CBが与えてくれた感動、それがBIG-1の原点
開発者の思いとユーザーの声が市販化への道をつないだ
原「K0に乗っていた頃は感動の連続でした。200km/hに挑戦してみたりだとか、高速道路で暴れかける車体を必死に押さえつけながら駆け抜けたときの達成感だとか、左右出しマフラーから4発のボロロロッという音とともにあふれてくる加速感だとか。大きさも感動でしたね。K0はあの当時ものすごく大きく感じたんです。シートも高くて足はツンツンで頑張って乗ってましたけど、それが良かった。でも、気がつくとそんなK0の魅力が肌に染み付いていた私の心を奮わせてくれる次のバイクがなくなっていた。速さや性能を超えたところにある感動が欲しかったんです。そんな思いを抱えつつ、V型エンジン戦略時代やフルカウルレプリカ時代と長い年月が過ぎていったのですが、いつしか同じような思いを抱く仲間たちと、次に来るべきマシンはどうあるべきかと水面下で描くようになっていたのです」
岸「私も直4で育った世代で、1981年に入社。私は限定解除導入1年前に免許を手にしたのですが、後輩たちが苦労していたのを覚えています。ですが、その頃の彼らの目に映っていたのはすでに逆輸入車。しかも話題に上るのは他社製品。ホンダでないことを悔しく感じていました」
やがてネイキッド時代が到来し、ホンダも400ccにCB-1を投入するが予想以上の苦戦。これを挽回すべく後継機となるCB400SFの開発が決まったことで、BIG-1は現実のものとして大きく動き出す。
原「やがて大型バイクの時代が来そうだということも見えてくるようになりました。それでも当初は1000を市販する計画はなかったんです。あくまで400のためのイメージモチーフという位置付けでスタート。そこに自分たちの求めていた感動を整理して集約させました。岸さんは400ではなく1000のスケッチばかり書いていたよね。しかも、いつも白×赤ばかり(笑)」
岸「これに先立ち、CB-1にCB1100Rのタンクを載せたスケッチを描いてみたら、これがいい具合だったんです。日の丸のような赤×白のカラーリングは、ホンダが強かった時代をストレートに表現する象徴として、これ以上はないと思えたのです。400は1000で作り上げたデザインをそのまま落とし込む形で作っていました」
開発にあたり、岸氏が描いたスケッチ群。実は岸氏の中では当初からセクシー&ワイルドなそのイメージは定まっており、それを通すための説得材料として他のスケッチを描いていたのだとか。
原「1991年の東京モーターショーで1000のプロトタイプを展示したときも、市販化はまだ決まっていませんでした。まだ社内でも懐疑的な声が高かったのです。しかし、最終的に欲しいマシンを決めるのはお客様です。そこで皆さんの声に従うのが正しいのではないかということに。結果、おかげさまで好意をもって迎え入れていただけました」
東京モーターショーのCBは大きく話題を呼び、市販化にゴーサイン。翌年の鈴鹿8耐ではマーシャルバイクとして走り、豪快なウイリーも披露。リッターネイキッド時代の到来を我々に大きく印象付けたのだった。
※後編に続く
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(CB1300シリーズ)
ホンダの大排気量並列4気筒エンジンをジェントルかつスポーティーに TSRは鈴鹿のマフラーメーカー「アールズ・ギア」とともに世界耐久選手権(EWC)を戦い、リプレイス用のマフラーも同社と共同開発していま[…]
1998年登場のロングセラーモデル、ホンダCB1300シリーズの魅力とは? 今回は、私が白バイ隊員として約10年間、ホンダ CB1300に乗ってきた経験や感想を交えて、CB1300シリーズをお勧めする[…]
CB1300SF/SB“ファイナルエディション”としての存在感をもっと強く! 今回、CB1300SF/SBファイナルエディション向けにラインナップされたマフラー/ステップ/ドレスアップパーツなどには、[…]
1998年モデル:初代1300はとにかく巨大だった ヤマハXJR1200、カワサキZRX1100といった、CB1000SFを超える排気量のライバル出現で、ビッグネイキッド界は重厚長大化していった。そん[…]
ホンダCB1300スーパーフォア/SP ファイナルエディション 頂点のバイクに今さら“付け足すもの”などない 1992年に「PROJECT BIG-1」が発動されセンセーショナルに登場したCB1000[…]
最新の関連記事(ホンダ [HONDA])
伊藤真一さんが代表兼監督を務める『Astemo Pro Honda SI Racing』は、、FIM世界耐久選手権第3戦”コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース第46回大会(8月3日決勝)のチーム参[…]
ホンダの“R”だ! 可変バルブだ‼ 1980年代に入ると、市販車400ccをベースにしたTT-F3やSS400といった敷居の低いプロダクションレースの人気が高まってきた。 ベース車として空冷直4のCB[…]
Hondaスピリットを足もとに。cciluコラボシューズ第2弾が登場 ツーリング先での散策、キャンプサイトでのリラックスタイム、そしてレース観戦。そんなバイクライフのあらゆるシーンに寄り添う一足が、シ[…]
レブル250ではユーザーの8割が選択するというHonda E-Clutch ベストセラーモデルのレブル250と基本骨格を共有しながら、シートレールの変更や専用タンク、マフラー、ライディングポジション構[…]
ホンダ「モンキー125」(2024)試乗レビュー この記事ではかわいらしいフォルムと実用性が同居したファンバイク、モンキー125の2024年モデルについて紹介するぞ。初期のモンキー125に近い、シンプ[…]
人気記事ランキング(全体)
新進気鋭のクルーザー専業ブランドから日本市場に刺客! 成長著しい中国ブランドから、またしても新顔が日本市場にお目見えしそうだ。輸入を手掛けることになるウイングフット(東京都足立区)が「導入ほぼ確定」と[…]
静かに全身冷却&最長10時間のひんやり感を実現 ライディングジャケットのインナーとしても使えそうな『PowerArQ Cooling Vest』。その特長は、ファンやブロワー、ペルチェ式ヒートシンクを[…]
なぜ「モンキーレンチ」って呼ぶのでしょうか? そういえば、筆者が幼いころに一番最初の覚えた工具の名前でもあります。最初は「なんでモンキーっていうの?」って親に聞いたけども「昔から決まっていることなんだ[…]
レブル250ではユーザーの8割が選択するというHonda E-Clutch ベストセラーモデルのレブル250と基本骨格を共有しながら、シートレールの変更や専用タンク、マフラー、ライディングポジション構[…]
最新モデルはペルチェデバイスが3個から5個へ 電極の入れ替えによって冷却と温熱の両機能を有するペルチェ素子。これを利用した冷暖房アイテムが人気を博している。ワークマンは2023年に初代となる「ウィンド[…]
最新の投稿記事(全体)
2ストローク3気筒サウンドと他にない個性で1982年まで販売! 1969年にカワサキは世界進出への先駆けとして、250ccのA1や350ccのA7を発展させた2ストロークで、何と3気筒の500ccマシ[…]
伊藤真一さんが代表兼監督を務める『Astemo Pro Honda SI Racing』は、、FIM世界耐久選手権第3戦”コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース第46回大会(8月3日決勝)のチーム参[…]
供給不足解消に向け、スズキもかなり「がんばってます」 ジムニーノマドは、2025年1月30日の発表からわずか4日間で約5万台もの受注を獲得し、注文受付が一時停止に追い込まれるなど、国産車としては異例と[…]
ホンダの“R”だ! 可変バルブだ‼ 1980年代に入ると、市販車400ccをベースにしたTT-F3やSS400といった敷居の低いプロダクションレースの人気が高まってきた。 ベース車として空冷直4のCB[…]
Hondaスピリットを足もとに。cciluコラボシューズ第2弾が登場 ツーリング先での散策、キャンプサイトでのリラックスタイム、そしてレース観戦。そんなバイクライフのあらゆるシーンに寄り添う一足が、シ[…]