
前回に続いて、国土交通省都市局街路交通施設課が公表した資料「駐車場政策の最近の動向」(2023年12月20日)について紹介する。昨今の社会情勢をふまえた人中心の街づくりの中で、駐車場政策はどうあるべきかが示されており、2輪車駐車場の考え方やあり方について、いま国がどのように考えているのかを知ることができる資料だ。
●文:ヤングマシン編集部(田中淳磨)
歩行者中心の街路空間へ 国交省は毎年のように駐車対策の現状についてまとめた資料を更新し公表しているが、ここ数年は「ウォーカブルな街づくりとの連携(歩行者環境整備を重視)」と「多様なモビリティへの対応([…]
国交省主導で駐車場施策を検討
国交省は、2022年度から「まちづくりにおける駐車場政策のあり方検討会」を設置して、有識者/業界/団体/地方公共団体/中央省庁らが集まって、今後の駐車場政策の方向性などについて議論を重ねている。
さらに検討会の下に、“需給マネジメント”と“施設デザイン”という2つのテーマによるワーキンググループ(WG)を置いて、個別の検討事項についても深掘りを行っている。
需給マネジメントWGでは、2輪車や電動キックボードなど多様なモビリティも含めた車種別需要把握を基にした、エリア内駐車環境の最適化や公民連携による駐車場誘導施策などについて議論されている。関係団体として、日本自動車工業会 二輪車企画部会 二輪車利用環境分科会も参加しており、自工会が行った調査資料の提供や課題の共有、さまざまな提言などを行っている。
“新基準原付”についてもワークグループで提言されている
とくに喫緊の課題として自工会から提言されたのが、いわゆる「新基準原付」への対応だ。2025年11月、国内第4次排ガス規制が原付一種にも適用される。50ccクラスのエンジンでは触媒の浄化性能を発揮できず、現状では規制をクリアできないため、このタイミングで50ccバイクは生産終了になるのではと言われている。
2輪業界は、代替モビリティとして100~125ccクラスの最高出力を4kW程度に制限した新基準原付を原付一種として運行できるよう政府に求めており、警察ほか関係機関も検討や実証を進めているが、駐車ルールに関しては具体的な話がまだ聞こえていない。
車体のサイズは125cc(道路運送車両法上は自動二輪車)だが、道路交通法的には50cc(原付一種)という新基準原付。その駐車(駐輪)場所がどこになるのかは引き続き注視したい。
2023年7月に特定原付区分が施行された際には、駐車環境やそのルールの運用については曖昧な状態(自治体や民間施設ごとの判断)でスタートしていたため、トラブル防止の観点からも国や地方公共団体が法律や条例の改正も含めて検討し、規定の改定や通達などで何らかのガイドラインを示していくべきだろう。
一方の施設デザインWGでは駐車場など関連施設の運営効率化や安全性の向上、多様な利用ニーズを捉えての駐車場施設に求められる機能や新たな活用などについて議論されている。今後の駐車場設備として欠かせないだろうEV充電器の設置推進に関する課題や誘導・案内などで必要となるDXへの対応などもこのワーキングで話されている。
次回記事でも、本資料ならびに検討会の内容について紹介する。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事([連載] 2輪車利用環境改善部会)
EVは脱炭素社会実現と移動課題の改善に寄与するか 「バイクラブフォーラムin南国みやざき」で実施されたパネルディスカッション、「電動二輪車利活用による社会課題(脆弱な二次交通)解決」において、次のトー[…]
100万都市・千葉市のバイク駐車場問題 上総台地の平坦地に位置する千葉市は、人口98万人強の大きな自治体で、現在も増加中であることから「最後の100万都市」とも呼ばれている。 高度経済成長期には大規模[…]
原付バイク安全運転スキルアップ講習会について 本講習会は原付バイクに特化した安全運転講習会で、原付利用者の交通安全意識と安全運転技能の向上を図り、交通事故を防止しようという狙いで2024年から開始され[…]
熊本市繁華街、バイク駐車場の実態 熊本一の繁華街である下通(しもとおり)商店街の周辺を歩いたが、目につくのは自転車駐輪場への125cc以下の受け入れが進んでいること。とくにアーケードから1本入った路地[…]
講習で学ぶカーボンニュートラルと電動モビリティの関係 今回の電動二輪車技術・安全運転講習会は、バイク通学の実施や「二輪車競技部」の部活動で知られる熊本県立矢部高等学校の生徒を対象に行われた。 循環型社[…]
最新の関連記事(交通/社会問題)
「危険なら道路を改善しないの?」との疑問を感じるが…… 市中の道路を走っていると「事故多発交差点」と書いた立て看板を見かけることがあります。 その交差点で交通事故が多発しているので気を付けて運転してほ[…]
情熱は昔も今も変わらず 「土日ともなると、ヘルメットとその周辺パーツだけで1日の売り上げが200万円、それに加えて革ツナギやグローブ、ブーツなどの用品関係だけで1日に500万円とか600万円とかの売り[…]
EVは脱炭素社会実現と移動課題の改善に寄与するか 「バイクラブフォーラムin南国みやざき」で実施されたパネルディスカッション、「電動二輪車利活用による社会課題(脆弱な二次交通)解決」において、次のトー[…]
100万都市・千葉市のバイク駐車場問題 上総台地の平坦地に位置する千葉市は、人口98万人強の大きな自治体で、現在も増加中であることから「最後の100万都市」とも呼ばれている。 高度経済成長期には大規模[…]
「令和4年改正道路交通法(マイナンバーカードと運転免許証の一体化・オンライン更新時講習)ポスター」から抜粋 免許情報が記載された「マイナ免許証」は便利に使える? 運転免許証とマイナンバーカードが一体化[…]
人気記事ランキング(全体)
ガチの原付二種ライバルを徹底比較! 原付二種と呼ばれる、50cc超~125cc以下のバイクはユーザーメリットが多い。任意保険は4輪車などに付帯させるファミリーバイク特約が使えるし、自動車税も90cc以[…]
660ccの3気筒エンジンを搭載するトライアンフ「デイトナ660」 イギリスのバイクメーカー・トライアンフから新型車「デイトナ660」が発表された際、クルマ好きの中でも話題となったことをご存知でしょう[…]
[1996] ゼファーχ(ZR400-G1):4バルブ化でパワーアップ 1996年3月20日発売 ネイキッド人気でしのぎを削るライバル車に対抗し、カワサキの空冷4気筒で初の4バルブとなるχ(カイ)が登[…]
情熱は昔も今も変わらず 「土日ともなると、ヘルメットとその周辺パーツだけで1日の売り上げが200万円、それに加えて革ツナギやグローブ、ブーツなどの用品関係だけで1日に500万円とか600万円とかの売り[…]
1万4000人が詰めかけたブルスカ2025 山下ふ頭の特設会場は横浜ベイブリッジを臨む広大なもので、世界限定 1990台限りのアイコン コレクション「ファットボーイ グレイゴースト」のお披露目をはじめ[…]
最新の投稿記事(全体)
憧れのヨーロッパを快適に駆け抜けろ HondaGO TOURによるヨーロッパツーリング企画、「HondaGO TOUR in EUROPE」。 このツアーの最大の魅力は、海外でのツーリングを「気軽に」[…]
SHOEIは、2025年5月9日に東本昌平のイラストをSNSで公開。このとき「WYVERN(ワイバーン)」を被っているライダーが唐突に現れたことから、もしや復活ではとの噂が立ったが、2025年6月2日[…]
スズキではレアだった並列2気筒は、GSX-8Sの遠い先祖かも? 今回ご紹介するスズキGR650は1983年3月30日にデビューしました。 1983年といえば、日本のバイク史に記憶される年号のひとつと思[…]
「もっとバイクを楽しんでほしい」 そう語るのはハーレーダビッドソン高崎の武井代表。ハーレーはどちらかと言えばツーリング指向の強いモデルが多い。しかし、そのエンジンは今や2000ccに迫る勢いで年を重ね[…]
予選はCBR1000RR-RとCBR600RRがトップタイムだったが…… 今年のマン島は、予選ウィークがはじまった5月26日から雨が降らない日が一日もない、悪天候に見舞われた。そのため予選はことごとく[…]