
三ない運動を撤廃して以降、交通安全講習に積極的に取り組んでいる埼玉県。’23年2月に行われた第50回東京モーターサイクルショーのステージイベントに登壇し、現況の発表を行なった。その模様をお届けする。演目は「埼玉県『高校生の自動二輪車等の交通安全講習』について」だ。
●文:ヤングマシン編集部(田中淳磨)
東京MCショーに埼玉県が登壇 経緯と成果、課題を説明
埼玉県はバイクからただ遠ざける”三ない運動”から転換し、高校生への積極的な交通安全講習を行っている。この取り組みについて、県教育局の安全担当である関口衛氏が東京MCショーのイベントステージで解説した。
登壇した埼玉県教育局県立学校部保健体育課健康教育・学校安全担当主導主事の関口衛氏。
三ない運動の始まりと変革
埼玉県では’70年代の半ばから高校生による暴走行為や交通事故死傷者数が増加し、’80年には死傷者が1557人にも及んだことで、翌’81年2月に「自動二輪車等による事故/暴走行為等防止指導要項」を定め、バイクの免許を取らない、バイクに乗らない、バイクを買わないという三ない運動が始まった。
それから35年後の’16年には死傷者数は88人にまで減少。交通網や社会情勢の変化のなか、将来にわたって高校生が交通事故の当事者とならないよう、三ない運動という指導を見直し。検討委員会を経て指導要項が改定され、’19年に三ない運動が廃止された。
検討委員会では、三ない運動の精神を継承すること、安全確保対策に万全を期すことが確認され、現在の指導/講習体制につながっている。
’81年に埼玉県で三ない運動が始まった経緯も説明。70年代から続いたバイクブームの盛り上がりが招いた負の側面だった。
交通安全講習のカリキュラム
埼玉県は、撤廃のその年からバイクに乗っている高校生や免許取得予定の高校生に対して安全運転講習会を開催。主催は県の教育委員会で、共催として埼玉県指定自動車教習所協会、後援として埼玉県交通安全協会、埼玉県二輪車普及安全協会、埼玉県高等学校安全教育研究会、埼玉県交通安全対策協議会がつき、各地の自動車教習所が場所の提供で協力している。
生徒らは自分の原付バイクや自動二輪車に乗って集まり、運転実技の講習や座学、救急救命法なども教わって安全運転のための知識を学び、危険予測なども体験する。
’19年度から始まった「高校生の自動二輪車等の交通安全講習」はコロナ禍でも感染対策に留意して続けられた。コロナ禍を乗り切ったことは大きな出来事で英断だと思う。保護者からの電話で感謝されたというエピソードも披露された。
財源が課題! スポンサー探しも
説明の最後で関口さんが口にした言葉が印象に残る。
「今後増々この講習を充実させるためには、やはり財源の確保が必要だと頭を抱えているところ。今後はスポンサー探しにも積極的に取り組んでいく必要があるかなと思います」
埼玉県は講習会の参加生徒から受講料を徴収していない。県の予算で運営している状況で、今後もその方針だという。この話、二輪業界がまずもって手を挙げるべきだろう。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事([連載] 2輪車利用環境改善部会)
[1] 7年目の高校生講習も秩父地域からスタート 埼玉県内を6地域に分けて全8回で開催される「令和7年度 高校生の自動二輪車等の安全運転講習」が2025年も始まった。 第1回目の講習会は、6月15日に[…]
講習内容を検討する“指導検討委員会” が開催 2025年1月29日、埼玉県知事公館において「令和6年度 高校生の自動二輪車等の交通安全講習に係る指導検討委員会」(以降、指導検討委員会)が開催された。本[…]
地域活性化ツーリングを開催、移動課題改善への提言も 2024年9月29日に開催された地域活性化・ライダー誘致イベント“伊豆ライダー誘致ツーリング”。 主催は若年層を中心に構成。バイクやクルマ、特定原付[…]
バイク駐車場の拡充に取り組む千葉市 千葉市内には6区で50の鉄道駅がある。中でも千葉駅は千葉県の中心駅として、JR東日本の在来線6線と京成電鉄、さらに千葉都市モノレールが乗り入れている。 都心や成田空[…]
EVは脱炭素社会実現と移動課題の改善に寄与するか 「バイクラブフォーラムin南国みやざき」で実施されたパネルディスカッション、「電動二輪車利活用による社会課題(脆弱な二次交通)解決」において、次のトー[…]
人気記事ランキング(全体)
発売当初のデザインをそのままに、素材などは現在のものを使用 1975年に大阪で創業したモンベル。最初の商品は、なんとスーパーマーケットのショッピングバックだった。翌年にスリーピングバッグを開発し、モン[…]
軽量で取り扱いやすく、初心者にもピッタリ 「UNIT スイングアームリフトスタンド」は、片手でも扱いやすい約767gという軽さが魅力です。使用後は折りたたんでコンパクトに収納できるため、ガレージのスペ[…]
まるで自衛隊用?! アースカラーのボディにブラックアウトしたエンジン&フレームまわり 北米などで先行発表されていたカワサキのブランニューモデル「KLX230 DF」が国内導入されると正式発表された。車[…]
LEDのメリット「長寿命、省電力、コンパクト化が可能」 バイクやクルマといったモビリティに限らず、家庭で利用する照明器具や信号機といった身近な電気製品まで、光を発する機能部分にはLEDを使うのが当たり[…]
コンパクトな車体に味わいのエンジンを搭載 カワサキのレトロモデル「W230」と「メグロS1」が2026年モデルに更新される。W230はカラー&グラフィックに変更を受け、さらに前後フェンダーをメッキ仕様[…]
最新の投稿記事(全体)
竹繊維を配合した柔らかく軽量なプロテクターシリーズ 「お気に入りのジャケットを、もっと涼しく、もっと快適にしたい」、そんなライダーの願いを叶えるアップグレードパーツ「バンブーエアスループロテクター」シ[…]
対策意識の希薄化に警鐘を鳴らしたい 24年前、当時、編集長をしていたBiG MACHINE誌で「盗難対策」の大特集をしました。 この特集号をきっかけに盗難対策が大きな課題に そして、この大盗難特集号は[…]
「自分には自分にやり方がある」だけじゃない 前回に続き、MotoGP前半戦の振り返りです。今年、MotoGPにステップアップした小椋藍くんは、「あれ? 前からいたんだっけ?」と感じるぐらい、MotoG[…]
夏ライダーの悩みを解決する水冷システム 酷暑の中、ヘルメットやライディングウェアを身につけて走るライダーにとって、夏のツーリングはまさに過酷のひとこと。発汗や走行風による自然な冷却だけでは追いつかない[…]
コスパも高い! 新型「CUV e:」が“シティコミューターの新常識”になる可能性 最初にぶっちゃけて言わせてもらうと、筆者(北岡)は“EV”全般に対して懐疑的なところがある者です。カーボンニュートラル[…]
- 1
- 2