●文:ゴーライド編集部(小川浩康) ●写真:関野温 ●モデル:山下晃和
『オフロードマシン ゴー・ライド』編集長オガPが大人気トレッキングモデル・ヤマハセロー250に対し唯一引っかかっていたこと、それはセローの持ち味であるトレッキング感覚でのオフロード走破性能を作り上げている”車体作り”に関するある一点にあった。そこで、自身の体格や走りのスタイルに合わせてセロー250をカスタムしつつアクティブに”ツーリング”を楽しむ、モデルの山下晃和氏をゲストに迎え、ツーリングマシンとしてのセロー250のポテンシャルについてじっくり聞いてみたゾ!
長身でもセロー250を楽しむ山下晃和氏と、ツーリングを通じてセロー談義へ
軽量コンパクトな車体と低中速を重視したエンジン特性が、驚異的なオフロード走破性として結実しているヤマハセロー250。2輪+2足でトコトコとオフロードを走破していく”トレッキング”という遊びは、歴代セローシリーズが築き上げてきたものだ。そんな研ぎ澄まされたオフロード性能はセローシリーズ固有の車体作りが生み出しているものだが、それが筆者(ゴー・ライド編集長オガP)には引っかかる点にもなっていた。
そこで、セロー250でアクティブに”ツーリング”を楽しんでいる、モデル山下晃和氏を迎え、ツーリングマシンとしてのセロー250のポテンシャルについて聞いてみた。
’20年7月末に生産が終了した「セロー250ファイナルエディション」。オフロードマシンでトコトコと自然を楽しむ”トレッキング”という遊びを提案してきたセローシリーズは、”マウンテントレール”というサブネームが与えられ、他のトレールモデルとは異なる世界観を確立してきた。
それは、2輪+2足で歩くように走行できる低シート高や、極低回転からトルクが立ち上がるエンジン特性などで、ハイシートでパワフルなエンデューロレーサーよりも軽量コンパクトなトライアルマシンに近い車体作りとして現れている。
さて、高速域よりも低中速域での乗りやすさを重視しているのが”セローらしさ”とも言えるのだが、一方でウインドシールドがなくエンジンパワーにも余裕がないので、高速巡航は苦手。また、シート高は低く、ステップ位置が高いバックステップ形状は、長時間のシッティングではヒザに窮屈さを感じる。
セロー225からセロー250へのフルモデルチェンジで、高速巡行性能は大きく改善されたものの、コンパクトな車体によるヒザの窮屈さは以前のまま。高いオフロード性能を持ちながら、林道へ着くまでの高速走行でライディングポジションの窮屈さを感じてしまう。
……というのが、身長172cmの筆者がセロー250に”引っかかる点”だった。だが、私より長身の山下晃和氏がセローを存分に楽しんでいることを思い出し、改めてセローの魅力を探るべく、彼と一緒に伊豆の林道へと向かったのだ。
ライダーに合った扱いやすさで応える、それがセロー250
オガP:アキカズ君との久しぶりのツーリングでは、ファイナルエディション(以下FE)とアキカズ君のセロー(以下山下セロー)の2台を乗り比べて、それぞれの魅力を探ってみたいなと。
山下:僕も’18年に復活したセローは初めてなので楽しみですよ。
スピードよりも積載性と操作性を重視したマシン選びをした山下氏
オガP:FEのインプレを聞く前に、まずは以前からの疑問を聞かせて。アキカズ君は長身なのに、なぜセローを選んだの?
山下:それまで乗っていた愛車がヤレてきたのと、キャンプツーリングをメインに楽しみたいと思っていたので、ツーリングセローが出た時にコレだ! って思ったからですね。以前の愛車でエンデューロレースに出たりしましたけど、スピードよりも積載性のよさや操作性のよさのほうが僕には重要だと分かったので、ツーリングセローを買うつもりだったんです。
ところが、ツーリングセローにそれまで使用していたハンドル(レンサルのジェフ・ワードレプリカ)を装着しようとしたら、純正のハンドルガードが装着できないことが分かったんです。なので最初からツーリングセローを買うのではなく、まずセロー250を買って、そこに純正のアドベンチャースクリーン/アドベンチャーリアキャリア/アルミアンダーガードを装着していきました。
ツーリングセロー風に仕上げられたセロー250
オガP:山下セローは、自分でセローをツーリングセローのように仕上げているんだ!?
山下:信頼性が高いので基本は純正パーツを使用したいのですが、ハンドルだけはどうしてもジェフ・ワードレプリカを装着したかったんです。純正ハンドルは僕には狭くて絞りもキツく、ボディアクションしにくいんです。林道走行ではヒジを使って衝撃を吸収したいのですが、ジェフ・ワードレプリカだとそれがしやすくて。
以前の愛車もコンパクトでポジションに窮屈さを感じていたのですが、ジェフ・ワードレプリカを装着したらバッチリ解消しました。自分に合ったハンドルに交換するだけで、ポジションの窮屈さはかなり改善されるのを体験として分かっていたんですよね。
納得の走破性を見せたカスタムマシン・山下セロー
オガP:今回走った林道はかなり荒れていたけど、そこのガレ場やマディでは、FEのコンパクトさが安心の足着き性を与えてくれた。ところが、少しペースを上げるとフロントが押さえにくく、とくに下りでは振られる場面も多かった。
でも山下セローには押さえにくさがなく、フルサイズ250トレールに乗っているようなポジションで、林道走行もすごい快適だった。
山下:じつはハイシートで4cm、リヤサスリンクの変更で2cm、合計6cmアップしているんですよ。乗車時の沈み込みがあるので、実際はもう少し下がりますが。ハンドル幅も広くなっているし、ヒザの窮屈さも解消されているので、かなりマシンコントロールしやすくなっていると思います。
オガP:確かにシート高は上がっているけど、WR250Rみたいな足着き性の厳しさは感じなかったな。
山下:僕はこのセローで北海道まで自走しましたけど、全然疲れませんでしたよ。ジェフ・ワードレプリカバーとハイシートで窮屈さのないライディングポジションをとれるし、アドベンチャースクリーンとパフォーマンスダンパーのおかげで高速巡行も本当にラクです。こうした装備を増やしていっても本来の走りやすさが変わらないというのも、セローの魅力だと思いますね。
ノーマル比6cmアップの山下セロー、身長172cmの筆者はトコトコ感を失わず
山下セローのシート高がトータル6cmアップしているということで、身長172cmのオガPがセロー250FEと山下セローの足着きチェックをしてみた。
実際チェックしてみて感じたことだが、身長170cm以上なら自分の体に合わせてマシンをフィッティングしたほうが、マシンコントロールしやすくなるだろう。それ以下なら、ノーマルのままでも乗りやすさを感じられるだろう。
求めるセローらしさを生かしつつ、安心してカスタムできる。それもセローの魅力
今回、セロー250FEと山下氏のカスタムセローの2台による林道ツーリングで、改めて実感できたセローが持つ高いポテンシャルの数々。高身長の山下氏が”ツーリングを楽しむ”に重点を置いて選んだモデルがセローであったことも、話を聞いて納得だった。
そして自身の走りのスタイルと体格を熟知した上でのカスタムが施された山下セローは、”セローらしさ”を存分に生かしつつ完全なまでにフィッティングされた、まさに唯一無二の1台。後編ではこの山下セローのカスタム詳細や方向性、山下氏に乗り比べてもらったセロー250FEの所感も紹介する。
ゴー・ライド編集長オガPとモデル山下晃和氏が林道ツーリングを楽しみながら語り合うセロー談義。〈後編〉では、山下氏が語るセローのさらなる魅力と乗り比べたFEの所感に加え、山下セローのコンセプトやカスタム詳細を紹介する。