 27度/78mm | 27度/80mm |
装備重量 | 107kg | 107kg | 118kg |
エンジン型式 | 空冷4ストローク単気筒 SOHC2バルブ | ← | ← |
総排気量 | 113.7cc | 109cc | 124cc |
内径×行程 | 50.0×57.9mm | 47.0×63.1mm | 50.0×63.1mm |
圧縮比 | 9.3:1 | 10.0:1 | 10.0:1 |
最高出力 | 8.9ps/7000rpm | 8.0ps/7500rpm | 9.1ps/6250rpm |
最大トルク | 0.96kg-m/5500rpm | 0.90kg-m/5500rpm | 1.1kg-m/4750rpm |
始動方式 | セルフスターター | ←(キック併設) | ←(キック併設) |
変速機 | 4段 | ← | ← |
燃料タンク容量 | 5.1L | 4.1L | 5.3L |
タイヤサイズ前 | 90/100-16 | 80/90-17 | 80/90-17 |
タイヤサイズ後 | 90/100-16 | 80/90-17 | 80/90-17 |
ブレーキ前 | 油圧式ディスク | 油圧式ディスク(ABS) | ← |
ブレーキ後 | 機械式ドラム | 機械式ドラム | 油圧式ディスク |
価格 | ── | 36万3000円~ | 47万3000円 |
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
人気記事ランキング(全体)
カワサキ500SSマッハⅢに並ぶほどの動力性能 「ナナハンキラー」なる言葉を耳にしたことがありますか? 若い世代では「なんだそれ?」となるかもしれません。 1980年登場のヤマハRZ250/RZ350[…]
マーヴェリック号の燃料タンク右側ステッカー エンタープライズに配属された部隊 赤いツチブタは、「アードバークス」の異名を誇る米海軍「第114戦闘飛行隊(VF-114)」のパッチ。1980年代には第1作[…]
※この記事は別冊モーターサイクリスト2010年11月号の特集「YAMAHA RZ250伝説」の一部を再構成したものです。 ヤマハ RZ250のエンジン「2ストロークスポーツの純粋なピーキー特性」 ヤマ[…]
カラーバリエーションがすべて変更 2021年モデルの発売は、2020年10月1日。同年9月にはニンジャZX-25Rが登場しており、250クラスは2気筒のニンジャ250から4気筒へと移り変わりつつあった[…]
公道モデルにも持ち込まれた「ホンダとヤマハの争い」 1980年代中頃、ホンダNS250Rはヒットしたが、ヤマハTZRの人気は爆発的で、SPレースがTZRのワンメイク状態になるほどだった。 しかしホンダ[…]
最新の投稿記事(全体)
5/12発売:ヤマハ「シグナス グリファス」37万4000円 水冷ブルーコアエンジンを搭載したヤマハの原付二種スクーターで、水冷124ccのブルーコアエンジンにより、スポーティかつ俊敏な走りが特長だ。[…]
イベント概要:カワサキコーヒーブレイクミーティング(KCBM)とは? 株式会社カワサキモータースジャパンが長年続けているファン参加型イベント『カワサキコーヒーブレイクミーティング(KCBM)』。今年の[…]
見る者で印象が違う? 絶妙なカタチとストーリー プレス向けの事前撮影会場に訪れたヤングマシンの取材スタッフ。興奮しながら、眩しいライトに照らされて佇むCB1000Fコンセプトの実車を目にした。しかし、[…]
コロナ禍を経て戦線復帰 愛らしいスタイリングとスポーティーな走りで人気のレジャーバイク「モンキー125」は、2022年7月より一時受注を停止していた。というのも当時、コロナ禍によるロックダウンや世界的[…]
カワサキW800(2017) 試乗レビュー この鼓動感は唯一無二。バイクの原点がここに 1999年2月に発売されたW650は2009年モデルを最後に生産を終了。その2年後の2011年、ほぼ姿を変えずに[…]