こんなエンジン、もう二度と作れない!?

CBR1000RR-Rエンジンマニアック解説#6:RR-Rはなぜ「スムーズ」なのか?

出力特性と電子制御スロットルの超ハイレベルな作り込み

続いて丸山さんは「パワー感がある」とも言っています。実際のパワーではなく、感覚的に「パワーがあるように感じる」と言っているわけです。感覚的な表現ですが、プロのライダーはよくこの言葉を使います。

ではライダーはどんな時に「パワー感がある」と感じるのでしょうか。実はエンジンのパワーを直接人が感じることはできません。ライダーは車体の加速度(による慣性力=体が引っ張られて置いて行かれるような感覚や、手がハンドルから離れそうになる力など)の大きさやその変化を感じて、これをパワーと等価と考えています。

したがってRR-Rは「ある乗り方をしたときに高い加速度が得られる」のだろうと想像できます。車体の加速度はパワーだけなく、車両重量や減速比でも変わってきますが、RR-Rは車重が特別軽いわけではないですし、ギヤ比もロングとなると「やはり馬力があるのだな!」と予想ができます。

と、ここまでは比較的わかりやすい(?)話ですが、RR-Rはそれよりも、フィーリングの作り込みが非常に高次元なのだろうと私は考えています。ライダーがスロットルをひねった瞬間から、どれくらいの加速度でどう加速するかがバイクでは非常に重要で、これを作り込むことで、「パワー感」「加速感」「スロットルフィーリング」などと表現されるライダーフィーリングをより良いものにしていくのです。

そのために重要なエンジンの技術としては、基本的なエンジンのトルク特性(回転数とトルクの関係)とスロットル開度の制御方法などが挙げられます。サーキットを速く走るためにはなるべくフラットな(回転数に依存しない)特性が必要ですが、私の経験では往々にして「パワー感がない」とライダーから言われました。パワー感や加速感が良いのは、回転上昇に伴って加速度が増していく特性で、これが行き過ぎると扱いにくく感じるようになります。極端な例として、2ストレプリカやレーサーはものすごいパワー感がありますが、ちゃんと加速させることは極めて難しいということがあります。速く走るための扱いやすさと、スポーティで気持ち良く感じるパワー感の両立は非常に難しいのです。

さらにRR-Rは160kW(≒218ps)という極めて高い最高出力を得るために、非常に大口径(Φ52㎜)のスロットルボディを採用しています。キャブレターほどではないにせよ、スロットルボディは大口径になるほどフィーリングを良く仕上げるのは至難の業です。そのため、最新の電子制御スロットル技術が大きな役割を果たしているはずで、その制御技術もRR-Rはかなり洗練されていると想像するのです。

'20ホンダCBR1000RR-Rエンジンマニアック解説

【このカーブは気持ちいいぞ!】新旧CBRを比較したパワーカーブ。これを見たエンジニ屋氏は「RR-Rの、どこまでも上昇するようなトルクカーブ、これは確かにパワー感が良いだろうなと思います。ただし低中速のトルクは低下していますから、実は減速比は前のモデルよりショートなのでは?」と指摘。

'20ホンダCBR1000RR-Rエンジンマニアック解説

そこで作成してみたのが新旧CBRのギヤレシオ比較。オーバーオールレシオとは各段のレシオと一次/二次減速をかけ合わせたもので、RR-Rは1&2速はショート、3速が同等で、それより上はかなりロング。つまりトータルのギヤレシオはワイド化されている。加えてリヤタイヤ外径はRR-Rの方が大きい(=ロング傾向)。

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