そろそろ入れたいリチウムバッテリー

最新バッテリー事情2020【バッテリー上がりの仕組みと対策】

  • 2020/1/24

春のバイクシーズンを迎える前に気になるのが、愛機の“バッテリー”の状態だ。というのも気温の低いこの時期はバッテリーが活性化しにくく、不具合が露見しやすい。いっそ交換してしまう!?

●文/谷田貝洋暁 ●取材協力:岡田商事

なぜバッテリーは劣化する? 現代のFI車は早めの交換を

バッテリーのトラブルが発生するのは、冬か春先だと相場が決まっている。バイクが生まれて100年以上。最高出力が200psを超え、電子制御がライダーのライディングをアシストする時代になっても、春先の風物詩、バッテリー弱り/上がりはいまだなくならない。 

バッテリーは消耗品。乗っていれば、必ず交換する日がくるのだが、難しいのは、いつ交換するか? という交換時期の見極めだろう。バッテリーは使用するしないに関わらず、少しずつ劣化していくもの。しかし、ブレーキパッドやオイルのように目に見えて減ったり、劣化がわからない。そのため、弱々しいセルスターター音に恐怖しながらも、『まだもう少し大丈夫だろ?』なんて、その日を先延ばしにしがちだ。 

結果、出先でバッテリー上がりを起こし、立ち往生することも…。ただ昔と違うのは、FI化をはじめとする電子部品の増加で、起動に必要な電力が増え、ちょっとやそっと押しがけをしたくらいではでエンジンをかけられないなんて車両も増えてきた。気持ちよく走るためには、『セルスターターの音がいつもより弱々しい…』と感じた時点で即交換しておくのが最善なのだ。 

ただ考えてみればなぜこの時期にバッテリー上がり/弱りが起こるのだろう? 自社ブランドのAZバッテリーにおいて、リチウムバッテリーと鉛バッテリーを扱う岡田商事さんに最新のバッテリー事情をうかがってきた。

最新バッテリー事情2020

鉛バッテリーとリチウムバッテリーの両方をラインナップするAZバッテリーを扱う岡田商事のバッテリー担当の方にお話を伺った。

「冬はどうしても気温が低く、バッテリー内部で起こっている化学変化が起こりにくくなります。加えて、バッテリーは正しく使っていても少しずつ劣化しているのでいつかは寿命を迎えるのですが、その劣化を早めてしまうのが、サルフェーションという現象です。 

一般的な鉛バッテリー内部では、希硫酸と鉛の化学反応により、電気を発生させています。電気を発生させる過程で内部に硫酸鉛という物質が発生するのですが、その状態で長期間放置すると、極板のまわりが結晶化してしまうんです。この白い結晶ができた部分は電気を通さず、十分な電気を発生できなくなる。これがサルフェーションによるバッテリー弱りです。サルフェーションが起きなくてもバッテリーの充電能力は少しずつ劣化していきますし、乗り方によってその進行具合もそれぞれなので、一概に何年と言いにくいのです。2年でバッテリーがダメになる場合もあれば、5年以上使っているユーザー様もいらっしゃいます」

鉛バッテリーの構造

鉛バッテリーの基本的な構造は、バッテリー内部の薄い硫酸(希硫酸)と鉛の化学反応で出るイオンを電力して取り出している。化学反応で得られる電圧は1セル2V強で、6つのセルを直列でつなぐことで12V化している。

バッテリー事情

【左:正常】【右:サルフェーション発生】鉛を希硫酸で溶かす(電気を取り出す)と硫酸鉛と水へと変化する。この泥状の硫酸鉛をそのまま放置すると電極まわりで硬く結晶化してしまう。こうなると電気が通らずバッテリーが弱るのだ。

いつ来るかわからないバッテリーの寿命。それが不安ということであれば、リチウムバッテリーの選択がオススメとのこと。リチウムバッテリーというと、軽量化のイメージが強いが、リチウムバッテリーは一般的な鉛バッテリーに比べて寿命が2倍ほど(使用環境により異なる)だったり、放置による自然放電が鉛バッテリーより少なかったりと、一般ライダーが受ける恩恵も非常に多いそうである。

鉛バッテリー〈開放型〉

世代の古いバッテリー形式で、一部の海外車両を除き現行車ではほぼお目にかかることはない。その名の通り発生した水蒸気をはじめとする気体を大気開放してしまうため、希硫酸の濃度や液量が変化し、放電能力低下。なので電極がしっかりと希硫酸の浸かるよう、希硫酸の濃度を比重計でチェックしたり、水を補充したりなどのメンテナンスが必要。

特徴

・定期的な液補充が必要
・横倒しにできない
・高い充電電圧にも対応するが、電解液の減りは早い
・筐体が大きい

最新バッテリー事情2020

充電電圧の設定がMFバッテリー車やリチウムバッテリー車に比べて高いため、旧車のMFバッテリー化などにはレギュレータの交換が不可欠。

鉛バッテリー〈MF型〉

MFとはメンテナンスフリーの略。というのも開放型のバッテリーで大気開放していた水素などの気体を、よほど大きな圧力が発生したとき以外は液化させて液槽に戻している。つまり内部で“質量保存の法則”を完結させる。このため内部の希硫酸濃度の調整の必要が必要なくなった。ゆえにメンテナンスフリーというワケだ。2輪車にはスポンジ状の構造に希硫酸を含ませた込ませたAGMタイプが一般的だが、電解液の粘性を高めたGELタイプは横倒しや振動に強い。

特徴

・液補充(メンテナンス)が必要ない
・密閉式のため横倒しに強い
・現行の二輪車はAGMが主流
・GELタイプは搭載位置の自由度が高い
・開放型よりもコンパクト

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密閉されているため横倒しも可能だが、厳密にいえば横倒しにすると液が偏ってしまうためバッテリーの能力を100%活かせないこともあるとか。

リチウムイオンバッテリー〈LiFePO4〉

コバルト系、マグネシウム系など、リチウムイオンバッテリーにはいくつかの種類があるが、バイク用として実用的なのは、リン酸鉄リチウムを使ったリチウムイオンバッテリー。リン酸鉄リチウム(LiFePO4)を使ったリチウムバッテリーから得られる電圧は1セルあたり3.3Vと高めで、鉛バッテリーでは6セル必要だったが、4セルで12V以上を確保できるのでコンパクト。ただし、電熱ウエアなどの社外電装品を多数付けているなら、鉛バッテリーの方がいい場合もある。

特徴

・鉛を使わないので軽い
・液槽がないので逆さ積みもOK
・高い電圧での急速充電ができない
・放置による放電が少ない
・段違いにコンパクト

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左が鉛で右がリチウム。容量が同じ場合、MFバッテリーよりもはるかにコンパクトにできるリチウムバッテリーだが、交換時の搭載しやすさを考慮して、あえて全高以外のサイズを合わせた大きな箱に収納している。

最新バッテリー事情2020

リチウムバッテリーの重さを同容量のMF バッテリー(2035g)と比べてみると、572gとなんと重さは3分1以下。いきなり1.5㎏近い軽量化が達成できるのである。

バッテリーの冬対策

サルフェーションをはじめとしたバッテリー劣化を防ぐ一番の方法は、とにかく満充電の状態を保つことにあるという。満充電とはつまりバッテリー内部の鉛電極が溶けておらず、希硫酸が一番濃い状態にあること。放置すると結晶化する硫酸鉛を極力少なくした状態で維持することにある。これがバッテリーの寿命を最大限伸ばすことにつながる。

マイナス端子を外す

バイクはイグニッションをオフにした状態でも、時計やイモビライザーなど微弱な電気を消費したり、自然放電などでバッテリーは消耗している。いっそマイナス端子を外してしまえばそんな消耗をカットできる。

最新バッテリー事情2020

バッテリーを取り出さず、マイナス端子を外しておくだけで十分有効。現代のバッテリーは室内保管も屋外保管もそれほど変化はないそうだ。

メンテナンス機能付き充電器につなぐ

少々走らせたからといってバッテリーが満充電になっているとは限らない。ならばいっそ頻繁に乗る乗らないに関わらず、停めたらフロート充電などメンテナンス機能のある充電器につなぐ癖をつけておけばいつでもバッテリーは満充電。よって長持ちさせられるというワケだ。

最新バッテリー事情2020

トリクル、フロート、パルスなど充電器にも色々あり、どんな充電器がバッテリーを長持ちさせるかは次稿にて。

次稿では、バッテリーの状態を良好に保ち、寿命を延ばすために必要な、常時接続可能なメンテナンスモード搭載バッテリー充電器について解説する。

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